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結婚してマンションに住むようになると、いよいよ電波を出す手段がなくなり、ずっと不完全燃焼状態でした。 当時乗っていたのは、親父のお下がりの車で、無線の設備は一切積んでいませんでしたが、高校の仲間内で移動運用に行ったりすると、車から電波が出せるようになっている便利さを、うらやましく思ったこともありました。 数年経ったころから、ゴム製の部品がボロボロとやられ始め、エアコンはガスが抜けて効かなくなり、しまいにはパワーウインドウのクラッチがいかれて、窓が閉まらなくなってしまいました。修理費が毎年のように万単位でかかるのに妻がキレて、車を買い換えることになりました。 近くのディーラーを廻って、子供ができたので「広めの車がいい」と言う妻と、適当な車を探します。買い替えに乗り気でなかった私は、無線のことなど忘れて、適当に見て廻っていました。割引対応などいろいろと事情があって、これまで乗っていたのと同じ日産車になりました。
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うちのマンションは建物内に立体駐車場があるのですが、車高1.55mまでしか入らないものです。後輩が乗っているようなワンボックスではなく、ワゴン車がせいぜいでした。「広め」という要求と、車高の要求から、薦められるままアベニールに決定しました。確かに展示車に乗ってみると、車内が広いのです。後部座席もフラットにできます。 そして決まりは、トランク部分にあったシガープラグ(今は大概のワゴン車にありますが)。これを見つけた瞬間から、無線の虫がムクムクと起き出して来ました。これなら、ちょっと天井が低いが、座って運用ができるし、眠くなったら足を延ばして寝られる! 私の心の中で、静かに計画は動き始めました。
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Fig. 1-1
これがアベニールだ
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430のハンディは持っていたので、車を買ってしばらくして、近くのハムショップでルーフレールにアンテナ基台と144/430のホイップアンテナをつけてみることにしました。これでコンテストをやろうと言うのではないのですが、車内配線の感覚と、「アンテナを車外に出して電波を出す」というのがどんなものなのか、やってみたかったのです。 「お試し」なので、まずは430のハンディでやってみることにします。アンテナは、将来も使えるように、144も出られるものにしました。FT-726(50〜430)を持っていたので、これで出られるようにと考えたためです。
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Fig. 1-2
ルーフレールに取り付けた基台
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当面はHFのアンテナは取り付けない計画です。基台はルーフレールに取り付けることにしました。「お試し」なので、車体に傷の付く可能性のある方法を取りたくなかったためです。 まずは基台にケーブルを取り付けます。ルーフレールから車庫の制限高までは、10cm以上あったので、大概の基台は問題なく付くはずです。コネクタ部分は、車体の振動で外れないよう、しっかりとネジ止めします。そして、基台をルーフレールに取り付けます。このとき、付属の傷防止&スベリ止めのゴムシートを挟み込みますが、ルーフレールが細い場合はこの厚みがイマイチ足りないことがあります。その時は、ホームセンターなどで適当な厚さのゴムシートを買ってきて、足した方がよいでしょう。車を屋外に保管している場合は、ゴムの劣化もありますので、耐久性のあるシリコーンゴムなどに替えてしまうのもよいかもしれません。 次に、ケーブルを室内に引き込みます。私の場合は、運転席側のルーフレールに基台を取り付けたので、運転席側からの引き込みになります。引込口は、一旦下にたるみを作るような形で固定します。ケーブルを伝ってくる雨水が、室内に入らないようにするためです。また、ケーブルがぶらぶらして引っかからないよう、貼付け式のケーブル固定具で固定します。今回はとりあえずモードですので、余ったケーブルは、運転性の下に丸めて置いておき、運用する際に取り出しました。 見栄えをよくするため、座席の横の、シートベルトが格納されているスペースにケーブルを隠してしまいたいところですが、万一のとき、シートベルトがケーブルに引っかかると、機能しなくなるおそれがあるので、ここは我慢しました。
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Fig. 1-3
基台から引込口まで
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Fig. 1-4
車内のケーブル配線
