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話題は昔話から一転して、光ファイバについてのお話です。私は光ファイバのギョーカイ関係者でも専門家でもないので、間違いも書くかもしれません。専門的に知りたい方は、リンクと資料のページに、参考文献を挙げておきましたので、そちらを参照してみて下さい。
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一言で言うと、入り口から入ってきた光を、外に漏れないように均一に閉じ込めながら、極めて低損失に出口まで伝送するガラス繊維、とでも言えるでしょうか。1960年代後半から本格的に研究されてきており、近年では各々の「均一に」「閉じ込め」「低損失に」といった特性がほぼ物理的極限に近いところまで、達成されてきています。 一方、情報を伝えるのは「光」ですが、光は元々、その性質を何らかの形で変化させて、情報を乗せる(これを「変調」といいます)ことで、従来からある電波を変調するよりも桁違いに多くの情報を送れます。近年、半導体レーザ(発光素子)やフォトダイオード(受光素子)の発達とともに、高速変調した光を送受信できるようになりました。 これを光ファイバと組み合わせて通信に応用すれば、今まで何百本ものケーブルを束にしたり、大雨が降ると、エラーが増えて使えなくなるマイクロ波帯を使っていた回線が、1本のファイバで済むようになるだろう、と目をつけたのが通信会社です。 下の写真は、私の家に引き込まれた屋内用、屋外用の光ファイバです(工事の後、担当者の方に「ハギレ」をもらいました)。後にも書きますが、光ファイバ単体では非常に細くて、引っ張りや曲げに対して弱いので、強度のある金属や繊維と一緒に束ね、ケーブルとして使用されます。これらの金属線や繊維は、「テンションメンバ」や「抗張力線」と呼ばれ、ケーブルを敷設する時にかかる引っ張り力が、光ファイバ芯線にかかるのを防止しています。
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Fig.1-1
屋外用光ケーブル(単芯)の構造例
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Fig.1-2
屋内用光ケーブル(単芯)の構造例
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Fig.1-3
屋外用は住友電線電纜製
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Fig.1-4
屋内用は古河電工製
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それでは、光ファイバを語るキーワードごとに、難しい数式を抜きにして、その性質を明らかにしていきましょう。
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光ファイバには、内部の光の伝わり方の違いにより、2種類のものがあります。シングルモードとマルチモードと呼ばれるものです。これらの違いについては後述しますが、ケーブルとしてのその構造はほとんど同じです。 Fig.1-5上にあるように、主に光が伝わる部分(=コアと言います)は、ファイバの中心に位置している5μm程度(シングルモードの場合。マルチモードの場合は20μm程度になる。)の「芯」の部分です。その周囲には「クラッド」と呼ばれる、コアより屈折率の低いガラスが取り巻いています。クラッドの外径は一般的にシングル/マルチともに125μmになっています。
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Fig.1-5
光ファイバの構造と伝播経路
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光は、コアの中を、クラッドとの境界面で、全反射を繰り返しながら伝わってゆきます。電気信号を伝えるケーブルは、一般に太いものの方が損失が少なくて有利ですが、光ファイバを太くしても、悪影響の方が多いのです(後述)。 光ファイバは細く、その材質もガラスなので、同じ情報量を送れる同軸ケーブルなどと比較した場合、桁違いに細く軽くなります。但し、光ファイバ単体では非常にもろく、張力がかかった状態で、水分にさらされると、簡単に破断してしまいます。地下に敷設するケーブルは地下水や流れ込んだ雨水に、屋外の空中(架空=がくう)ケーブルは雨水にさらされますから、長年にわたって、これらを遮断できる被覆が要求されます。 このため、表面にコーティングを施したり、被覆を厚くしたり、はたまた、ケーブル内に圧力を掛けてガスを注入したりして、水の浸入を防いでいます。また、上に書いたような敷設時の引っ張りに耐えるための、テンションメンバを組み込むので、芯線単体よりはるかに重い重量を持ってしまいます。 また、コアとクラッドの境界面には、微小な凹凸があると、そこで光が散乱されてしまいますので、「超」がいくつかつくほどの均質な界面が、要求される技術です。
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光ファイバの持つ帯域の計算や、モードの理論で厳密な説明は、数式を持ち出さなくてはならないのでやりません(私にはできません!)。 まず、光ファイバ内を伝送できる光の波長(色)と太さには一定の制約条件があります。太さと波長によって光の進める「経路」の数が決まり、太い方がこの経路の数が多くなります。経路が増えれば光の減衰が減っていいのでは、と思いますが、減衰は主にファイバを作っている「ガラス」の「透明度」で決まり、経路の数には依存しません。
