□ R04年12月期 A-20  Code:[HJ0605] : スミスチャートとそれを用いたインピーダンス、VSWR、反射係数の読み方
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3412A20 Counter
無線工学 > 1アマ > R12年12月期 > A-20
A-20 アンテナの10 [MHz]におけるインピーダンスが、図のスミスチャートにおいてP点の位置であった。アンテナのリアクタンス成分を打ち消すためには、アンテナをどのように調整すればよいか。正しいものを下の番号から選べ。ただし、アンテナのR(抵抗)成分は50 [Ω]とし、座標の数値は正規化されているものとする。
2000/π [pF]のコンデンサをアンテナに直列に接続する。
2000/π [pF]のコンデンサをアンテナに並列に接続する。
1000/π [pF]のコンデンサをアンテナに直列に接続する。
1000/π [mH]のコイルをアンテナに直列に接続する。
1000/π [mH]のコイルをアンテナに並列に接続する。
問題図 H3412A20a
Fig.H3412A20a

 前回(R3年9月期)、初めてスミスチャートが出題された際、「スミスチャートに関して様々な出題が予想されます。計算問題も出されるかも知れません」と書きましたが、あっという間にスミスチャートを使ったインピーダンス整合の問題が出てしまいました。

[1]スミスチャートとは

 1アマレベルでは、複素数のインピーダンスも扱いますし、反射係数が複素数であるような問題(H1904A19)も出題されているように、複素数の扱いに慣れる必要があります。
 とはいえ、高周波を扱う現場では、R+jXのように「一つのパラメータなのに、中身に数値が2つ(RとX)ある」というのは、どうにも厄介です。そこで、インピーダンスや反射係数といった複素量を何とかビジュアルに扱えないか、と考え出されたのがスミスチャート、というわけです。
 なので、スミスチャート自体は、単なる複素数を表示するグラフの一つにすぎませんが、その利便性、直感的な分かりやすさから、今でも種々の高周波回路設計に用いられています。昔はこれを使って、マッチング回路の設計等を行っていましたが、今では回路シミュレータ等の便利なツールがあるので、人間が定規とソロバン(計算尺・電卓)を用いて手でスミスチャートを書くことは殆どなくなりました。主に、計測器(アンテナアナライザ、ネットワークアナライザ等)の測定結果の表示として用いられています。
 能書きはさておいて、まず、我々がR+jXなる複素数(例えばインピーダンスでR≧0、−∞<X<+∞)を扱いたい時、最も簡単なのは、Fig.HJ0605_a左のように、Rを横軸、Xを縦軸に取った二次元半平面(R<0がないから)で表すことです。
 しかし、この方法では、抵抗分の∞、リアクタンス分の±∞は表記することができません。両対数にすれば範囲は広がりますが、それでも無限大は表記できません(ただ、無限大が表記できないことは理由の一つで、大きなメリットが別にあります)。
Fig.HJ0605_a 複素平面の変形
Fig.HJ0605_a
複素平面の変形
 そこで、このグラフを大胆にも∞まで表示したとして、「等角写像」という方法を使って全ての∞を右端の一点に寄せ、丸く変形したのが、Fig.HJ0605_a右のグラフです。左右の図を見比べると、長方形のグラフと円形のグラフで違うものの、目盛り線が両方とも直交しているのが分かります。また、直交グラフの上半分(ピンク)や下半分(水色)は、それぞれ円形グラフの上半分、下半分に変換されます。
 なお、右はスミスチャートに似ていますが、まだこの段階ではスミスチャートとは呼びません。
 インピーダンスをスミスチャートにするには、このような変形の前に基準インピーダンス0を定める必要があります。高周波測定器では、一般に測定系のインピーダンスが50 [Ω]で統一されているので、0=50 [Ω]とします。Z0を定めたら、測定したいインピーダンスZ(=R+jX)をZ0で規格化(割ること)します。つまり、
 z=Z/Z0=(R+jX)/Z0 …(1)
とします。こうすると、スミスチャートにプロットされる数値は、「無単位」ということになります。Fig.HJ0605_a右のグラフを実数(Z0)で割るだけですので、軸のスケールは変わりますが、グラフの形や点の位置は変わりません。このことで、後に述べる反射係数やVSWRなど、インピーダンスと他の無単位のパラメータが同じ土俵で描けるようになるのです。