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ハンディをつないで、橋の上などで聞いてみると、結構遠くのレピーターも聞こえています。これまでもマンションから細々と、仮設のアンテナでQSOパーティーに出たことはありますが、全く聞こえ方が別世界です。 もっといろいろなバンドに出て、ガンガン行きたくなってきました。
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これで「いける」という感触がつかめたので、本格的な設備の検討を始めます。 VUのFMモービル機1台とホイップアンテナ1本でシンプルにまとめるのか、バリバリのコンテスト仕様で、車体の上にローテーターまで構えるのか…。形を決める前に、まずやりたいことを並べて、それにふさわしい装備を選んでいけば、自ずと最適化されるでしょう、ということで希望を並べてみました。一応、駐車場の車高制約は大前提として入れておきます。はじめの頃と、今では、やりたいことも少し変わって来ていますが、当初はこんな感じでした。
- 峠などに移動して、止めた車からのCW運用を中心にやりたい
- 移動中も連絡できるよう、ハンドフリーなマイクとPTTを付ける
- 出たいバンドはHF〜UHFまで全バンド。1.2Gは当面なくても可
- お手軽移動では、ホイップアンテナなど付け外しが容易なもの
- アンテナ配線は、HF&50と144&430で2系統ほしい
- 本格移動では八木(V/UHF)またはの水平系(HF)アンテナ
- 電源は当面、車のバッテリーと専用バッテリーの切替え式
あれこれ並べるうちに、結構贅沢な装備になってしまいました。アンテナなどは後から変更が利きますが、車内の装備はそうそういじれないので、最初から必要なものをそろえます。一方、実用面、安全面では制約条件がいろいろとあり、
- 家族で乗る(妻も運転する)ので、配線は極力隠すこと
- 機器類が座席など車内の居住空間を占有しないこと
- 車の安全走行に関わる装備と配線などが干渉しないこと
- 基台などをつけても車庫に入る(アンテナは入れる前に外す)こと
などに注意しました。
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まずはリグをどうするか、です。HF全バンドと、50〜430まで出られるモービル機は複数出ていますが、これまで、ICOMのリグを使ったことがなかったので、IC-706mkIIGにしました。ICOMのHFは、昔から耳がいい、という評判なので、試してみたくなりました。 車を買った翌年のハムフェアで新品を購入しましたが、mkIIGは100W機なので、そのままでは移動局としては申請できません。50Wへのパワーダウン改造が必要です。50W機ではなく、あえて100W機を選んだ理由は、将来固定局に転用する時100Wに戻せないか、と思ったからです。事前に、ICOMのブースでいろいろ聞いてみたところ、以下のことが分かりました。
- 100W機を50Wに改造することは可能。但し、技適番号は無効になる
- 改造機を100Wに戻すことも可能。技適番号は復活しない
- 50W機(mkIIGM)は100W化改造はできない
技適番号については別に気にしていませんでしたが、100W機は一旦50Wに改造して、また100Wに戻せるので、これに決めました。 購入してからしばらく資金難で塩漬けになっていましたが、翌年の正月に改造しました。改造は有料ですが、ICOM発行の改造証明書が付いてきて、それを付けて変更申請、保証認定となります。改造から返ってくると、技適番号のところに目隠しシールが貼られていました。 本体は、荷物置き部分(ラゲッジスペース、と言うらしい)に置くことにして、コントローラをコックピットセンターの(本来はカーナビなどの)スペースに固定することにします。
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Fig. 1-5
本体と付属品 セパレートケーブルは5m
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Fig. 1-6
背面 放熱器は100W機なのに小さい
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次はアンテナです。本格移動用アンテナとお手軽移動用のアンテナですが、本格の方は、昔、固定局の時に使っていたこともあって、クリエイトの730V-1, 830Vに決めました(後で書きますが、このアンテナの飛びは間違いありませんが、固定局用でデカくて重いので、移動にはお勧めしません)。50,144はあまり出ないので、当面見送りです。430は元々持っていた12エレシングルがありますので、それを使います。お手軽の方は、HF〜50はよく飛ぶ、と評判のダイアモンドのMDシリーズにしました。 タイヤベースとポールも忘れてはいけません。「お化けポール」と呼ばれているフジインダストリーのタイヤベースと7.2mのポールにします。その他、ポール伸張時のステーや金具など、細々した物が必要なのですが、アンテナ類も含めて、一気に揃えるほど資力もないので、徐々に揃えていくことにします。 