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それぞれの経路は、ファイバの入り口から出口までの通過距離が、微妙に違います。従って、光の信号(パルス)が入り口で同じタイミングであったものが、出てくるところで時間ズレ(これを専門用語で「モード分散」と言います)を生じて波形がなまってしまいます。Fig.1-6で言うと、入り口から出口までの経路の長さが、青ルート<緑ルート<赤ルート の順で長くなっています(ここでの色分けは、実際の波長を意味しません。単なる経路ごとの色分けです)。 光の速さ自体はどの経路も同じですが、同じ道を行くのにジグザグと曲がる(=反射)回数が多い経路を行くのと、少ない経路を行くのでは、入り口から出口までにかかる時間が違うのと同じです。
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Fig.1-6
伝播経路長の差
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出口で見ていると、まずはじめに青の経路を通った光が出始め、次に緑の経路、最後に赤の経路の光が出るため、入り口では同時だったパルスが、間延びしたようになるわけです。光通信では、パルスで信号を送るので、間延びしたパルスが、時間的に次のパルスと重なり合ってしまうと、判別できなく(=通信できなく)なってしまうのです。 ファイバの直径を極限まで細くして、通信に使う光の波長で、この「光の通り得る経路」を1つだけにしてしまったファイバを「シングルモードファイバ(以下、SMファイバ)」と言います。逆に細くしすぎると、強度的に弱くなったり、光を入射しづらくなったりするので、通信に用いる波長で複数のモードが立たない、ちょうどいいコア径にしています。「モード」が光の通り得る経路のことで、これがひとつしかないので「シングル」モードというわけです。NTTや電力系各社の光ファイバサービスは、このSMファイバを使用しています。 一方、マルチモードファイバ(以下MMファイバ)は経路が複数のもので、長距離引き回すとパルスの波形がなまってしまうので、短距離のLAN用などに用いられています。製造技術の差により、昔はMMファイバの方が安価でしたが、通信会社が使うのがほとんどがSMファイバなので、量産効果により、近年では、価格差はほとんどなくなってきている、といわれます。 MMファイバでは、モード間の伝播距離の差(=ズレの量)は、ファイバが長いほど大きくなります。経路がひとつしかなければ、光は皆同じ経路を通りますから、SMファイバを使うとどんな長さでも、原理上モード分散は生じません。長距離通信にはSMファイバしか用いられないのは、このためです。逆に、ズレを許容する(=通信速度を落とす)なら、太くすることは可能です。 コアの径が同じでも、(定性的には)長い波長ならばSMですが、波長を短くしてゆくとMMになります。通信で使うファイバは、波長が決まっていますので、カタログなどに「シングルモードファイバ」と書いてあれば、それはファイバ自体の性質ではなく、通常通信に使う波長で使用した時に、シングルモードで伝播しますよ、ということです。 マイクロ波を勉強されたことのある方なら、境界条件は微妙に異なりますが、マクスウェルの方程式が円筒導波管と同じ、と言えばモードの概念は同じなので、なんとなくおわかりいただけるかと思います。 また、光ファイバを曲げることも損失を増加させる原因です。ファイバを曲げると、コア−クラッドの界面に入射する角度が変わってしまい、最悪、光が外に飛び出してしまいます。大概の光ファイバは、最小曲げ半径が仕様で規定されていますので、これを守らなければなりません。
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この性質は、非常に重要かつ大きなメリット(私にとって?)です。電線で高速なデータを送ろうとすると、高速で電気信号(主に正弦波の交流)を変調し、それを電線に送り込まなくてはなりません。そうなると、電線に高周波電流が流れるのですが、この「高周波電流」というのがクセモノで、高速で送ろうとして周波数を高くするほど、電線から出て空間に飛び出そうとします。 これこそが電波なわけですが、電線は決まった相手にだけ信号を伝えるためにあるので、信号が電線をアンテナとして電波になって、空間に「放送」されてしまっては、信号は減衰してしまうし、通信の秘密は守られないし、でいいことはありません。電話線では、これは切実な問題で、ADSLなどはかなり無理矢理高周波を乗せていますが、ご存知の通り、電話局から2kmも引くと減衰が30dB程度あります。これは、電話局から送出された電気エネルギーが1/1000になっていることを意味します。残りの999/1000は電線の抵抗で熱になるか(ほとんどがこれ)か、インピーダンスミスマッチで送信端に戻ってしまうか、電波として空間に放射されてしまっていることを意味します。 放出された電磁波は、人体に害を及ぼしたり、簡単に盗聴できたりするほどのレベルではありませんが、確実にエネルギーは減衰してしまいます。ADSLは中波・短波帯に相当する周波数を、従来からある電話線に乗せて使うため、中波放送やアマチュア無線との混信防止ということで、この周波数帯で重なるバンドの周波数の信号は使わないように設計されています。 