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第4章で紹介したバッテリー切替器です。車のバッテリーと無線用のバッテリーを、車の電源の入/切に合わせて切り替えます。 アベニールのラゲッジスペースにある、アクセサリ用シガーライターソケットに来ている12Vは、キースイッチに連動していて、車の電源が切れているときは電圧が出ません。これを利用するわけです。つまり、この電圧でそのままリレーを駆動します。 車の電源が切れているときは、無線機用のバッテリーを使用し、電源が入っているときは車のバッテリーを使います。ハイパワーで運用する場合は、シガーライターソケットからプラグを抜いてしまえば、車の電源が入っていても、無線機用のバッテリーからの運用となります。 バッテリーからは最大20Aの電流が流れますから、それに耐えうる線材とリレーの選択を行ないます。リレーは12Vのものを使いますが、24Vのものに比べてあまり品種がありません。ジャンクでもかまいませんが、電流容量には注意が必要です。 今回は4接点のものを、+側と−側(GND:アベニールはマイナス接地)両方に1個ずつ使用しました。1接点あたり5Aの容量がありますので、4接点で20Aとなります。アマチュア的にはこれでOKですが、プロならば接点の接触抵抗バラツキなどでの電流アンバランスを考えて、2〜3倍の安全係数を見ます。ただ、無線機の場合、送信中にいきなり電源を落とすことはないですし、フルパワーでキーダウンしっぱなしということもまずないので、問題ないと思います。 また、この切替器には、コモンモードの除去という機能を持たせました。コモンモードについてはここでは詳しく書きませんが、車の側や自らが出している電波の回り込みなどを防ぎます。 フィルタですからコイルを巻きますが、これまた20Aという電流に耐えるために、3.2mmφのウレタン線(UEW)をフェライトに巻いて使いました。電線はかなり硬いので、巻くのに一苦労ですが、左図のように+/GND側ともお互いに流れる電流が作る磁界が逆向きになるように巻きます。こうすることで、行って帰ってくる(2本の線を流れる逆向きの)電流にはインダクタンスを持たず、同じ方向に向く電流にはインダクタンスを持つようになります。 フェライトコアの詳細は設計資料をなくしてしまったため、出てきたら改めて公開します。
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Fig. 1-1
自分で巻いたコモンモードコイル
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Fig. 1-2
使用した主な部品
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回路はFig. 1-3のようになっています。ヒューズなど保護回路はありません。それぞれのバッテリーの直後に入れるべきと考えて入れていません。(こんなことを書きながら無線機側のバッテリーにはヒューズを入れていないので、危険極まりないのですが。) 実体配線はFig. 1-5のようになっています。ちょっと太い線が絡み合ってゴチャゴチャしていてよく分かりませんが、コアを固定するため、振動吸収材としての薄いゴムシートを敷いて、上からはアクリル板をネジ止めしています。アクリル板の裏面にもゴムシートを貼ってあります。フェライトはショックに弱いので、このようにしていますが、もっとエレガントな止め方はないものかと思います。
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Fig. 1-3
回路図 能動部品はない
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Fig. 1-4
外観は端子台のかたまり?のよう
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Fig. 1-5
コモンモードコイルの固定に苦心
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とにかく大電流が流れても大丈夫なように、太い線を使っているので不恰好です。見た目より性能重視です。どうせ箱の中に納めてしまいますから。入出力にも大き目の端子台を使用しています。 端末処理には圧着端子を使いますが、端子メーカーの指定する専用工具を使用することをお勧めします。圧着部の形状が違う他メーカーの工具を使ったり、ペンチなどで適当にカシメたりすると大電流を流した時に発熱します。工具は買うと数万円するものもありますから、なるべく有名どころのメーカーの端子を買って、近くの電気工事店などで工具をお借りするなどして下さい。私の場合は、会社に工具がありましたので、会社に電線と端子を持っていって圧着してきました。 入力は2系統ですが出力は1系統です。一方、出力には複数のリグや(クルマ用の)蛍光灯などの備品を接続するので、分けておきます。 比較実験したわけではないので、正確なことはわかりませんが、車から電源を取った状態でフルパワーを出しても、CDプレーヤーが音飛びしたり、アンプに飛び込んだりはしていません。また、電源経由で車側からのイグニッションノイズやオルタネータノイズは入り込んでいません。(アンテナから飛び込んでくるのをどうしようか、という問題は残っていますが…。)
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□ 1-2 ノーマルモードフィルタ[製作途中! 息切れか?] |
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車にオーディオ機器や無線機を積むと必ずといっていいほど問題になるのが、オルタネータノイズです。「びゅーん」という感じのエンジンの回転数に応じたノイズです。オルタネータノイズはノーマルモードなので、コモンモードコイルでは当然のことながら取れません。いろいろなサイトで調べてみましたが、電源にLPFを入れなければ解決しないということで、LPFを作ろうと思い立ったのがこのフィルタです。 コイルは適当なフェライトバーに先にコモンモードコイルを巻いたのに使ったのと同じ3.2mmφのUEW線を巻けるだけ巻きました。
