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ここで教科書的なことを書いても仕方ないですし、そこまで知識がない、ということで、使う側から見た世間話的なお話。途切れるIP電話を使いながら、考えました。 我々が使っている(メタル回線の)電話や一部光ファイバのインフラは、大部分がNTTがまだ電電公社だった頃に設計、敷設された物です。いつだったか、通信関係の教科書を読んでいて知ったのですが、電電公社のアクセス回線の余裕度(設計初期に見込まれる電話局から各戸までの電線の数と、将来的に契約が増えたときの数の比)を2としていた、というのです。つまり、建設当初5000回線が見込まれる電話局では、管路も、架空のケーブルも、交換機容量も、バックアップの電源もすべて10000本分収容できる設計になっている、ということです。電話局間の回線はどういう設計になっているか分かりません。 そう言われて見てみると、光ファイバなど新しいインフラがまだの地域では、き線点からの管路で、電柱などに沿って立ち上がっているものでは、大概が2本束になっていて、1本は電話線が通っていますが、残りの1本は未使用のままであることが多いです。 また、交換機がリレーの塊だった昔の話で、今では残っていないと思いますが、電話局には、停電時に備えて巨大なフライホイールが廻っており、普段はモーターまたはエンジンでこれを回しておき、停電時には軸を発電機に接続して使う、という話を聞いたことがあります。今はきっと、巨大なフライホイールの代わりにバッテリーが据え付けられているのでしょう。長時間の停電にはディーゼルエンジンの自家発電に切り替えるそうです。 電電公社時代は「官営事業」でしたから、「需要にはすぐにこたえられるようにする」「何があっても絶対に通信は止めない」という大義名分の元、コストをかけても何の問題もありませんでした。供給性と信頼度重視で、堅固なインフラを築き上げたことには敬意を持ちます。それが3分10円の市内、高かった市外料金であったとしても、です。 ところが、時代は移り、電電公社はNTTとなり、競争は自由化され、電気通信事業に参入が相次ぎました。また、トラフィックの中身も回線占有型の電話から、パケット交換型のデータへと大きく変化しました。当初は圧倒的な強さを誇っていたNTTは、合併や統合で力をつけてきた「その他大勢」に防戦を強いられる経営環境になってきました。最近の、通話料やついには基本料金の値下げがこれを象徴しています。 こうなると、今まで誇っていた「需要にこたえるための予備」や「災害時にも絶対に止まらない設備」が、重荷になってくるわけです。NTTが「いつでも繋がるって、安全・安心」などとTVでCMを打つのも、差別化戦略としては分かるのですが、どこまで受け入れられているのでしょうか? いっそのこと、
「『安いです、でも時々止まります』がいいのか、『少々高いです、でも絶対止まりません』が良いのか、皆さんはどちら?」
とでも言ってみたらどうですか? 今は、一般の人(私も含めて)には「電話が止まる」ということ自体が、実感としてないので、「安い方がいいに決まっている」という選択をすることになるのではないでしょうか? もちろん、裏づけとして分かりやすいデータを示すことは必要です。 コストと品質や信頼性は多くの場合、トレードオフです。スーパーで買い物をする時だって、賞味期限が近いものは、激安です。「安くなるにはワケがある」ということを知らせずに、「電話はどの会社も同じ」と思っている消費者を相手に、価格だけで市場を形成すれば、どうなるでしょうか? 電電公社時代の贅肉はそぎ落とし、スリムになった(はずの)NTTと、元々低コストを目指して参入した事業者とが、「これ以上価格で競争すると、品質や信頼度を下げずにはいられない」状態になってきているのではないかと想像します。もしそうなら、是非一般の人にも分かるように、品質とコスト(電話料金)の関係を、分かりやすく示してほしいと思います。我々には、選ぼうにも元になるデータがないのです。 アメリカでは、日本と同様、電話会社が選択できるようになっていますが、消費者が「受話器を上げても発信音が出ない」可能性を許容して、安い会社を選んでいるのですから。
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いろいろな方が工事の記録を公開されていますが、実際に来て工事しているのを見ると、本当に正確で迅速ですね。驚いて見ていました。ことに、接続作業の早さには目を見張るものがありました。あのくらいの速さでどんどんこなして行かないと、とても間に合わないのでしょう。今回は、「本当に工事費無料でやってもらってもいいの?」と思うくらい、大人数の作業員さんと、装備で来られましたが、もちろんこれらがタダで行なわれているはずはありませんね。 