一方、バッテリーですが、50W局なので、バッテリーで24時間コンテストにフル出場は厳しいかな、とも思いました(実際無理でした)。しかし、発発を買い込むほどしょっちゅう電波を出せそうもありませんし、メンテナンスも大変です。結局、大き目のバッテリーを近くのディスカウントストアの閉店セールで安く買いました。 車のバッテリーと無線用のバッテリーは切替え器を作って切り替えることにしました。アベニールのバッテリーは小さいですから、フルパワーで運用したらすぐに上がってしまいそうです。トランク部分にあるシガーライターソケットは、車の電源がONになっている間だけ電圧が出ますから、これでリレーをドライブし、自動切換えとします。車の電源が入っていないときは、無線用のバッテリーに切り替わるようにしておくわけです。 ここに挙げたもののうち、830VとHFのモービルホイップ(とコイルの一部)、タイヤベースとポールをリグを買った年の年末に買いました。
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ここでは、各ケーブルの配線経路を検討します。ケーブルは全部で次の8本です。
- 車のバッテリー → バッテリー切替器
- 無線機用バッテリー → バッテリー切替器
- バッテリー切替器 → IC-706mkIIG本体
- 144/430アンテナ基台 → IC-706mkIIG本体
- HF〜50アンテナ基台 → IC-706mkIIG本体
- IC-706mkIIG本体 ←→ コントローラ
- コントローラ → マイク
- コントローラ → PTT/Up-Down SW
バッテリー切替器に入ってくる電源線以外は市販品です。車のバッテリーから引っ張ってくる線は、5m近くになりそうなので、AWG14番の赤黒のツイストペアを2組並列に引くことにしました。これだけで相当な太さですが、長さが長いので、あまり長時間でフルパワーは出せないでしょう。元々、バッテリーも小さいですから、これで(勝手に)良しとします。
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電源以外も、長くて通すのが大変なのがほとんどです。右図は経路の構想図です。ちょっとゴチャゴチャしていて分かりにくいですが、電源と高周波の通るアンテナケーブルは、車体右側足元の配線路(後部スピーカーケーブルやリアワイパーの電源などが通る)を通すことにします。もちろんここは室内から隠蔽されています。 コントローラーケーブルは、高周波のケーブルと離したかったので、車体の中心を室内の敷物の下、小物入れの下、シフトレバーのカバーの下を通って、コックピットの中へ通します。これもほとんど見えません。
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Fig. 2-1
全体経路の構想図
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まずは電源系のケーブルです。一番長くて通すのが大変なのは、車のバッテリーからバッテリー切替器までの経路です。最初にボンネットを開けて、通せる経路を確認します。 まず、バッテリーの端子ですが、ナットがなくならないように、ねじ山がつぶされており、ナットが完全には取り外せません(緩めることはできます)。従って、ここに接続する端子は、丸型は入らないので、Y型にします。(手持ちは丸型しかなかったので、ニッパで輪を切ってY型にしました。) 電源ケーブルは高温になるエンジン周りをなるべく避けて通します。また、温度や振動からの保護のため、チューブに収納して配線します。振動で被覆が傷ついてボディとショートしたりすると、運転中にエンジンが急に止まったりすることもあるので、非常に危険です。念のため、バッテリー端子の直後に10Aのヒューズを4本(2組あるツイストペアの両方)入れることにします。ここのヒューズとヒューズホルダには、自動車用の振動に強いものを選べば良かったのですが、上記の理由(車のバッテリーではほとんど運用しない)のため、今回は簡易的に済ませました。
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Fig. 2-2
カシメられて外れないバッテリー端子のネジ
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Fig. 2-3
ボンネット内経路 エンジン付近を避ける
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バッテリーからエンジンルームの奥にある大きなモーター?の横を通り、フロントガラスの下を右から左へ通します。電源線を通した樹脂チューブをインシュロックで固定するので、固定のための引っかかりやしっかりした配管などが、ある程度の距離間隔であるところを選びます。
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Fig. 2-4
バッテリーからエンジンルーム奥まで
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Fig. 2-5
フロントガラスの下の経路