同じ電話線路にADSLの線とISDNの線が共存すると、干渉する(エラーが増えて速度低下する)のではないか、といわれていることは有名ですが、これも長く並行に引かれた電線同士が、お互いに電磁波をやり取りする結果です。ADSLも、やり取りしているのはディジタルデータですが、物理的な信号には減衰やノイズが加わり、極めて厳しいノイズとの闘いであり、フィルタなどのアナログ技術と誤り検出/訂正等のディジタル技術を組み合わせて、やっとこさ実現しているレベルなのです。 一方、光ファイバから漏れる光はごくわずかで、外側には被覆もありますから、外には出てきません。また、外の光が光ファイバに入り込むこともほとんどありません。もちろん、電話線(ADSLも含む)と並行に敷設してもお互いの干渉は一切ありません。 光ファイバのこの便利な性質は、電力会社が自前でネットワークを構築するのにも一役買っています。電力会社は、もともと発電や変電・送電施設の制御・監視のために、光ファイバでネットワークを持っていました。高圧送電線の最も上部に架設されているのは、電線切断時の異常電流迂回や避雷のための接地線ですが、この中に光ファイバケーブルが入っているのです。もし、ここに雷が落ちたり、異常電流が流れても、光ファイバ自体には(接地線が切れない限り)何の影響もありません。(エラーレートが瞬間的に上がることくらいはあるかもしれませんが。) 光信号も減衰やエラーはゼロではありませんが、電気信号に比べれば、それらは問題にならないほど小さいのです。
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いいことづくめの光ファイバですが、デメリットもあることはあります。第一に、接続作業の難しさです。電線は、手でよりあわせるだけで接続できますが、光ファイバはサブミクロンの精度で「芯出し」をして接続する必要があり、簡単ではありません。また、ファイバ自体も芯線(コアとクラッド)むき出しの状態では非常に弱いので、取り扱いに注意が必要です。 第二に、銅線より敷設時の張力や曲げに弱いことです。敷設工事の際には必要な張力を計算して、ケーブルの許容張力を超えないように、プーラー(ケーブルを動力で引っ張る装置)の台数を増やしたり、管路の曲率などを検討する必要があります。 光ファイバは曲げると減衰が増加します。極端な場合は折れてしまいますが、曲げに対しても許容値がありますから、それを守るようにしなくてはなりません。これらのデメリットは、工事費が銅線より高価になることを意味します。 第三に(これはデメリットと呼べるかどうか分かりませんが)電力が伝送できないことです。従来の電話線は、直流電流が送れるので、停電になっても電話機が使えました。しかし、ファイバでは「信号」は送れますが「電力」は送れないので、ユーザーの電話機(通信機器)の側で電源が切れると、通信ができなくなってしまいます。 と、いろいろ書きましたが、これらのデメリットはかなり解消されてきています。工事や取り扱いに関する困難さは、扱いやすい専用治具・工具が出てきているようですし、曲げに強いファイバも製品化されています。導入編でも書いていますが、私の工事のときは、芯線接続などは、ものの2〜3分でした。コストも、データ量あたりで見れば、銅線よりは十分安いと思います。
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タイトルは大げさですが、研究中の光通信技術を素人の目から見て、「あったらいいな」な将来像を描いてみましょう。
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いきなり聞いたことのない専門用語ですが、波(この場合は光)が媒質(この場合はファイバ)を伝播する場合、ある条件が満たされると、波がどこまでも形を変えずに伝播する、という現象をいいます。川の水面に起こった波が形を変えずに伝播することを発見した船舶技術者のソリトンさんにちなんで、ということですが、水面の波とちがって光ファイバ中の光波のソリトンは厳密に解析されていて、一般にソリトンと言えばこの厳密の方を指します。 波の性質として、周波数に変動の無い(=波長が純粋)光を、高速に変調すると、少しだけ周波数が幅を持ちます。このあたりは、無線で正弦波の搬送波を音声でAM変調すると、搬送波周波数の両側に側波帯が生じるのと同じです。ファイバの中を伝播している光は、石英の材質や屈折率分布に起因して、波長によって速度が異なっています。これを(波長)分散と言います。分散があると、高速変調された短いパルスが長距離伝送されて出てくると、波長の長い成分と短い成分で、出てくる時間が微妙に違うので、これまた波形がなまってしまいます。 これが、ソリトンになると、波がどこまでも形を変えずに伝播する(実際には減衰はある)ので、超短パルスを長距離にわたって伝送できる=超高速・長距離通信ができる、と期待されるわけです。実際には、「ある条件」を長距離あるファイバ全長にわたって維持しなければなりませんが、先に「減衰はある」と書いたように、光の強度が次第に弱くなって、その「条件」を満たさなくなってしまうので、途中での増幅が必要です。 また、不安定性によってソリトンが崩れてしまうなどの問題があって、実現はなかなか難しいようです。NTTでは単一波長で640Gb/sを1000km伝送(実験室データ)した、という報告があります。果たして実用になる日が来るのでしょうか?