一度引いてしまったインフラは、そうそう乗り換えるわけには行かない&乗り換えられないですから、これからずっと使ってもらえることと、今回のように集合住宅では、一度多芯のケーブルを引いたら、しばらくは追加工事しなくても、ある程度まとまった数の契約が期待できる、ということで無料でやっているのでしょう。 会社の図書室に、NTTの戦略立案の方(複数)が書かれた今後のロードマップのような本があって、読んでみたのですが、キーワードは「レゾナント(響きあう、共鳴する)コミニュケーション」なんだそうです。ざっと読んだ限りでは、技術的な用語が難しいのと、「双方向でやる電話やマルチポイント間のテレビ会議みたいなのと、どこが違うんじゃ?」という疑問に分かりやすく答えてくれる部分がなくて、「モヤっと」感が残ったままです。遠い将来の夢物語ではなくて、NTTで開発中の超高速スイッチング技術なども含めた「近未来像」のようなのですが。 一部その考え方を商品にしたCoDen(NTT Comの個人向けサービス)等が出てきていますし、フレッツ ドットネットの各種サービスも、画像ファイルをやり取りしたり、フルフレームのテレビ電話だったり、と「レゾナントな」ものを意識しているようです。非常に高価な本なので、自分で買って読む気にはなれませんが、時間があればもう一度読んでみたいです。 話を元に戻すと、こうしたNTTの戦略はほとんどが、光ファイバの普及(FTTH)を前提にしているわけですが、工事が治工具の発達で、どんどん素早くできるようになってきているにもかかわらず、今回のように法律面で制約を受けて工事ができない、というケースが、まだまだあるようですし、採算の取りづらい地方都市では、まだまだISDNが使われている(電話局が遠いので、ADSLを引くのが割高なため)と聞きます。 一ユーザーとしては、こういった、いわゆる「足元」の課題をどう解決してゆくのか、是非、戦略を聞いてみたいと思っています。
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アナログ回路をやっていて、仕事では全く縁のなかったマイクロ波帯。プリントパターンだけでコンデンサやコイルを構成したり、スミスチャートを使って整合の設計をしたりと、音声帯域から数10MHzまでの回路しかいじったことのない私にとって、そこは完全に未知の領域。 ある時、仕事でも将来的にマイクロ波帯の回路が必要になるのではないかということで、セミナーを受けさせてもらう機会がありました。 そこでは、初級と中級(ちなみにこのシリーズのセミナーは「上級」はない)の講義を受けたことがあります。初級は「高周波回路の第1のエッセンスはインピーダンスマッチングである」ということで、スミスチャートを使った実習でした。何とかついていけたものの、「はて、これでどうやって回路を設計するんだろう」という状態でした。ただ、今まであの丸いチャートの内部に引いてある不可思議な曲線の意味もさっぱり分からなかったので、それがわかるようになっただけでも収穫でした。いまどき、手でスミスチャートを書いて設計するような会社もないでしょうが、意味がわからなくて、デバイスのデータシートも読めませんでしたから。 次に受けた中級では、実際に発振回路や増幅回路などの設計方法を学ぶわけですが、低周波回路とは違い、デバイス自体に安定性判定が必要(高周波要デバイスのデータシートには、判定に必要なスミスチャートが(大概付いている)で、デバイスに合わせた発振しないマッチング回路の設計が必要であることなど、かなり面倒なプロセスであることが分かりました。 また、波長が短くなってくるので、回路の寸法精度が要求されるため、腕のいい工作屋さんや、プリント基板屋さんと仲良くなっておかないと、完全に自作は難しいと思いました。マイクロ波を趣味にされている方々は、どうされているんでしょう? 頼んで部品を製作するとなると、結構お金がかかりそうです。 以前からこのマイクロ波帯には興味がありましたが、仕事でやらなくなったので、自分で勉強するしかなくなってしまいました。今のところ、勉強も手を動かす方も何も進んでいませんが、最初から100%自作は無理なので、キットの製作と改造あたりから入ろうかな、と思っています。 ところで、このマイクロ波回路、実は光ファイバ通信とも密接な関係があるのをご存知でしょうか? 光ファイバの両端には、それぞれ信号送出にレーザダイオードが、受光側にはフォトダイオードがそれぞれ付いています。 変調周波数がGHzオーダーになってくると、それはもうまさにマイクロ波の世界で、送出側も受け側も、電気信号の部分はまさにマイクロ波回路です。波長多重のモジュールの内部などを見ていると、無線機かと思うほどです。周波数変換回路がないので、無線機よりは単純ですが。 携帯電話の基地局のパワーアンプモジュールも展示会で中を見たことがありますが、(周波数が高いほど効率が下がるので)放熱器のお化けのようで、外から見ると、まるでkWくらいをぶち込む違法CBのアンプを想像してしまいました。 ハムフェアで、導波管やサーキュレーター、ホーンアンテナなどのジャンクを見ると、思わず手にとって見てしまう、ここ数年の私です。
