□ R05年04月期 A-20  Code:[HH0515] : ターンスタイルアンテナの構造、整合、給電方法、利得、指向性等の特徴
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03/31 R05/04月期問題頁掲載
H3504A20 Counter
無線工学 > 1アマ > R05年04月期 > A-20
A-20 次の記述は、ターンスタイルアンテナについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、波長をλ [m]とする。
(1) このアンテナは、図1に示すように2つの半波長ダイポールa−a'及びb−b'が大地に平行で、かつ中心で直交する構造となっている。
(2) 図2に示す給電例において、送受信機から75 [Ω]の同軸ケーブルで給電するとき、インピーダンス整合のためのQ形変成器は、長さが[A]×波長短縮率の50 [Ω]の同軸ケーブルを使用し、90°の位相差を持たせるための整合器(位相ライン)は、長さが[B]×波長短縮率の75 [Ω]の同軸ケーブルを使用する。
(3) 水平面指向特性はほぼ全方向であり、水平面のアンテナ利得は半波長ダイポールアンテナの約[C]倍(真数)である。
(4) アマチュア局においては、反射器や導波器を設け衛星通信に使用されることがある。
問題図 H3504A20a
Fig.H3504A20a
問題図 H3504A20b
Fig.H3504A20b

λ/4 λ/2 2
λ/4 λ/4 1/2
λ/4 λ/2 1/2
λ/2 λ/4 1/2
λ/2 λ/2 2

 今回(R05年04月期)初出題の、ターンスタイルアンテナです。私は、プロ(放送)で使うアンテナだとばかり思っていましたが、問題文に「反射器や導波器を設け衛星通信に使用されることがある」とあり、不明を恥じています。

[1]ターンスタイルアンテナとは

 ターンスタイルアンテナは、1/2波長ダイポールアンテナ2本を給電点を中心にして直角に組み合わせ、90°(π/2)の位相差給電をするようにしたものです。2本のダイポールアンテナが作る平面に対して上下方向に円偏波が出ます。導波器と反射器を付ければ指向性が出ますので、アマチュアでは衛星通信用に使われます。
 プロ(特にFMやTV放送)の世界では、波長の違うターンスタイルアンテナを組みにして(広帯域化)、更に縦方向に多段スタック(高利得化)した、スーパーターンスタイルアンテナが多く使われています。

[2]ターンスタイルアンテナの構造

 上の文章だけでは、構造や動作が分かりにくいので、改めて図や数式で見て行きます。構造を図で表すと、Fig.HH0515_aのようになります。なお、この図では、2本の半波長ダイポールが作る平面が地面と平行であるとします。
 まず重要なのが、AA'のダイポールから見ると、BB'のダイポールは電気的に干渉を起こさないことです。相反定理から、逆も然りです。このことは、八木アンテナ等の線状アンテナに対して、金属ブームとエレメントを直角に「金具」で固定(導通)しても、アンテナの性能には殆ど影響がないことからも分かります。
 次に、単純に2本のダイポールアンテナを中心で直角に組み合わせただけではなく、同振幅で90°(π/2)の位相差給電を行うのがポイントです。ここでは、AA'エレメントに対して、BB'エレメントへの給電の位相を遅らせています。なお、この図には同軸ケーブルで給電する場合のバランは描いてありません。
Fig.HH0515_a ターンスタイルアンテナの構造
Fig.HH0515_a
ターンスタイルアンテナの構造
 位相差給電を行う比較的簡単な方法は、伝送線路(同軸ケーブル)で移相ライン(ディレイライン)を作ってやることです。ケーブル上の波長(真空中の波長λ×短縮率)が半波長になるように長さを計算して、ケーブルを切れば出来上がりで、Fig.HH0515_aでは移相器としてこの方法を使っています。
 また、1本の給電線で2本のダイポールに同時給電するので、無線機に繋がるケーブルには2分配器を入れる必要があります。さらに、単純に並列負荷として2分配するだけではインピーダンスが不整合になるので、インピーダンス整合も必要になります(このことは後で述べます)。

[3]ターンスタイルアンテナの指向性と利得

 それでは、このように半波長ダイポールを2本組合わせたら、指向性(水平面内)はどんな形になるのでしょうか。
Fig.HH0515_b ターンスタイルアンテナの指向性
Fig.HH0515_b
ターンスタイルアンテナの指向性
 半波長ダイポールの指向性は、Fig.HH0515_b左の(青、赤の)ような形ですから、これらを組み合わせれば、単純に同図右上のような「+形」(四葉のクローバー形)になる気がします。
 しかしながら、これらのダイポールの給電位相を90°ずらして同振幅で給電すると、同図右下のように、ほぼ無指向性の放射が得られます。なお、最大放射方向の電界強度を1とすると、最も弱いのは(Fig.HH0515_aでの)θ=π/4, 3π/4, 5π/4, 7π/4で、約0.89となります。20log100.89≒-1 [dB]ですから、完全な無指向性に非常に近いことが分かります。
 何故、同振幅で位相差が90°だと、指向性が円に近くなるのでしょうか? 少し数式が入りますが、理屈で考えてみましょう。
 まず、2本のダイポールを含む面内で、Fig.HH0515_aのようにθを定義すると、θ方向に十分離れた位置にダイポールAA'が作る電界(の大きさ)EAは、同一距離でこのダイポールが最大放射方向に生じる電界の強さをE0とすれば、
 
