□ R04年12月期 A-24  Code:[HJ0607] : FM波の占有周波数帯幅をスペクトルアナライザを用いて測定する方法
インデックス
検索サイトから来た方は…
無線工学の基礎 トップ

以下をクリックすると、元のページが行き先に飛び、このウインドウは閉じます

 ■ 無線工学を学ぶ
 (1) 無線工学の基礎 
 年度別出題一覧
  H11年 4月期,8月期,12月期
  H12年 4月期,8月期,12月期
  H13年 4月期,8月期,12月期
  H14年 4月期,8月期,12月期
  H15年 4月期,8月期,12月期
  H16年 4月期,8月期,12月期
  H17年 4月期,8月期,12月期
  H18年 4月期,8月期,12月期
  H19年 4月期,8月期,12月期
  H20年 4月期,8月期,12月期
  H21年 4月期,8月期,12月期
  H22年 4月期,8月期,12月期
  H23年 4月期,8月期,12月期
  H24年 4月期,8月期,12月期
  H25年 4月期,8月期,12月期
  H26年 4月期,8月期,12月期
  H27年 4月期,8月期,12月期
  H28年 4月期,8月期,12月期
  H29年 4月期,8月期,12月期
  H30年 4月期,8月期,12月期
  R01年 4月期,8月期,12月期
  R02年 4月期,9月期,12月期
  R03年 4月期,9月期,12月期
  R04年 4月期,8月期,12月期
 分野別出題一覧
  A 電気物理, B 電気回路
  C 能動素子, D 電子回路
  E 送信機, F 受信機
  G 電源, H アンテナ&給電線
  I 電波伝搬, J 計測

 ■ サイトポリシー
 ■ サイトマップ[1ama]
 ■ リンクと資料

 ■ メールは下記まで



更新履歴
2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3412A24 Counter
無線工学 > 1アマ > R12年12月期 > A-24
A-24 次の記述は、図に示す構成例を用いたFM(F3E)送信機の占有周波数帯幅の測定法について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、同じ記号の[ ]内には、同じ字句が入るものとする。
(1) 疑似音声発生器からの規定の擬似音声信号を送信機に加え、所定の変調を行った周波数変調波を疑似負荷に出力する。スペクトルアナライザを所定の動作条件とし、規定の占有周波数帯幅[A]の帯域を掃引し、所定の数のサンプル点で測定した各電力値の和から全電力を求める。
(2) 測定する最低の周波数から高い周波数の方向に掃引して得たそれぞれの電力値を順次加算したとき、その電力が全電力の[B][%]になる周波数f1 [Hz]を求める。
(3) 次に、測定する最高の周波数から低い周波数の方向に掃引して得たそれぞれの電力値を順次加算したとき、その電力が全電力の[B][%]になる周波数f2 [Hz]を求めると、占有周波数帯幅は[C]{Hz]となる。

の2〜3.5倍程度 1.0 2−f1
の2〜3.5倍程度 0.5 2−f1
の2〜3.5倍程度 1.0 1+f2
と同程度 0.5 1+f2
と同程度 1.0 1+f2
問題図 H3412A24a
Fig.H3412A24a

 またまた出ました、という感じですが、この問題は1陸技でも同様の問題が出題されています。
 FM送信機の特性を、実際に測定してみたことがない私などは、この手の「実地的な」問題は面食らいますが、問題文の通りに手順を追って行くと、何を意図しているのかが分かってきます。特別に難しいことをやっているわけでもないことに気付けば良いですが、一部法規(施行規則)の知識も必要なので、そこは覚えておくしかありません。

INDEX

[1]周波数変調の占有周波数帯幅
  (1) 変調波が正弦波の場合の解析
  (2) 占有周波数帯幅の規格
[2]占有周波数帯幅測定の実際
  (1) 測定系と各々の働き
  (2) 電力スペクトルの測定と占有周波数帯幅の算出

  解答


[1]周波数変調の占有周波数帯幅

 FM送信器の占有周波数帯幅を測定したいのですが、どうすればいいでしょう?という問題です。振幅変調の場合は、搬送波周波数とその上下に対称に、信号波のスペクトルがそのまま現れるのとは異なり、周波数変調波の場合は、そう単純には行きません。そういう場合は、実測するしかありません。

(1) 変調波が正弦波の場合の解析

 周波数変調では、変調波が単一周波数の場合は数学的にスペクトルが求められます(1アマの範囲を超えるのでここでは触れません)。
 しかし、実際のFM送信機に加えられる変調波が単一正弦波ということはほとんどなく、放送であったり通信である場合は音声という複雑な波形です。また、これは変調波が単一周波数(の正弦波)でも音声でも同じことですが、周波数変調という変調方式は原理的に帯域が無限に広がるので、どこまでを「占有」しているとみなすか、の基準を決めて占有周波数帯幅を定義しなければなりません。
 そこで、ある「標準的な」実際の音声信号をシミュレートした擬似発振器を信号源と定めて、その信号で変調を掛けた場合に、実際に電力の分布がどうなっているかをスペアナ(スペクトラムアナライザ)を使って調べてしまおう、というのがこの方法です。