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□ 2-2 雷が地磁気の弦をはじく『音』を聞きたい |
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「社会評論」みたいな内容が続いて面白くないので、ちょっと趣向を変えます。ただ、資料が少なく知識もなく聞きかじりが多いので、間違いが多いと思いますが、恐れず書きます。 2004年の夏は雷が多かった…本当に多かった。会社では瞬停が何度も起き、今まで他人事だと思っていた雷害が、会社の同僚の家で「(ISDNの)TAが壊れた」と身近になってきたり。地球上では、1秒間に平均100発の雷が発生しているそうですが、この雷、光や音だけでなく、電磁波も発します。その波と地磁気が相互作用して、可聴周波数の「電波」を出すのだそうです。 そのメカニズムは、ごく少数のプラズマ物理の本などに「ホイッスラー(笛吹き)波」として電離層プラズマの頁に書いてありますが、私には理解できませんでした。記憶を元に要約すると、雷から発生した電波が地磁気(南極から北極に至る磁力線)を揺らし、それにつられて電離層プラズマが密度(だったか?)変調を受けるので、その振動が電波となって、地球(地面)と電離層の空間を導波管として伝播する、というものだったと思います。ここまで読むと、なんだか大変難しい研究を始めようという話のようですが、習うより慣れろ、が先で、こんな理屈は後からついてくれば(いや、理論などなくても)研究者でもない私には十分です。 「可聴」周波数だ、というのだから、アンテナで受信してそれを増幅して、直接スピーカーに繋げば音として聞こえるはずです。実は、歴史的には第2次世界大戦中に、潜水艦と超長波で交信していた通信兵が、五月雨のように「ヒューイ」「ヒューイ」という音がするのを聞いて、「敵の暗号通信ではないか」と思った、ということで、実際に音を聞いた人が存在するのです。 軍隊に入って超長波を傍受しないと聞けないか、と思うとそんなこともなくて、実はCDが出ています。シンセサイザー奏者の富田勲のCDで、今は廃盤になっているかもしれませんが、「Dawn Chorus」というタイトルです。このCDは、宇宙に存在するいろいろな「波」をサンプリングした波形をシンセサイザに波形テーブルとして記憶させ、音程に応じた周波数に変えて、クラシックの曲をアレンジして演奏しているものです。波源には変光星の光の強度や、X線パルサーのX線強度の変化など、周期的に変化している物のあらゆるものが使われています。 このCDの最初の曲で、この「ホイッスラー波」が原音のままフェードイン・フェードアウトしているのです。音を聞くと、まさに笛を吹くような「ヒューイ、ヒューイ」という音が、1秒間に何回も聞こえてくるのです。実はここで書いているこのネタは、このCDを聞いて面白いと思って調べ始めたものです。 さらにこのCDの解説書には、「磁気嵐が終わった後の、磁力線が安定している日の出や日没時によく出現する」とも書いてあります。
さて、ここまで来ると、自分の耳で聞いてみたくなってきました。またまた自作の虫がうずきます。回路はごく単純、のようですが、実際に聞こえる音を収録しようとすると、いろいろ壁がありそうです。 まずなんといってもノイズです。電界強度がどの程度あるものなのか、全く資料がありません。例えあったとしても、アンテナの設置状況により、理論どおり行くはずもありません。例えば、波長は1kHzの電波とすると、なんと300km。ここから岐阜くらいまで行けてしまいますが、アンテナは長くても数10mなので、アンテナ理論で言ういわゆる「微小アンテナ」の近似で、利得はアンテナ長に比例する領域です。しかし、波長のオーダーから行けば、素人が現実に張れるアンテナは、地面に「へばりついたような物」ですから、自由空間での理論は使えません。実際にアンテナ端に得られる電圧は相当低いでしょう。 音を聞いた感じでは、帯域はせいぜい0.1Hz−10kHzもあればいいと思いますが、都会ではスパークノイズ・商用電源の高調波(主にインバータノイズ)等があって苦しいと思います。ノイズフィルタとして増幅回路の前段にはLPFも必要ですね。磁気嵐の終了は太陽地球環境情報サービス(素人無線通信室のリンク参照)で得られますから、後は夜明け前に装備を持って、山の中に移動してアンテナを広げて…職質されたら確実にスパイと間違えられて連行されるな。 実際に自作できて受信できたら、公開したいとは思いますが、その前に聞こえるのか? 素人の装備で…