で表されます。次に、ダイポールBB'がφ方向に十分離れた位置に作る電界EBも同様に考えますが、Fig.HH0515_aで、
 
なので、(1)式の代わりに(2)式のφを代入すれば、
 
と表せます。これらEAとEBの合成電界をθの関数として求めれば良いわけですが、これらの電界は実際には双方ともベクトルで、しかも位相が90°異なっていますから、単純な加算では計算できません。天下り的に書いてしまうと、=EA+jEBなので、||は、
 
と表せます。
 この式で、E0=1としてθを0から2πまで変化させて極座標で図を描くと、Fig.HH0515_bの右下のようになるはずです。
 ターンスタイルアンテナ(及びこれを広帯域に進化させたスーパーターンスタイルアンテナ)が、放送分野で多く使われているのは、水平面の指向性が円に非常に近い(電波が飛びにくい地域が生じない)ためです。

[4]ターンスタイルアンテナの利得

 指向性が等方性に近いのはいいのですが、そのトレードオフとして、このアンテナは単体では利得があまり大きくありません。半波長ダイポールアンテナの最大放射方向の利得を1とすると、ターンスタイルアンテナ単体では相対利得が1/2(-3 [dB])となります。これは、単純に考えれば、同じアンテナに等分に電力を分配し、かつ、2本のアンテナは相互に結合していないため、です。例えば、ダイポールAA'の延長線上はダイポールBB'の最大放射方向で、BB'からのエネルギーが100 [%]、ダイポールAA'からのエネルギーはゼロです。
 この時、BB'からの放射は、送信機の電力の半分ですから、Fig.HH0515_bの右下の形において、径方向が"1"となっている角度では、半波長ダイポールイポール1本のみに給電した時の半分(電力での値。電界強度なら1/√2)であることが分かります。

[5]ターンスタイルアンテナの給電系

 上で書いたように、2本の半波長ダイポールを同時にかつ電力を等分に給電するため、2分配器が必要になります。
 しかし、半波長ダイポールのインピーダンスは約73 [Ω]なので、単純に並列に繋いでしまうと、36.5 [Ω]になってしまい、通常の50 [Ω]の同軸ケーブルで給電できません(Fig.HH0515_c左)。
 そこで、50 [Ω]の同軸とアンテナの給電系36.5 [Ω]の間に整合器を入れてやります(Fig.HH0515_c右)
 インピーダンス整合には様々な回路がありますが、アンテナ系は伝送線路(≒同軸ケーブル)に繋ぎますから、伝送線路自体に細工してインピーダンス変換機能を持たせることが多いです。
 アマチュアで言えば、Qマッチ(Q形変成器)です。QマッチについてはH1104A22をご参照下さい。
Fig.HH0515_c 2本のアンテナの給電系
Fig.HH0515_c
2本のアンテナの給電系
 なお、この手の回路は皆そうですが、波長の○分の一の長さ、と書かれている場合は、真空中の波長にケーブルの波長短縮率(速度係数)を掛けたものが基準になりますので、ご注意下さい。

[6]ターンスタイルアンテナまとめ

 ターンスタイルアンテナの「進化形」と述べた、スーパーターンスタイルアンテナも含めて、Fig.HH0515_dにその特徴等をまとめました。
Fig.HH0515_d ターンスタイルアンテナのまとめ
Fig.HH0515_d
ターンスタイルアンテナのまとめ
 このアンテナの帯域幅は、普通の半波長ダイポールと同様ですから、さほど広くありません。それでは広帯域を要するテレビ放送では困るので、この図の中ほどにある「スーパーターンスタイルアンテナ」が開発されています。
 大まかに言って、横から見て鼓形になっているのがダイポールアレーで、長さが異なるダイポールを縦に並べて広帯域にしています。上から見ると、鉄塔に90°クロスした部分をπ/2位相ずらしで給電します。
 1段だけでは垂直面内の指向性がダイポールと同程度で利得が小さいので、垂直方向に多段にスタックし、垂直面内の指向性を鋭くしています。
 2本のダイポール面と垂直方向には円偏波が出ますので、導波器や反射器として90°クロスした導体(放射器に平行)を八木アンテナのように前後に並べてやれば、円偏波を用いる衛星通信等に使用することができます。

それでは、解答に移ります。
 この問題は、ターンスタイルアンテナの問題ではありますが、Qマッチや移相器の問題も含まれており、どちらかと言うと伝送線路やインピーダンス整合の問題にも見えてきます。

…この部分のQマッチ(Q形変成器)は、送信機側の75 [Ω]とアンテナ側の36.5Ω(=73 [Ω]/2)を整合させるものです。QマッチのQは、そもそも1/4(qater)のことですから、λ/4です。なぜλ/4で整合器になるのか、は、H1104A22をご参照下さい

…90°の位相差に相当する同軸ケーブルの長さはλ/4×波長短縮率、となります。この式は、同軸の特性インピーダンスには依存しません。一波長(=1周期)で2π(360°)は記憶しておきましょう

…このアンテナの利得は、[4]で述べたように、半波長ダイポール比で1/2(電力比。電界強度比では1/√2)です

従って、解答はと分かります。