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Fig. 2-6
左下奥にある配線の「もぐりこみ」口
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エンジンルーム左奥には、リアワイパー等に繋がる配線が、エンジンルームから配線経路へと抜ける穴があります。奥まったところで分かりにくい(&写真が撮れない)のですが、左下の方に、ここに写っている配線が通っているゴムの部品があります。電源ケーブルもそこを通すことにします。 ここを抜けると、タイヤの泥除けの裏側に出ます。 タイヤの泥除けは、樹脂製で、フェンダーにいわゆるパチン止めで、内側はパチン止めと小さな樹脂製の+のねじで止まっています。このネジ類はかなりな数になります(10本以上)から、無くさないように気をつけます。走行中に脱落してはシャレになりませんので。
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Fig. 2-7
運転席右下の配線路
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Fig. 2-8
後部座席右下に続く配線路
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タイヤの泥除けの内側から室内へは、ほんの2〜30pほどの距離しかありません。ここを通ると、運転席右下のコンソールの下あたりに出ます。室内と室外は、ハーネス太さピッタリのゴムのパッキンのような部品で、しっかりと封止されています。ここは難所です。 室内側は、運転席の右下にあるボンネットのオープンレバーの下辺りに出てきます。その後、運転席足元の踏み板(ドアの内側)の下を通ります。この板は、パチン止めでボディに固定されています。無理な力をかけないように引っ張り上げると、簡単に外れます。無理矢理やるとパチン止めの爪が折れるので、注意します。戻すときも、爪がすべて穴の上に来ているか確認した上で、力をかけます。 私は後部座席のこの板の爪を折ってしまいました。ディーラーに取り寄せてもらいましたが、\2,000以上しました。こんなところで余計な出費をしないためにも、注意してください。 これを外すと、その下にはFig. 2-8のように、配線スペースが現れます。電源線はここを通します。後部ドアの下も、同様の構造になっています。 リグを置くラゲッジスペースには、後部座席の下からシートベルトの巻き込み口のある樹脂板の中を通って、行く必要があります。線材は、すべて小物入れボックスの近くに取り出すことにします。
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電源線のほかは市販品なので、そのまま使いますが、電源線は自作します。車のバッテリーと無線用のバッテリーを切り替えて使うためにこんなことをしなくてはならないので、専用のバッテリーのみで運用するなら、この作業は不要です。 今回使ったAWG#14の赤・黒のツイストペアは、いわゆる半端ものもので、長さもピッタリ10mではなく、9.5mくらいしかありませんでした。一応、届く見込みがありましたので、良しとしました。実際には、ほんの少し(40cmほど)足りませんでしたので、余裕を持って手に入れて下さい。 但し、この長さは上に示した経路のものであって、他の経路を通す時や、ラゲッジスペース内でも別の場所にリグを置く場合などは、当然長さが異なってきます。今回の経路で約5m、という値を目安に、線材を入手して下さい。 ただ、ツイストペアでこれほど太いものは秋葉原でもなかなか手に入らないと思います。基本的にツイストペアは発注時に撚りピッチなどを指定する「特注ケーブル」扱いとなってしまうようです。高周波の廻り込みに対しては、ツイストペアが有利ですが、どうしても手に入らなければ、平行線でも良いと思います。その時は、両端でフェライトに巻くなどの対策を取った方がいいでしょう。 写真を撮った後につけたので写っていませんが、バッテリー側にはヒューズホルダーを付けておきます。ヒューズは最後に入れます。
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Fig. 2-9
線材は約5m(2本)に切る
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Fig. 2-10
両端は圧着端子付け
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電線を作るところまでは、室内の作業でしたが、ここからはいよいよ現場作業になります。配線の通しやすさから、エンジンルーム側から開始します。