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仕事柄、A/Dコンバータ、D/Aコンバータの趨勢を、就職以来この10年ほど見てきていますが、半導体製造プロセスが微細化するとともに、動作電圧が低下し高速化も可能になりました。以前では信じられないような、高速のコンバータが出てきています。例えば、アナログデバイセズ社のAD6645というA/Dコンバータは、14bitの105Mspsです。また、D/AコンバータでもDAC5656(Texas Instruments)などは16bitの500Mspsという、とてつもない速さです。 こうなってくると、HFから50MHz程度までなら、アンテナから入ってきた電波を増幅して、直接A/Dコンバータに入れてやれば受信機が、マイクからの音声を増幅してA/D変換したデータとキャリア(sin波)のディジタルデータを乗算してD/A変換してやれば、パワーアンプをつけるだけで、送信機が、それぞれ構成できてしまいます。これを「ソフトウェア無線機」といって、研究されています。信号処理がソフトで制御できるため、AMとSSBを切り替えるのに、DBM(平衡変調器)と低電力変調器を電気的に切り替える必要はなく、ソフトウェアでディジタルデータをいじるだけの柔軟さです。 とそんな中、ICOMから受注生産\100万円(税抜)の、まさに「目ん玉飛び出る」リグが発売となりました。これだけのコストを掛ければ、さぞや、中身はバリバリのディジタル無線機なんだろうな、と思った次第です。ところが… ここでその宣伝をするわけではないのですが、カタログを眺めていて、あることでとても「うれしく」なってしまったので、ここに書いてみます。
このリグの「売り」は、は何といっても混変調に対する強さでしょう。コンテストをやっていて、ローカル局がハイパワーでガンガン呼び始めると、バンド中がガサガサ言って、使い物にならなくなった経験からすれば、第3次インターセプトポイント+40dBmというカタログ値は、信じがたい値です。 カタログの説明と基板の写真を見ていると、これがアナログ技術で実現されていることが「うれしい」とともに、驚きでした。 まず、基板の写真を見ると、最近ではあまり見られなくなったIFTやコイル、リレーといった「古典的な」デバイスが並んでいます。昔のリグには付いていた、プリセレや切替式のBPFなど非線形素子を除いたアナログ技術で、徹底的に目的以外の信号を取り去ってIFまで落としたら、後はディジタルにおまかせ、という思想で設計されているように感じました。RF段はアナログで、IF段以降がディジタル無線機というわけです。 これだけアナログ回路を贅沢に設計できるのも、\100万というコストあってのことだとは思います。が、通常の電機会社では、ディジタル無線機に象徴されるように、アナログ技術者の活躍の場がますます狭まる中、アナログ技術者たちが「アナログとディジタルは、こう最適化設計すべきだ」という理想のものを作り上げた、という感じがします。フラグシップモデルはそれにかかった開発コスト以上の宣伝効果を、会社にもたらすのではないか、と思います。
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□ 2-4 創意工夫と自己責任のお砂場、アキハバラ |
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今となっては、オタクの街と化してしまった秋葉原ですが、私が中学の頃の25年ほど前は、ガード下のラジオデパートを始め、レコード針からスピーカーユニット、セットもののオーディオから配線機材まで、電気に関係するもので手に入らないものはありませんでした。今でもそうですが、一頃に比べると扱っている品揃えが随分減りました。日本で物作りをしなくなったこととも関係あるのでしょうが、寂しい気もします。 今も昔もそうですが、アキハバラというのは一種独特の[怪しい]街でして、正規流通の製品に混じって、「ジャンク」と称する出所のわからない部品や半製品、完成品までが売られていました。秋葉原の起源自体が、戦後、米軍の軍用無線機の放出部品を並べていたところから始まっているわけで、当たり前といえば当たり前です。今でもジャンクはもちろん売られていますが、パソコン関連を除いては、ジャンクを扱う店自体が減ってしまいましたね。最近はあまりいないでしょうが、家電品を秋葉原に買いにきた一般の人(=事情を知らない人、という意味)には、粗大ゴミを売っているようにしか見えない…。
私の興味は無線でしたから、もっぱら買出しに行くとアルミパイプだのホルマル線だののアンテナ材料か、抵抗コンデンサ、半導体などの部品を仕入れてきました。最初は新品を扱う店ばかりを廻っていたのですが、いつしか中央通りの西側にある、国際ラジオ(今はラジオデパートに入ってしまった?)だの移転前の秋月電子(この世界で知らないとモグリだといわれる)だの、千石電商だのにハマるようになってしまいました。これらの店は、ジャンク屋といっても「新古品」と呼ばれる、おそらく倒産流れ品のような未使用のものも扱っていましたので、そのようなものは部品でも格安で放出されていました。 最もハマったのが秋月電子のキット類です。ここのキットは大手のものとは違い、安くて実用的なものが(今でも)多いですね。