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Fig. 1-6
部品集め 下のフェライトバーは予備
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Fig. 1-7
45Tほど巻いたコイル
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Fig. 1-8
コンデンサとカプトンテープ巻きのコア
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フェライトバーはもろいので、巻く前に耐熱性のカプトンテープ保護してあります。職場で使わないのが余っていたためで、カプトンである必要はありませんが、破れにくく長期安定性があるものにします。(電気絶縁用のビニルテープやセロテープではイマイチでしょう) これで、インダクタンスは約100μHありました。カットオフ周波数は100Hz以下にしたいところです。2次のLPFとなりますから、カットオフ周波数が1/(2π√LC)で、L=100μHとから、C=25330μFと求められます。秋葉原で探したら、47000μFでは(サイズが)大き過ぎたので、22000μFにしました。 ところが、ここまでやったところで、ノイズレベルをいろいろな周波数で確認しようと、ある日、エンジンをかけたままリグの電源を入れました。ところがノイズの音がしないので、よく見ると、アンテナコネクタが抜けていたのです。ということは、ノイズは電源から廻っているのではない、ということです。イグニッションノイズが、オルタネータノイズで変調を受けている(ホンマかいな?!)ということなのでしょうか? そんなこともあって、急速にフィルタ製作の意欲が失せてしまい、この部品たちはほったらかしになっています。ここまで読んで下さった皆様、申し訳ありませんでした。ただ、わずかではありますが、電源から廻っているものもあるようなので、いつの日か、切替器とノーマルモードフィルタを合体させたものを作りたいと考えています。その時はまた報告します。
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IC-706mkIIGでは、コントローラのマイク端子のある信号線に、抵抗を介してパドルにつなぐとエレキーが使えるようになります。詳しくはマニュアルに出ていますが、ここでは、安価な市販のネットワークケーブルを使って、エレキー用のケーブルを作りました。 IC-706mkIIGコントローラのマイク端子は、RJ-45なので、市販のカテゴリ5などのネットワークケーブルを途中で切って、必要な抵抗や引き出し線を付ければ使えます。 Fig. 1-9で、巻いてあるフェライトは最初から巻いていたわけではありません。10MHzで運用したとき、なぜかそれまで他のバンドでは全く出なかった回り込みが、この周波数に限って出てしまい、キーイングが全く不能になるので、急遽巻いたものです。
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Fig. 1-9
市販のネットワークケーブルを利用
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これまで、1.9(1.8), 18, 24.5 MHz以外では運用し、回り込みは出ていません。これらの周波数も、多分大丈夫でしょう。50Wなのにアンテナが近いと、これほど回り込むものかと思いました。
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制作方法ですが、以下のように作ります。 まず、電気店などに行って、短くて安価なカテゴリ5以上でコネクタ付きのネットワークケーブル(UTPケーブル)を買ってきます。種類はストレートケーブルにします。長さはお好みですが、回り込みが恐いので、オペレーションスタイルに応じた最短に切ります。 切ると、中は大概はオレンジ・茶・青・緑の4対のツイストペアになっていて、ペアの片方はストライプ状に、もう片方は単色になっています。これらのうち、パドルに接続するのは、2番ピン(オレンジ単色)と7番ピン(茶色のストライプ)です。(ここで書いたのは、あくまでも一般的な製品の例ですので、製作時には必ずテスターなどでピン番と色の対応を確認して下さい。)
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Fig. 1-10
パドル用ケーブルの配線
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短点側に3.9kΩ、長点側に2.2kΩ、各々±5%の抵抗を入れて右図のように接続します。ほとんどマニュアル通りで、特に工夫する点もありませんが、私はこれら2本の抵抗がむき出しになるのが嫌だったので、それぞれを熱収縮チューブに包んで、さらにその上からパドルに至る3本の線を太めの収縮チューブで包んで一体にしてしまいました。 Fig. 1-9のフェライトコアの右上に見えている黒い部分の中に、この回路が収められています。 余談ですが、IC-706kmIIの内蔵エレキーは、スクイズ動作ができません。元々この機能は、Up,Downボタン付きのマイクをエレキーに流用しようというものですので、仕方ないのかもしれません。 この回路図から想像するには、抵抗の両端に発生する電圧をウインドウコンパレータにかけて、UpかDownか両方押されていないかを判定しているものと思います。だとすれば、両方押せば3.9kΩと2.2kΩの並列ですから、その電圧値を判定してくれれば、スクイズ動作できるのではないかと思いますが、どうなんでしょう、ICOMさん?