(2) 占有周波数帯幅の規格

 工学の問題ですが、原理上無限に広がる帯域をどこまでとするか、は法律で決めているため、FMの問題では必ずと言っていいほど法規上の数値が問題に出ます。それは、「送信機の占有周波数帯幅は、全輻射電力の99 [%]が含まれる帯域幅で表される」ということです。これは、施行規則でそう決まっているので、覚えるしかありません。
 ちなみに、条文(電波法施行規則第2条61項 但し書きを除く)をそのまま抜き出すと、

「占有周波数帯幅」とは、その上限の周波数をこえて輻射され、及びその下限の周波数未満において輻射される平均電力がそれぞれ与えられた発射によつて輻射される全平均電力の〇・五パーセントに等しい上限及び下限の周波数帯幅をいう。

となっています。つまり(平たく言えば)、全体の輻射電力を100 [%]とすると、上下の0.5 [%]ずつを除いた(つまり99 [%]の)電力が収まる帯域、というわけです。
 ならば、スペアナで、送信器の出力信号を分析し、全体の電力の0.5 [%]となる上端と下端の周波数を求めれば、それがそのまま、この定義通りの占有周波数帯幅になるじゃないか、ということです。

[2]占有周波数帯幅測定の実際

 ここからは、実際に上に書いた方法で、占有周波数帯幅を測定するのに必要な道具立てと手順について見て行きます。

(1) 測定系と各々の働き

 問題文中にも示されることが多いですが、Fig.HJ0607_aにこの測定系の概略構成を示します。
 「擬似音声発生器」は、特定のスペクトル(実際どのようなスペクトルなのかは、分かりませんでした)を持った信号波を発生するものです。
 ここから出る信号波のレベルを電子電圧計で調整・モニター(監視)し、試験対象であるFM送信機に入力します。高周波出力は擬似負荷(ダミーロード)または減衰器に食わせ、電力の一部をスペアナに取出します。
 スペアナは中心周波数や測定対象とする分解能帯域幅(RBW)を自由に設定できるので「中心周波数が可変な狭帯域の電力計」として使用します(ここがこの測定系のミソ)。
Fig.HJ0607_a FMの占有周波数帯幅の測定系
Fig.HJ0607_a
FMの占有周波数帯幅の測定系
 スペアナに接続した、コンピュータはスペアナの中心周波数を掃引する動作を制御するとともに、得られた電力値を読み込み電力を計算します。
 スペアナの周波数帯域幅は、狭い方が正確な測定が行なえますが、ある程度以上狭くしても、データの量が増えるだけで掃引にも計算にも時間が掛かる割に精度は上がらない、という点が出てくるはずです。従って、必要とされる精度と装置の能力(計測時間)のトレードオフで決めます。

(2) 電力スペクトルの測定と占有周波数帯幅の算出

 まず、十分に広い周波数帯域を掃引(スイープ)して、全電力を測定します。この時に問題になるのは、その「十分に広い周波数帯域」をどう考えるか、です。
 周波数変調の数値的解析では、変調指数がどんな大きさの時も、搬送波周波数から離れると、側波帯の電力は急激に小さくなります。従って、上下側とも0.5 [%]という有限値で切ってしまえるなら、ある程度の幅で十分、という結論になります。それが、問題文中にも示されていることが多い、「規定の占有周波数帯幅の2から3.5倍程度」という値です。
 この時、微小な周波数幅B [Hz]でf0 [Hz]からfn-1 [Hz]までn等分して電力値をサンプリングし、その各々の帯域に含まれる電力Pi [W](i=0,1,2,…n-2,n-1)が得られたとします。全電力PT [W]は次式で表されます。
Fig.HJ0607_b FMの占有周波数帯幅の測定
Fig.HJ0607_b
FMの占有周波数帯幅の測定
 (1)式
また、計測の下限f0 [Hz]から周波数を上げる方向にfj [Hz]まで加算した電力PL [W]を
 (2)式
とします。同様に、計測の上限fn-1 [Hz]から周波数を下げる方向にfk [Hz]まで加算した電力PU [W]を
 (3)式
とします。要するに、帯域の下側の部分的な電力をPL、上側の部分的な電力をPUとした、というだけです。
 あとは、PL、PUが各々、
 (4)式, (5)式
を満たす最小のjと最大のkを見つけるわけですが、ここはもちろん人力ではなく計算の得意なコンピュータにお任せです。
 ここで、PTを測定した時に、全chの電力データ(Pi)は取り込んでいますから、改めて下限や上限からスイープし直して電力を測定する必要は、必ずしもありません。(捨てていなければ)データはコンピュータのメモリの中にあるのです。
 さて、(4)式を満たす最大のjと(5)式を満たす最小のkから、fjとfkが求められました。後は、占有周波数帯域W [Hz]を
 (5)式
として計算するだけです。アルゴリズムとしても単純で、下限から積算した電力、上限から積算した電力がそれぞれ全体の0.5 [%]を超える周波数を見つけ、その差を求めるだけです。

それでは、解答に移ります。
音声のFM変調では、最大、占有周波数帯幅の3.5倍程度の幅を掃引すればよいとされています。
帯域外の電力は、帯域の上側と下側でそれぞれ0.5 [%]となる周波数で規定します(上下それぞれ0.5 [%]ずつで、合計1 [%]と勘定するので注意)。
帯域の上限と下限の周波数が各々、f2とf1ということなので、占有周波数帯幅は2−f1です。
となりますから、正解はと分かります。