□ R06年12月期 A-02  Code:[HA0705] : 環状の磁芯に巻いたコイルのインダクタンスと巻数、断面積、透磁率等の関係
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03/31 R06/12月期問題頁掲載
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03/31 R05/08月期問題頁掲載
03/31 R05/04月期問題頁掲載
H3612A02 Counter
無線工学 > 1アマ > R06年12月期 > A-02
A-02 図に示す、半径r=4 [cm]の環状鉄心にコイルを250回巻き、このコイルに直流電流I=1 [A]を流したとき、鉄心内の磁束密度Bは5 [T]であった。このときの鉄心の比透磁率μrの値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、真空の透磁率μ0を4π×10-7 [H/m]とし、コイルによって作られる磁束は鉄心中を一様に通り、鉄心には漏れ磁束及び磁気飽和がないものとする。
1,000
2,000
2,500
4,000
5,000
問題図 H3612A02a
Fig.H3612A02a

 これまで、コイルに電流を流して磁界を作り、その磁界を磁性体で「束ね」た結果の磁束密度を求める問題は、出ていません。ただ、磁界と磁力線、磁束密度等の概念は知識としてある程度ある、という前提で、以下の説明をいたします。

[1]起磁力・磁気抵抗・磁束の関係

 以下、電流は直流で考えます。コイルに電流を流すとコイルの周りに磁界ができます。コイルを(空芯や樹脂ではなく)磁性体に巻くと、磁力線が集められ、磁束密度が上がります。
 ここでは、磁性体をトロイダルコアと考えて、これに巻いたコイルの巻数や流す電流、コアの形状、磁性体の透磁率等の関係を定量的に見て行きます。
 まず、Fig.HA0705_a左のようなトロイダルコアがあるとします。コアの断面は長方形で、内径がa [m],外径がb [m]、厚みがt [m]とします。これに、コイルをN回巻いて、電流をI [A]流すと、磁束φ [Wb]や磁束密度B [Wb/m](単位はテスラ [T]でも同じです)はいくらになるか、ということを考えます。
 磁力線の平均磁路長l [m]は、
 
で求められます。これは幾何学的な話なので、特に解説は不要と思います。コアの断面積S [m2]は、
 
これも特に説明は不要かと思います。厚みがt、幅がb-aの四角形(コアの断面)の面積です。磁束φ [Wb]は、
 
です。NIを「起磁力」(磁力線を発生させようとする「力」)、Rは「磁気抵抗」と呼びます。この名前から想像されるように、起磁力=起電力、磁気抵抗=抵抗、と考えると、(3)式はオームの法則で電流を求める式に該当します。
Fig.HA0705_a トロイダルコアの磁束計算
Fig.HA0705_a
トロイダルコアの磁束計算
 ここで、磁気抵抗R [AT/wb](ATは「アンペアターン」と読みますが、電流×コイルの巻数のことなので、単位は電流{A]と同じです)についても考えておきます。磁気の場合、物質の透磁率μ [A/m]が大きいほど、反比例して磁気抵抗Rが小さくなります。つまり、磁力線はその物質を「通りやすく」なります。また、電流と同様、磁力線が通る方向に垂直な断面積が大きいほど、反比例して磁気抵抗Rが小さくなります。抵抗と同じで、磁力線が通る長さlに比例して、磁気抵抗Rは大きくなります。このことをまとめれば、
 
となります。
 ここまでは、単純にコアの性質(透磁率)と形状、電流と巻数から、磁気抵抗や磁束を求める方法を述べました。

[2]磁束密度や透磁率はどうなるか

 次に、磁束密度B [Wb/m2]や透磁率μを求める式を導出しておきます。
 まず、磁束密度ですが、磁力線が通る物質の面積Sに一様に磁力線が分布するとすると、磁束密度は磁束φを断面積Sで割ればよいので、(1)式、(3)式、(4)式を使って、
 
と求められます。この式でちょっと不思議なのは、断面を通る磁力線の密度が磁束密度Bにもかかわらず、断面積Sが消えて不要になっていることです。透磁率μは(5)式をμについて解いて、
 
となります。ここで、μ0は真空中の透磁率(=4π×10-7 [H/m])です。もし、透磁率μではなく、比透磁率μrで問われたら、
 
で求めることができます。
 その他にも、問題として、磁束密度が分かっていて電流や巻き数を求める問題等が出ても、これらの式を変形すれば求められるでしょう。

それでは、解答に移ります。
 この問題が問うているのは、比透磁率μrです。(7)式から求められるので、N=250、I=1 [A]、r=4×10-2 [m]、B=5 [T]([Wb/m]でも同じ)、μ0=4π×10-7 [H/m]として、各数値を(7)式に代入すれば、
 μr=4,000
と求められます。従って、解答はと分かります。