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バッテリーを買ったとき、収納はどうしようかと悩んでしまいました。何せ、重いのです。参考文献には、プラスチックのモノ入れに2個のバッテリーを並列にしてスイッチをつけるなど工夫されていましたが、このバッテリーは1個で20kgもあるので、多分プラスチックではダメだろうと思い、丈夫な木の箱を作ることにしました。 でもやはりプラスチックの方が良かった…なぜなら、板厚が厚い(18mmもある!)ので、箱自体が重くて合計で25kg位になってしまったからです。こんなものを上げ下げしていたら、確実に腰を痛めます。 バッテリー自体の重さはともかく、もっと薄い板材で丈夫なものを作るように工夫した方がいいと思います。参考程度に見て下さい。
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箱の構造はFig. 2-1の通りです。仕切りが入っていますが、大きいスペースの方が、バッテリーが入るスペース、小さい方が、ログやコンテスト時の資料類、免許状などを入れる場所です。運用の際、バッテリーは必ず持って行くものですから、ログなどの書類はここに入れておけば忘れることはありません。 蓋が付いているのは、電極間の短絡防止のためと、「テーブル」の機能を持たせるためです。中の書類を出してしまえば、運用中は蓋をあけることはまずありませんから。
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Fig. 2-1
内部構造 幅を大きめに作り仕切りを入れる
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Fig. 2-2
両脇に手が入るスペースを作る
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Fig. 2-3
全体はこんな感じ
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Fig. 2-2は、バッテリーを入れたところです。充電するのも箱に入れたままなので、バッテリーを出し入れすることは滅多にありませんが、出せるようにしておかないと困ります。私は両側に4〜5cm程度の空きを設けて手が入るようにしましたが、もっとエレガントにやるなら、バッテリー自体に荷締めロープなどを2本掛けておき、必要な時に引っ張り上げる、などすれば、余分なスペースは設けずに済みます。 Fig. 2-3にあるとおり、蓋は「パチン止め」金具で止めるようにし、両脇に取っ手を付けました。ちなみに、この取っ手は接着剤で付けてはいけません。長めのネジをたくさん使って頑丈に止めます。約25kgの物が足の上にまともに落ちてくることを考えると、恐ろしくて接着剤は使えません。
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Fig. 2-4
脇に電線の引出し口を付ける
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Fig. 2-4は実際に使っているところです。この写真では下の方の、電線の引き出し部分に写っていますが、蓋を閉めても電線が挟まれないように、丸ヤスリで電線の引出し口を作ります。電線は太い(ここもAWG#14を2ペア)ので、十分削ります。 書類入れの部分には、コンテストログやメモ用紙などが入っています。ノートPCも薄いものなら入ります。 ちなみに、私は今だにノートPCを持っていません。PC98時代にPC-9801NS/Tを持ったことがありますが、あまり有効に使いませんでした。DOS/Vマシンになってからは、その拡張性に乏しいところと価格の高さがネックになって、今だに買えないでいます。今のところ、仕事で移動が多いわけでもなく、家にもマシンが2台ある状況で、コンテストログのためだけに、高価な3台目を買う気にはどうしてもなれないのです。チョッと頭が固くなってきたかもしれません。
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コンテストでバリバリ出ている後輩は、みんな持っていて、家に帰ってすぐにメールでログ提出、とやっているようですが、私は今だに手書きのログに手書きのチェックリストです。 さて、このバッテリーケースですが、持ち運びにはあまりにも重く、時々腰痛を覚えるので、さすがに限界を感じて、60kgまで乗せられる頑丈なカートを買いました。これでやっと、上げ下ろしの時だけのリスクになりました。 早く軽量(5kg以下)で純アルコールを500mlほど入れたら100Ahくらい取り出せる燃料電池が実用化されないですかね。燃料電池は、廃熱で冬は暖房になりそうだけど、夏は暑そうだ…。車の外に置いて使えばいいか。重いバッテリーも、発々もこりごりです。