但し、「金を払ったんだから、ちゃんとしたものをよこせ」という方には作るのは無理です。部品の値違いや欠品はあるは、図面と違う型番の部品が入っていて、注意書きに「型番が違っているものが入っていることがありますが、互換品です。それが入っていた時にはここの部品をこの値に替えて、配線もこう変更して…」などと書いてあります。とにかくすんなり完成してくれません。ハンダ付けだけすればいいメジャーなメーカーのものとは全く別モノと思った方がいいでしょう。(秋月の名誉のために申し添えますが、今ではそれほどでもなくなりました。) そうすると、なぜか蛍光色のド派手な色でコピーされた回路図やデータシートが読み込めなければ作れないので、必然的に勉強するようになります。もちろん相手が英語だったりもします。これが断然面白い。イチから全部作るのはできないが、このレベルの工夫ならできる、という私にはピッタリでした。 最近になり、ネットオークションなどで「ジャンク扱いにつき、ノークレーム、ノーリターン」と書いてあるのに、返品でトラブルになった、とかいう話を耳にします。売る側に騙す意図がなければ、「自己責任」の意味がわかっていないのかな、とも思います。私などは、「ジャンク」と聞いた途端に血が騒ぐのですが、それは、「安そうだ」という意味ではなくて、「どうせマトモに動かないだろう。何とか動くようにしてやろう。ダメなら部品取り用だ」ということなワケです。だから、高価でリスクの高い「ジャンク」にはよほどのことがない限り手を出しません。
私にとって、リスクをウデ(技術)で回避するという「創意工夫」と、それでもダメなら諦めるという「自己責任」は、秋葉原で学んだような気がしています。
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□ 3-1 歴史は繰り返す? シリンダー式&ディスク式 |
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博物館にある、アンティークのディスクオルゴール。あるとき聞いていて、ふと思ったのですが、「円板に音楽情報を刻むって、CDと同じだよなぁ…」さらに、「円筒に音楽情報を刻むシリンダーオルゴールって、エジソンの蝋管蓄音機と同じだよなぁ…」 さらに、これらは盛衰の順番も同じです。まず、オルゴール。最初にシリンダー式が発明されると、シリンダーを交換しないと複数の曲を聞けない不便さがありました。交換式も発売されていたそうですが、メカニズムが複雑・精密で、交換が容易でなかったのと、シリンダーは手作業で作りますから高価で、普及しなかったそうです。 その後に開発されたディスクオルゴールは、円板に穴を開けて裏に突起を出す、という単純な構造のため、プレス機で大量生産が利いてコストが安く、かつ精密な交換機構も必要なかったため、広く普及したそうです。 一方のレコードですが、発明者は皆さんよくご存知のエジソン。当初の形は蝋管蓄音機というシリンダー型で、円柱状に切られた溝に波形情報が記録されていました。交換は容易だったでしょうが、値段はどうだったのでしょう? これがプレスで作れたかどうかは(浅学で)知りませんが、おそらくできたとしても、その形状から考えると、難しかったのではないでしょうか。 その後に発明された、「円板」レコードですが、こちらはプレスで製造できたため、これまたディスクオルゴールと同じ理由で普及しました。 こうやって「音を記録・再生するシステム」の歴史を振り返ると、現在のCDもそうですが、プレスで作れて大量生産が利き、そのためコストが安いメディアが、最後に市場を制していることがわかります。これは工業製品なら、どの世界でも同じですが… 時代が変わっても、「技術革新を促す市場原理」は不変なのでしょうね。ディスクオルゴールを聞きながら、そんなことを考えました。
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「珠玉の自鳴琴」の「録音の舞台裏編」でもちょっと書きましたが、うちは普通のマンションなので、防音装備も何もありません。共鳴箱で大きくなるとはいえ、オルゴールの繊細な音を、余すところなく録るにはとても適した環境とはいえません。それでも何もしないよりはマシ、ということで、いろいろやりました。 はじめは時間の選定です。車も電車も通らない夜中にやることにしました。ただ、録音が3時間程度で終わらなくてはならない理由が、「録音に向けて」で書いた理由(早く寝たい)の他にもあるのです。むしろこっちの理由が主かもしれません。 1時過ぎまでは電車や大型車両が通りそうなので、2時過ぎから始めることにしました。これなら1番電車が走り始める5時前に終われるでしょう。 ただ、近くに救急病院があり、3時間もあると救急車のサイレンが一度は入ってしまいそうです。こちらは、ただただ誰も急病にならないことを祈るのみです。 また、前日の昼間は、風がかなり吹いていました。