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これは研究中というよりは、実用化済みの技術の部類に入るかもしれません。すでに幹線系では採用されていると聞きます。 波長(直感的には「色」と考えてもいいでしょう)が微妙に異なる複数の光信号を別々に変調して送信し、受信側では特定の波長しか通さない「色フィルタ」を入れて分離し、検出するものです。各色ごとに別々に変調しますから、単位時間あたりに送れるデータ量(=速度)は、単純に光の波長の数だけ増えることになります。 このことは、1chで8Gb/sの変調が可能なシステムがあったとすると、128ch(色)同じ物を送受信側に並べて、1本のファイバで送れば、全体で1024Gb/s(1T=テラb/s)の速度になるということです。
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Fig.2-1
波長多重伝送の概念
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また、光の波長と同じ本数だけファイバを引いたのと同じであるため、海底ケーブルなど本数が限られるところで、真価を発揮します。 この技術は身近?なところでも使われていて、NTTのBフレッツは、送受信で別の波長を使うことで上下同時(全二重)に100Mb/sを実現しています。最近の研究はどこまで進んでいるのか、詳しくありませんが、実験室レベルでは10Tb/s程度までは出ているようです。 基幹系の通信が速くなるのはいいのですが、我々利用者としては、「光ファイバ1本で異なるサービスがいろいろ受けられる」という点に着目したいです。というのは、現時点で光ファイバを引くと、その中を流れるのは、インターネットのデータかNTTまたは他のキャリアの独自コンテンツのみですね。将来的に、例えば、放送局やケーブルテレビ局が、自局のコンテンツをNTTまで配信し、データとは波長が違う光で各加入者に分配して「放送」すれば、受信側ではそれに対応(放送とデータを波長で分離)したONUを設ければ、1本のファイバで多チャンネル放送もインターネットも、あるいはIP電話もお互いに干渉なく伝送できます。インターネットでダウンロード中にIP電話をかけると音声が途切れる、なんていうこともなくなります。 法的規制などいろいろ課題はあるでしょうが、せっかく超広帯域の伝送路が各家庭まで来ているのですから、デジタル放送の時代には、あってもいいサービスだと思います。(すでに一部で実験的には始まっていますが…)
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□ 2-3 新しい光通信技術3 コヒーレント光通信
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これまた専門用語で分かりにくいですが、何とか挑戦してみましょう。 光も「電磁波」の一種ですが、レーザーの光は(理想的には)きれいな正弦波をしています。先に、テレビやラジオで情報を伝送する時には、電気信号を「変調」する、と書きましたが、光を変調するのも原理は同じです。 きれいな正弦波は、「1.振幅がずっと一定」「2.周波数がずっと一定」「3.位相がずっと一定」という電磁波のことです。この中で、「位相」という言葉は聞きなれませんが、波の山の位置や谷の位置が(それまでずっと一定間隔で続いてきたとすると)以前と比べて変化した量のことをいいます。AMラジオは1.の振幅を、FMラジオは2.の周波数を、(アナログ)テレビ放送は音声をFM、映像をAMで変調しています。
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現状の光通信は、1.の振幅のみを使った、基本的に振幅が1と0(光っているかいないか)の変調です。これに加えて、周波数や、位相という、今まで使われていなかった光の性質を変化させて、情報を送ることができるとすれば、もっと高速に伝送ができるだろう、というのが研究の目的です。 と書くと簡単に実現できそうですが、光通信に使われている波長1.5μmで、その周波数は200THzと(電気信号から見ると)とてつもなく高いので、周波数や位相を電気信号で制御することは非常に困難なのです。 また、周波数や位相を制御しようとすると、元々の光源の周波数や位相が安定でなくてはなりませんが、現在光源になっているレーザーダイオード(以下、LD)はそのままでこれらを変調に用いられるほど安定ではありません。
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Fig.2-2
「波」の「振幅」「周波数」「位相」
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逆に言うと、LDの光はさほど「きれい」ではありません。これを克服するための研究も行なわれています。ファイバも特別な物に張り替える必要が出てくるかもしれませんが、これが実現すると、現在の1/0の変調から比べて、光に乗せられる情報量が飛躍的に増えるので、期待されます。