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バッテリー側の端子は安全のため、最後に取り付けます。Fig. 2-11を良く見ると分かりますが、電線はバッテリー近くで圧着端子に絶縁テープを巻き、仮止めしてあります。私の場合、試行錯誤が多くて配線が数日に渡ってしまい、この間、車が使えないとまずいので、このまま走行していました。 ケーブルにはホームセンターなどで車内配線用として売られている樹脂製のチューブをかぶせます。今回は線材が太いため、ツイストペアが2本まとめて入る適当な太さのものがなく、細めのものを2本束ねました。これを使うのは、高温になるエンジンルーム内だけなので、その分に必要な長さだけ購入します。このチューブは完全な筒ではなく、スリットが入っていますので、ケーブルはそこから容易に入ります。 絶縁チューブの繋ぎ目と、チューブにケーブルが出入りするところは、ほこりなどが入らないようにするためとチューブとケーブルがずれないように、絶縁テープで巻いておきます。
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Fig. 2-11
樹脂チューブにかぶせて配線
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さらに、検討した配線経路を通して行きます。エンジンルームの終わりまで来たら、右前輪の泥除けを外します。Fig. 2-12では、水色の矢印の部分がネジやパチン止めのピンの穴になっていて、このような個所が10箇所以上あります。ネジをなくさないようにするとともに、パチン止めとネジの種別を間違えないようにします。かなり奥まったところにもあり、1ヶ所でも付いたままだと泥除けが外れないので、ドロドロになりながらの苦戦でした。洗車のついでに、このスペースを良く洗ってから、作業した方がいいかもしれません。 エンジンルームからこのスペースへは、小さ目の穴ですが、特に問題なく通ります。
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Fig. 2-12
右前輪の泥除けを外して室内へ通す
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黄色の矢印が、既存ケーブルが室内に入っている部分です。上にも書きましたが、ここのゴムパッキンのような物は、太さぴったりなので、後から追加の線は入りません。 これにAWG#14を4本も通そうというのですから、無理な注文です。仕方なしに、そのゴム部品にカッターで切れ目を入れ、1本ずつ線を通します。元々ある配線を傷つけないように注意します。ケーブルはまだかなり長いので、ズルズルと室内に引っ張りこみます。 室内に出たケーブルは、運転席右足元のボンネット開レバーの下あたりに出ます。この周囲の樹脂のカバーも外しておいた方が、作業はやりやすいです。
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室内の配線を開始する前に、運転席と後部右座席のドアの下にある配線溝を開けておきます。ここは前に書いたように、パチン止めの「踏み板」を外せば現れてきます。中には、リアスピーカーやリヤワイパーと思われる配線、ウオッシャー液の配管などが通っています。Fig. 2-13には、ドアの機密性を保証するゴムのパッキンが写っています。このパッキンは一部外さないと配線路にかぶるので、そこだけ外します。 ここに、今回のケーブルを通して行きます。ツイストペア同士はバラバラにならないようにインシュロックで縛っておきますが、既存の配線と固定するのは最後に行ないます。長さの微調整が必要になるかもしれないからです。
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Fig. 2-13
運転席右下の配線路を通す
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Fig. 2-14
ルーフレール基台からの同軸と合流
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運転席の右横には、ルーフレールに付けた基台から降りてきている同軸ケーブルがあります。この作業をするまでは、余長は運転席のシートの下にとぐろを巻いておいておいたのですが、これも電源ケーブルと一緒に配線します。 シートベルトを巻き取っている部分の樹脂カバーの下から同軸ケーブルをもぐりこませ、電源ケーブルと合流させます。2種類とも、かなり線自体は硬さがあるので、樹脂カバーの下を後部座席方向に押し込んでいけば、座席横の配線路に出てきます。もしここの通過がうまく行かなければ、固めの針金などを後部側から通し、それにケーブルを引っ掛けて後部側から引っ張るといいでしょう。 今回はそこまでしなくても通ってしまったので、本当にうまくいくかは分かりませんが…。くれぐれも既存の配線にダメージを与えないように注意しながら行ないます。
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後部座席横まで来たら、背もたれ横のカバーの中を通します。このカバーもパチン止めで外れたはずなのですが、形が大きいので、無理に外そうとすると壊れそうでもあり、また、ピンが止まっている位置がどこだかわからず、2日間ほど悩みました。 同軸と電源ケーブルを束ねた物は結構硬いので、手探りで後部に通そうとしましたが、結局このやり方では無理でした。この後のラゲッジスペースの配線の項に書くように、一旦ラゲッジスペース側でこのカバーの下から手を入れて、引っ張り出すしかありませんでした。ここでは一旦、Fig. 2-15のようにしておくものとします。