上層階であるため、南側に付いている換気扇の排気口に当たる風の音が大きく、音がダクトを伝わって台所の換気扇から出てくるのです。これがまたヒューヒューと大きな音で、確実にマイクには拾われてしまいそうでした。仕方なく、録音が終わるまで、排気口にガムテープで目張りして風切り音を止めることにしました。この効果は絶大で、風切り音だけでなく、南側の太い道路を通る大型車の音もほとんどしなくなりました。 さらに、今度は家の中の「雑音源」を捜します。夜中も止まらないのは、時計と冷蔵庫。冷蔵庫は、昼間は音が目立ちませんが、深夜はやはり聞こえますし、コンプレッサーの振動が床を伝わってきます。バードケージ形のホルダなど高価なものは使っていませんから、床の振動はもろに拾います。 コチコチ時計は外して他の部屋に退避させてしまえばいいですが、冷蔵庫は止めるわけにも、どこかにどけるわけにも行きません。困った末に、テープが回っている間だけ、コンセントを抜き、セットアップしている間は再びコンセントを入れることにしました。夜中に冷蔵庫を開ける用事もないので、10分程度の停止が断続的に続いても、問題ありませんでした。 次は蛍光灯です。ノイズが嫌なので、テープが回っている間は消灯しました。ところが、こうすると、暗闇に心地よいオルゴールが流れることになり、レベルメータを監視する目が、いつしか睡魔に襲われて…。何とか耐えました。
考えてみると、1年の中で、録音に適した日はあまりないことがわかります。翌日会社の日はダメ、雨・風の強い日はダメ、田んぼに水が入った後は(カエルが大合唱するので)ダメ、秋は虫の声でダメ…。マジメにやろうと思ったら、スタジオ借りないとダメかな…そんなにしてまでやる気もしないし。 ま、必要になったら考えることにしよう。
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またまたエレキ回路の話になってしまうのですが…。 今回使ったマイクは、楽器の音などを収録するようなコンデンサマイクです。中身はどうなっているのか、と興味があったので、中を開けてみました。 ダイヤフラムの電極の片方は、有名なローノイズFETである2SK30A(東芝)のゲートに空中配線で直接入力されていました。この2SK30AというFETはかなり昔の設計で、最新品では2SK30ATMという多分互換可能なものが出ています。単三電池1本から高圧(40V?)を発生させる部分や、2SK30Aの後段がどうなっているかは、よく見えませんでした。 録音のページにも書きましたが、マイクの感度に対して、オルゴールの音はか細すぎるため、かなり増幅してやらないと、DATの録音レベルに達しません。しかし、マイクアンプでゲインを上げてやると、ノイズまで信号と同じ割合で増幅されてしまいます。受信機を設計された方はご存知かと思いますが、受信のS/Nをほぼ決める決めるのは、アンテナ直後のプリアンプです。ここでも話は同じで、S/Nを決めているのは、ダイヤフラムに直結しているこの2SK30Aなのです。 最近は、超低ノイズと称する、FETがいくつか出ていますので、買ってあります。これに交換してみたくてたまらないのですが、なにしろマイク(特にダイヤフラム)を破壊してしまうおそれがありますから、怖くてできません。いずれ、すべての録音が終わったら、やってみたいと思います。
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少し前、戸山家具に作っていただいた共鳴箱ができてきた頃、録音の準備をしている時でした。子供が興味深げに見ているので、「オルゴールをどこに載せたら一番音が大きくなると思う?」と聞いてみました。 すると、息子は自分のオルゴールを持ってきて、いろいろな所に載せてから自信たっぷりに、 「箱の中!」 と言うのです。 当然、天板の真中あたりという答えが返ってくるものとばかり思っていた私は、拍子抜けして、「ええー、ホントかよ」と言ってしまいました。息子は憮然として、「ホントだもん、ここに置くと一番大きい音がするもん。」と言います。 「どれどれ」ということで、息子のオルゴールを共鳴箱の中に入れて鳴らしてみました。このとき、正直言って「やられた!」と思いました。私のオルゴールは背が高くて、共鳴箱の中には入らないのですが、息子のは蓋を閉じれば何とか入るのです。今までいろいろ実験した中で、箱の中に入れて鳴らしてみたことがないのです。 やってみると、確かに息子の言う通り、天板の上に載せて鳴らすより、中に入れた方が大きな音がするのです。(但し、こもったような音になり、聞くに堪えませんでした。)「大きな音」という点では確かに息子の言う通りです。「共鳴箱は(オルゴールを)載せて聞くものだ」という固定観念に囚われている私には、とても発想できませんでした。実験機では、縦にしたり横にしたりといろいろやってみたことはありますが、いずれも「励振源」(発音体)は箱の外でした。
やはり子供は大人にない発想をするもんだなぁ、とつくづく思います。私の頭が固いだけかな?