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その他、ここに書いた技術のほかにも、光をもっと身近かにする以下のような研究が行なわれています。
- 曲げ半径の小さなファイバ
折り曲げてもあまり損失が増加しない、あるいは機械的強度が保てるファイバで、曲げ半径1cm程度のところまで商品化されています(どういう原理なのかは調査中)。ここまで来ると、壁沿いの配線はもう問題なく行なえますね。
- プラスチック光ファイバ
安価な素材である樹脂を用いてファイバを構成し、現状よりはるかに高速性を実現し、家庭内LANや同軸に代わる画像配線を引いてしまおうという研究です。屈折率分布をどうやって作るのかなどは調査中です。
- 自動車内LAN
ちょっと通信とは違った分野ですが、最近の自動車には多種多様なセンサやアクチュエータが組み込まれていて、それらの制御信号伝送がネットワーク化されてきています。今はまだ銅線が主流のようですが、一部で光の適用が検討されています。自動車がモータで走るようになると、(ノイズの影響が無い)光は有利かもしれません。
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私が無線好きなので、「情報は電波や電気信号やめて、みーんな光で送ってよ」という、相当偏った意見だと思って下さい。ただ、アマチュア無線がこの世に生き残ろうが滅びようが、低コストでメニューの多様な放送/通信を実現するとすると、同じような回線・サービス形態になるのでは…と思い描いた、全くのトウシロな未来像です。
- 伝送線の形態
映像系・音声(電話)・データの情報は、それぞれ波長多重で1本のファイバで送って欲しいです。サービス会社が独自に自社でファイバを各戸に引くなんて、想像したくないです。新たに配管工事をせずに既存の配管の空きを利用して引けないと、導入コストが高すぎて普及しないでしょう。せっかく建てた家の壁を壊したくないですし、マンションなどでは1本通すのもどうか、というところもあるのですから。
- 映像系のコンテンツ
最も帯域を必要としますから、回線保有者は現在の衛星通信のようにファイバの帯域を時間と周波数で切り割して、コンテンツ/放送事業者に貸し出し、という形を取るようになるかも知れません。もちろん、映像は双方向です。我々視聴者は、見たいものを見たいだけ、あるいはチャンネル数を指定して見放題、などのメニューの中から選び、料金を払う、今のケーブルテレビと同様なシステムになると思います。 よく言われるように、放送と通信の融合は進むでしょうが、今のテレビ放送のように、純粋に「受け手」が完全に受動的なサービスも残るでしょう。「ながら族」はいちいちテレビに反応を返さないで、流しておくだけの楽しみ方ですから。
- 音声系
AM放送レベル・CDレベルといった音声の「放送」もありでしょうが、やはり最も使われるのは電話かな、と思います。音質や遅延などの品質によって、あるいは放送ではダウンロード可/不可などの複写制限、電話では映像あり/なし、などの選べるメニューによって、料金が異なってくるでしょう。基本サービスはほとんどタダ(月額基本料のみ)で今のAMラジオ、IP電話並みのサービス使え、目的に応じて付加料金を払って、有線放送的なBGMや電話なら映像付きの軽いチャットから遺産相続をめぐる親族会議(!)まで、なんてことができてしまうかもしれませんね。
- データ系
現在のISPサービスと同様、中を流すデータは何でもいいわけですから、これは多種多様でしょう。ただ、インターネットで音声や画像のデータを配信・交換するサービスを提供することで利益を得ようとすると、ネットワークの輻輳や盗聴・改ざんのリスクが今以上に高まるでしょう。回線事業者の責任範囲が明確になっていてリスク管理がしやすい形態があれば、そちらにシフトするのでは、と思います。 具体的には、伝送路を波長で物理的に分離して、データ(インターネット)と映像・音声系サービスを相互に接続せず、分けて通すようにすることが考えられます。こうすれば、ひとつのチャンネルの速度を力技で上げて、時分割の多重度を無理矢理上げるよりも、回路技術の面でも、セキュリティの面でも実現しやすいと思います。
と、ここまで書いてはみたものの、実現には技術的・法的ハードルがあって、すぐにはこんな世界はやって来ないと思いますし、この通りになるとも思えません。リスク面でも、セキュリティだって、どんな対策をしても、クラッカーはそれを破るのが生きがいですから、侵入のリスクがゼロともいえないでしょう。まぁ、この世界、10年先を見通せたら何とか…と言いますし、今のところは夢物語、ということで…。
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