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無線を再開した頃に、調子に乗ってクリエイトの730V-1や830Vを買ってしまったため、妻から置き場所にクレームが付き、急遽作った箱です。
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最初はこれごと移動に持って移動運用に行こうかと思ったのですが、これまた重くて腰を痛めそうなものに仕上がってしまったため、壁に立てかけたままになっています。 Fig. 2-5が壁に立てかけているところです。普通、ホームセンターで売られている板材は、1810mmが定尺なので、このままでは2m近くあるエレメントの長さに足りません。仕方なく付けたのが、上部の「帽子」です。前に3つある「パチン止め」を外せば、この帽子が後ろに倒れるようになっています。エレメントを入れたまま帽子を倒すとエレメントが折れる方向になるので、普段は倒しません。 Fig. 2-6を見ると、元々入っていたダンボール箱の長さから、帽子部分がないと入らないことがわかります。ちなみに、蓋も重量級!なので、ちょうつがいは6個もつけてあります。 Fig. 2-7は、蓋を開けたところです。2箇所のパチン止めを外すと蓋が開きます。
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Fig. 2-5
「棺桶」のような外観
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Fig. 2-6
これから入れる2本のアンテナ
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Fig. 2-7
蓋を開けたところ
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入れようとしていたアンテナは、730V-1と830Vですが、マウント金具やUボルトは入れていません。マウント金具を入れると、エレメントが全部入らなくなってしまうためで、Uボルトはなくしてしまうからです。 Fig. 2-8は、帽子の部分を後ろに折り曲げたところです。Fig. 2-9は、「身」の両側に付けた持ち手です(Fig. 2-6とFig. 2-7では、まだ取り付ける前なので、写っていません)。これがないと、持ち運べません。アンテナを入れた状態で25kg程度ありますから、大き目のものを取り付けます。
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Fig. 2-8
帽子の部分の折り曲げ機構
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Fig. 2-9
持ち手 左側にも同じ物が付いている
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いよいよ実際にアンテナを入れてみます。板材を切る前に、エレメントの長さ(ちょうど2m)+αで「帽子」部分を設計したはずなのに、いざ入れてみると、どうしても一番長いパイプが入りません。ここで失敗だったのは、一番長いパイプには、根元に樹脂のソケット(マニュアルによる用語)をかぶせる必要があったことです。 ソケットの底部の厚み分、長くなってしまい、+αの分も食いつぶしてしまったのでした。仕方なく、Fig. 2-10のように渡してある板を削り、入るようにしました。この渡し板が何故あるかというと、箱を立てかけた時に、エレメントがズリ出てこないようにストッパーの役目をさせるためです。
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Fig. 2-10
長いエレメントが入らないので削る
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Fig. 2-11
全部入れてみたところ 重い!
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やっと全部のエレメントが入るようになったので、入れてみました(Fig. 2-11)。コイルの太さなど考慮に入れていませんから、入らない可能性もあるのでビクビクものでした。問題なく入りましたが、今ひとつコイルの部分がゴロゴロして中での座りが悪いようです。しかしこればかりは、中はただの箱ですので、新聞紙などを入れて緩衝材にするしかありません。 最初、これにアンテナを入れて車に載せようかと思いましたが、妻に「棺桶を運んでいるみたいで『通報』されるからやめとけ」と言われ、泣く泣くやめました。 そもそも、こんなデカいアンテナ+箱を、移動に持って行こうなどというのが間違いなのです。持って行くにしても、荷物縛り用のマジックテープなどの簡易な方法で束ねるなどしたほうが運ぶのが余程楽です。
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