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Fig. 2-15
後部座席の配線路を通す
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Fig. 2-16
他の配線とインシュロックで固定
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足元の配線路は、配線位置などを微調整したら、Fig. 2-16のように既存の配線とインシュロックで束ねます。このとき、ウオッシャ液の配管だけは別にしておきます。これを締めてしまうと、液が出なくなりますから。
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Fig. 2-17
同軸の合流部
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Fig. 2-18
他の配線とインシュロックで固定、収納
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ルーフレールからの同軸は、シートベルト巻取り部のカバーの下からもぐりこませます。後部座席横も運転席横と同様に、インシュロックで既存配線と共締めにします。 ここまで来たら、足元の配線は終わりですので、「踏み板」を元通りパチン止めで固定します。固定の際に、ドアの防水や機密性のためのゴムパッキンとの位置関係をよく確認します。大概は「踏み板」の方が上にかぶさるようになっているので、固定する時に良く見ながらやるようにします。
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□ 2-5 ラゲッジスペース内を配線する(電源・同軸) |
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ラゲッジスペース内の配線は、多少無理やり、なところがありました。Fig. 2-19を見てください。 一旦、後部座席の背もたれのところで立ち上げた配線は、手探りで後方に通します。ドアの気密・防水のためのゴムパッキンをかなり上まで外してやると、ボディと内装の樹脂版の間にケーブルを通せると思います。手探りではありますが、途中のシートベルトの出てくる穴くらいまでは、何とか送り込み側から狙いをつけて通せます。シートベルトの出口の周囲に取り付けられている板は、これもパチン止めですので、引っ張れば外れます。 電線を通すのは、一人でもできないことはありませんが、誰かに助手を頼めるなら、2人でやった方が効率がいいでしょう。あるいは、太目の銅線や針金などで後ろ側からドア方向に、「通線」しておく手もあります。
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Fig. 2-19
後部シートベルトの引込口からの取出し
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Fig. 2-20
トノボード支持レールの取り外し
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ここまで通ったら、後は「力わざ」です。 まず、トノボードを取り付けていたレールを外します。+ネジとナットで、かなり強力に固定されています。+ネジはカバーがついていて、一見すると場所がわかりませんが、カバーは手で外せます。(Fig. 2-20で、レールの端で手前にめくれているのがカバーです。) Fig. 2-20で、レールがついていた場所には、いくつか穴があいていますが、ケーブルはこの上に押し込みます。手で探ってみると分かりますが、この穴の上にはケーブルが収まる程度のスペースがあります。このとき、注意しなければいけないのは、シートベルトの巻取りに、ケーブルが干渉しないようにすることです。
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そうしないと万が一の時に大変危険なことになります。具体的にどうすればいいかは、開けて中が見られなかったので説明しづらいのですが、Fig. 2-19ではケーブルがシートベルトの下を通っていますが、実際に通すのはシートベルトの上側です。 Fig. 2-19でケーブルが出てきているところから、順に手でケーブルを押し込んで行き、サイドポケットの手前あたりで引き出して垂らしておきます。この後、コントロールケーブルも同じ所から引き出しますが、多分ここまでの作業を1日で終わることは困難でしょうから、一旦トノボード用のレールを元に戻しておきます。そのままでも支障がない、という方は、特に元に戻す必要はありません。(私の場合は、週末で作業が終わらなかった上に、平日に妻と後部座席に子供が乗るので、ケーブルを除いて元通りにしておきました。)