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そもそも、写真をフィルムで撮ることが少なくなってきた昨今ですが、なぜ私はリバーサルフィルムにこだわっているんでしょう? こだわっている、というよりは、ハマっている、程度のものなのですが。 リバーサル写真はプロのもの、という意識が私にも当初はありました。日常のスナップ写真はネガフィルムを使っていましたし、当時はまだPCもフィルムスキャナ(以下、単にスキャナ)もなく、写真はプリントして見るだけでした。リバーサルも少し撮っただけで、投影してみるでもなく、取ってありました。 その頃は、ただなんとなく、ネガってラチチュードが広いのはいいけれど、イマイチ色の深みに欠けるなぁ…と感じていました。そんな頃、PCを買い、スキャナを買って、撮り貯めてあった写真をスキャンし始めました。 すると、今まであまり違いを意識しなかったネガとリバーサルの違いが、鮮明にスキャンデータとなって現れてきたのです。ダイナミックレンジや色再現が圧倒的にリバーサルに軍配が上がります。フイルムそのものを目で見てみれば分かるのは当たり前なのですが、リバーサルの力を実感したのは、恥ずかしながらその時が初めてでした。 子供が生まれたのを期に、普段のスナップ写真もリバーサルに変更し、あれやこれやと撮り始めたのですが、これがまたヘボ写真の連続でした。特に露出は、ネガならその広いラチチュードで何とかカバーできますが、リバーサルの場合はごまかしが利きません。 例えば、明るい風景を背に2人並んでいる人物を撮る時に、露出が並んでいる二人の間のハイライトな部分に合ってしまった時、リバーサルなら、まず人物の顔は暗くて使い物にならないでしょう。ネガなら、さほど明暗差がなければ、何とか(スキャン時の)機器の補正で、顔だけは何とかなるでしょう。 それだけに、リバーサル写真は上達が難しく、普段のスナップでも気を使います。子供の写真で、顔が黒くなってしまっては、「何これ、下手じゃん」と、妻から容赦ない批判が返ってきます。でも逆に、うまく撮れた時は、これほど被写体を色鮮やかに、シャープに残せる手段もないのではないかと「自画自賛」します。
ただ、いくつか写真を貼りましたが、詳しい方はお分かりになるかもしれませんが、フィルムスキャナはプロ用のものと、私が使っているような趣味用のものでは、シャドウ部(暗い部分)の階調が、全くといっていいほど出ません。ライトテーブルの上で目で見ると、明らかに物が写っているのに、スキャンするとほとんど真っ黒、という写真ばかりです。私はプロ用スキャナのCCDのヘッドアンプを設計していたことがありますが、こんな絵ではプロ用にはとてもなりません。A/Dコンバータのビット数が足りないとかトーンカーブがおかしいとか、そんなレベルでなく(それもあるにはありますが)、スキャナにとっては「見えてない」のです。プロ用でもリバーサルの濃度レンジで3.7から8もある、光量ダイナミックレンジをすべて拾い切れているか、というと疑問もあります。 多分、CCDの選定とアナログ回路の設計に起因するのでしょうが、その辺が真っ当なプロも使うスキャナだと、ブローニーまでスキャンできますが、\40万から\50万もするので、とても買えません。最近はプロも(一眼レフ)デジカメを使うようになって、フィルムスキャナを商品化しても需要がないようで、なかなか新製品も出ないし、値段も高いままです。 まぁ、ウデがないのを機械のせいにしている、というのが当たりかも知れませんが、プロが撮ったコントラストの強い写真でも、いい絵は出ないと思います。 忙しくなって、スキャン時間もバカになりません。1枚3、4分かかりますので、36枚撮り1本にゆうゆう2時間はかかります。北海道の写真は、家族と風景を合わせて全部で約400枚撮りましたが、スキャンにまるまる4日かかりました。 かといって、リバーサル写真の味も捨てがたく、貯金できたらデジカメにしようか悩む日々ですが、オメデタイことにすぐにデジタル一眼を買えるほどお小遣いはないので、しばらく悩むことになるでしょう。当面はスキャナと格闘です。
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2004年の夏に美瑛・富良野を廻ってきました。7月の終わりでしたので、有名なラベンダーはそろそろ終わりでした。代わりにヒマワリが咲き始めていましたが、今年は北海道も異常な暑さで、我々が行った時も、レンタカーのエアコンを最強にしないと、暑くてたまらないくらいでした。北海道の宿には、冷房のないところもあると聞きますが、今年はちょっとつらかったのではないでしょうか? いきなりですが、美瑛・富良野の夏の風景は、ラベンダーなどの花もいいのですが、なんといっても農業の風景です。農地がそのまま絵になります。もちろん本州でも、棚田など絵になる農業の風景はありますが、うねった丘を覆い尽くすようにジャガイモや麦、ヒマワリなどが植えられていると、見るものを圧倒します。 