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ここまででもリグを積んでアンテナを繋げば、電波は出せる状態にはなりますが、お手軽移動の時などは、運転席からオペレーションしたいものです。普段、ラゲッジスペースには子供のおもちゃや洗車用具など「ガラクタ」が積まれていますから、片付けるのが面倒なだけですが…。 というわけで、いよいよリグをセパレートにするケーブルを配線し、マイクやPTTなども走行中の運用に危険の無いように、取り付けて行きます。
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Fig. 3-1
センターコンソールを外す
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まず、コックピット中央の小物入れ、空調吹出し口、オーディオ関係の部分を、ごっそり外します。カーナビが装備されていない車種の場合、時計の下に小物入れがありますが、ここにコントローラをセットするため、セパレートケーブルをこの小物入れの奥にある小さな穴を通すのが目的です。 ここの作業は、ディーラーに持ち込んでメカニックの方にお願いしました。正直言って、外し方がわかりませんでした。実は家に戻った後、コネクタのオスメスを間違えたことに気づき、自分で技術の方がやっていた方法を見よう見真似でやってみたのですが、専用の工具がないと、ドライバーなどでこじることになり、(さほど大きくはありませんが)傷が付くようですので、やめた方が無難です。 Fig. 3-1では、オーディオもごっそり外れていますが、目的は上の部分の小物入れを外すことですので、オーディオを外すことは必須ではありません。 また、小物入れの部分以外にコントローラを置く場合は、ここでの作業は必要ありません。
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次に、Fig. 3-2のように、3つある空調の吹出し口の上から、セパレートケーブルを通して、運転席の左足元に引き出します。この経路は、特に障害となるものはありませんが、足元に引き出すところでは、サイドブレーキなどの運転に関わる装置には、触れないように配線します。また、くれぐれもオスメスを間違えないようにします。間違えると、また工賃を払って外してもらうか、私のようにちょっとコンソールに傷を付けてでも自分でやる羽目になります。 この後の、小物入れの奥の配線口を広げる作業まで、メカニックの方にやってもらい、一旦家に戻ることにしたので、ケーブルは足元の邪魔にならないところに巻いておきます。
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Fig. 3-2
セパレートケーブルを通す
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時計の下の小物入れには、オプションで後からナビを付ける時に使用すると思われる、ケーブルまたはコネクタ用の小さな穴があります。この穴は小さすぎて、セパレートケーブルのコネクタが通りませんでした。 今回はこれを通すのが目的です。まずは穴を大きくする必要があります。メカニックの方にコネクタを見せて、「これが通るくらいに大きくして下さい」とお願いしました。ヤスリでこするだけですので、自分でも可能ですが、コンソールを外す作業だけでは申し訳ない?ので、お願いしてみました。 Fig. 3-3は小物入れ部分を後ろから見たものですが、ご覧の通り、きれいに仕上げてもらえました。
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Fig. 3-3
コネクタが通るよう、拡大した穴
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これでコンソール部分の改造と配線通しは終わりですが、時計・ハザードランプのスイッチ等の信号コネクタを付けるのを忘れないようにします。メカニックの方にやってもらえば問題ないわけですが、私のようにハマって自分でやる羽目になった方のために…。
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Fig. 3-4
センターコンソールの「ガワ」だけを外す
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Fig. 3-5
小さ目のフェライトを1個巻いておく
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Fig. 3-4は、オーディオを固定して、コンソールの「ガワ」だけが外れた状態のものです。これも固定ネジなどはなく、「パチン止め」です。もし、傷を付けるリスクを覚悟の上で自分で作業される方は、上で書いたように、オーディオは外さなくてもこの状態になれば作業は可能です。 線が通るとFig. 3-5のようになりますが、フェライトは巻いておいた方がいいでしょう。私は小さめのをひとつ巻いておきましたが、これがないと、CWでフルパワー送信した時に回り込みが起きて、送信できなくなるバンドがありました。ケーブルが5mもありますから、念には念を入れておいたほうがいいでしょう。
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□ 3-2 座席間シフトレバー・小物入れ下を配線する |
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Fig. 3-6
シフトレバーカバーと小物入れを外す
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セパレートケーブルは、回り込みを避けるため、ルーフレール基台の同軸とは別経路のシフトレバー横・小物入れの下を通します。ここでは、それぞれを取り外します。 上で、センターコンソールの「ガワ」を外しましたが、オーディオの両脇辺りにシフトレバーの周囲カバーを固定しているネジがあります。また、小物入れの下部、運転席・助手席の足元に2ヶ所ネジがあり、これらを外すと、カバーと小物入れ全体が外れます。 なお、シフトレバーはPに入っているとカバーが外れません。必ず、平坦な場所で周囲が安全なところに車を止め、サイドブレーキをしっかりかけてエンジンを切り、シフトレバーの前方にある赤ボタンを押しながら、レバーをニュートラル位置に持ってきます。
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危険が伴いますので、自信のない方、安全にやりたい方は、上記のセンターコンソールを外すのと同時に、メカニックの方にやってもらいましょう。 外れたら、ここも既存のケーブル類に沿わせて、セパレートケーブルを配線して行きます。簡単に外れたりするような構造にはなっていませんが、安全に関わる装置ですので、慎重にやります。 小物入れの後ろから後部座席までは、敷物の下を通します。後部座席は2つのシートが並んだ構造になっていますが、セパレートケーブルはその間を通すような形で、背もたれの後ろまで引き出しておきます。
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Fig. 3-7
既存の配線に沿ってセパレートケーブル配線
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□ 3-3 後部座席後ろ・ラゲッジスペースを配線する |
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セパレートケーブルが後部座席の後ろ側まで到達したら、電源やアンテナケーブルが出ているのと同じところまで、配線します。 まず、右側の後部座席の背もたれの後ろの布張りのようになっている板を外します。この板はパチン止めになっていて、引っ張ると外れます。均等に力をかけ、板を折らないように注意します。 ケーブルを右側のタイヤハウジング(右後輪)の上側まで通したら、パチン止めの板を元に戻します。あとは、電源ケーブルとルーフレールからの同軸を引いた時と同じ要領で、ラゲッジスペース右壁の樹脂板の下からケーブルをもぐりこませ、同じ経路を配線します。
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Fig. 3-8
右側の後部座席の背もたれの後ろ
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Fig. 3-9
一通りの配線が終わったケーブル類
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この時にトノボードのレールを外すのも前回と同じです。私の場合は、電源ケーブルと同軸ケーブルに時間がかかってしまったので、1回の週末ではできませんでした。もし、バッテリーからの配線とセパレートケーブルの配線まで一気にやれる(その間、車を使わない)なら、やってしまったほうが効率はいいでしょう。 最後に、こちらのケーブルの端にもフェライトを巻きつけて、Fig. 3-9のようにリグへの配線は一応の完了です。 「一応の」と書いたのは、実はまだ、バッテリー切替器の取り付けとトランクハッチの基台を取り付けが済んでいないからです。また、ご覧の通り、電源ケーブルの長さが少し足りません。電源用線材の自作のところでも書いたように、ありあわせの線材を使ったためですが、5m以上は確保した方がいいと思います。また、バッテリー切替器は自作のページで製作し、トランクハッチ基台は無線車仕込み2でルーフレール基台の接地と同時に行ないます。
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また、ここまで書きませんでしたが、車のバッテリー直後に入れたヒューズボックスには、まだヒューズを入れないでおきます。すべての配線が終わって、ショートがなく、導通がまちがいないことを確認してから、最後に入れます。
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