今回、写真にはありませんでしたが、そんな農地の中を等高線に関係なく、一直線に引かれた道路が何キロも延びる、そんな北海道でなければ見られない風景の宝庫です。 一方、ここは農家の「仕事場」であることを忘れてはいけません。我々が車で廻っている時も、本州ではまずない、幅5mもあろうかというトラクターが、道幅いっぱいに対向してきました。観光客はあまり通らない道路でしたので、迷惑千万だろうと、退避していましたが、運転していたおじさんの方が譲ってくれました。 畑には至る所に「個人所有の農地につき、立ち入り禁止」「撮影者の皆さんへ この先は農地です」などといった看板が、多く立っていました。「入るな!」といった、激しい表現のものもありました。ケンとメリーのポプラの根元には、「代々個人所有の木であり、近年、樹勢の衰えが激しいので、立ち入らないよう…」といった立て看板がありました。 風景をフィルムに焼き付けるために、他人の土地に入ったり、木を傷めたりしては、いずれその風景が壊れることになり、本末転倒ではないでしょうか? といいながら、レンタカーで排ガスを撒き散らしながら写真を撮り回っていた私も、無罪ではないのですが…。 見て廻る方は気楽なものですが、傾斜地での農業は苦労が多いそうです。単純に考えても、大雨が降れば、表面の土は流れてしまいます。農機は「傾斜地仕様」でもないと、不安定で危険極まりないですし急な丘は登れないのでは、と思います。でも、10年後といわず100年後も残っていてほしい風景です。 家に戻ってしばらくしたある日のこと、スーパーに並んでいた「北海道産 じゃがいも」をふと手にとって見ると、生産者の住所が「美瑛町留辺蘂共和」と書かれていました。「セブンスターの丘」から10分ほどのところです。なんだか妙に懐かしくなって、妻に買わせたのは言うまでもありません。
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今度は、写真は写真でも、子供の運動会や入学式、卒業式での親バカ写真の話です。 子供が幼稚園の時も、小学校に上がってからも、イベントがあるたびにカメラと望遠レンズ、ハンディカムを担ぎ出して、いわゆる親バカ写真を撮っています。操作の簡単さから、最初は妻がビデオで私がカメラだったのですが、写真の方は失敗が多い&スキャンに時間がかかって、なかなか見られないので、妻は自分で「ママ用一眼レフ」を買ってしまいました。 今度は、私がビデオの番になってしまったのですが、それもそろそろイヤになってきました。なにしろ、幼稚園でも小学校でも、自分の子供が出るときだけ、トラックの周りに巡らされたロープの外や講堂の後ろの「撮影専用席」に、ズラーーッとビデオとカメラの列が並ぶのです。当然、リレーなどではゴールの近くが場所争いになりますし、元々そのあたりに座っていた人は何も見られません。そんなこともあって、トラックの外周には、親は席を取ってはいけないことになっています。講堂の後ろの専用席も、入れ替え制です。 種目・演目が変われば、他の学年の親がなだれ込んできます。幼稚園ではその争いに入りたくない私は仕方なく、人垣から離れたところに脚立を立てて、200mmの望遠ズームで狙っていました。小学校では、三脚や脚立は暗黙のルールで禁止のようで、一層体力的に厳しくなりました。プログラムを見ながら、息子の種目が近づくと、その人垣にずっと立っていて、前の種目の親がどいたところにすかさず入ってゆく…これでは親の運動会ではないですか? ところで、そうまでして撮られている当人は嬉しいんでしょうか? 自分が一等になったシーンは、何回も見たがりますが、それも2・3日も過ぎれば、何も言わなくなります。親の自己満足ではないでしょうか? それでいいのかもしれませんが。他の学年の(息子の)友達や、近所の子供たちの名前も顔も、ほとんど分かりません。知りたくても、ファインダーの中には、自分の子しかいないのですから。 お前だけだ、と言われそうですが、私は小学校当時、体が小さくてヒョロヒョロしていたので、走ればいつもビリの方でした。踊るのも下手で、人が右を向くと左を向く(性格も)ような子供でした。今、私が息子だったら、「将来、そんな写真は残っていない方がいい」と言って、デジタルデータならすべて消去し、DVD-Rに焼かれた画像なら捨ててしまうでしょう。息子は私に似ず、走るのは遅くはないようですが。 別にこの(運動会や学芸会の写真がない)ことで、親を悪く思ったりすることもありませんし、他の子がうらやましいと思ったこともありません。 機器が高性能になって絵がよくなり、扱いやすく、買いやすくなりました。学校や幼稚園も「写真を撮るな」とは言いません。でも、他人を押しのけてまで撮った、山のような写真やビデオを、見る人がいるのでしょうか? 子供はどこまで「豊か」になるのでしょうか?
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