[2]スミスチャートの「各部の名称」と読み取り方

 スミスチャートが「複素数量を(規格化して)ビジュアルに表す手段」であることは分かりましたが、どういうグラフなのかをもう少し細かく見て行きます。
 なお、規格化インピーダンスzとして、
 z=r+jx …(2)
を定義します。rとxは実数で、それぞれr≧0、−∞<x<+∞です。規格化しているので、z、r、xには単位がないことに注意して下さい。
Fig.HJ0605_b スミスチャートの読み方
Fig.HJ0605_b
スミスチャートの読み方
 Fig.HJ0605_bに、目盛り線や領域の見方を示します。まず、大きな円の中心が、基準インピーダンス(+1+j0)です。Fig.HJ0605_aでも見たように円の上半分がx>0、下半分がx<0です。インピーダンスで言えば、リアクタンス分Xが正の領域は「誘導性リアクタンス」を示しますし、負の領域は「容量性リアクタンス」を示します。前者をインダクティブ、後者をキャパシティブ、と言ったりします。
 また、茶色の線は「定リアクタンス円」といい、xを一定値に保ちながらrを変化させると、規格化インピーダンスはこの円弧(円には見えませんが、実は円の一部です)の上を動きます。
 円弧は右の方に行くほど抵抗分が大きくなります。x=0の(リアクタンス分がない)場合は、中心を通って水平方向の直線上を動きます。
 同様に、rを一定値のままxを変化させると、「定抵抗円」上を動きます。|x|が大きくなるほど、この円上を右端(∞)に近付きます。
 グラフの見方が分かったところで、r=1、x=+2(つまりz=1+2j)がどこに来るか、を考えてみます。r=1.0ですから、定抵抗円のうちr=1.0の円の「どこか」にあるはずです。同様に、x=+2.0ですから、x=+2.0の定リアクタンス円の「どこか」にくるはずです。要するに、これらの円の交点にくる、ということで、Fig.HJ0605_bの右上当たりにある両円弧の交点(緑の点)になります。

[3]スミスチャートのメリットその1…反射係数とVSWR

 ここまでの内容だけだと、わざわざスミスチャートを使わなくても、直交座標の複素平面で表示すればいいだけの話では、と思います。しかし、スミスチャートでは、直交座標ではできない「直感的な読み方」ができるのです。以下の説明は、先に挙げた反射係数が複素数であるような問題(H1904A19)と密接に絡みますので、この問題も参照しながら進めます。
 もう一度Fig.HJ0605_bをよく見ると、スミスチャートは、中心にある基準インピーダンスz0に対して、あるインピーダンスzがどの位置(方位角と距離)にあるか、を示す図でもあります。
 さて、その方位角や距離が何かを考える前に、複素数で表される反射係数について、H1904A19の解説から(10)式を引っ張ってきて変形します。あるインピーダンスZ [Ω]の負荷を基準インピーダンスZ0 [Ω]の給電線の先端に付けた時、接続点での反射係数γは、以下の式で求められます。
 
これは、単に、H1904A19の(10)式から絶対値を外したものです。これの分母分子をZ0で割ってもγの値は変わらないはずですから、
 
となります。γが規格化されたインピーダンスzで表されることが分かります。
 ここから先は、話が少し天下り的になりますが、以下のように考えてみます。
 まず、負荷がZ0 [Ω]の時は、給電線の特性インピーダンスと完全に整合していますから、γ=0です。負荷がチャートの中心にあってz=1ですから、これを(4)式に代入すれば、すぐ分かります。
 一方、Z0=0(短絡)の時はγ=-1(チャートの左端)、Z0=∞(開放)の時はγ=+1(チャートの右端)となります。
 さらに、Z=Z0/2 [Ω]やZ=2Z0の時は、それぞれγ=-1/3、γ=+1/3、Z=Z0/5 [Ω]やZ=5Z0の時は、それぞれγ=-2/3、γ=+2/3、と計算できます。
Fig.HJ0605_c スミスチャートと反射係数
Fig.HJ0605_c
スミスチャートと反射係数
 反射係数γの絶対値|γ|は0から1の値を取りますが、実はFig.HJ0605_cのように、スミスチャート上、反射係数の絶対値が同じ値の点を結ぶと、z=1を中心とする同心円になります。
 この同心円の半径、つまり、基準インピーダンスからの距離がγの大きさ|γ|の値を、抵抗軸に沿ってz→∞を見た方向からの回転角がγの偏角θを表しています。偏角θはγの実数部と虚数部により、以下で表される角度です。
 
 さて、我々アマチュアには、アンテナ等の負荷との整合状態は反射係数よりもVSWRで読むのが一般的です。スミスチャートから反射係数が読めるなら、VSWRも読めるだろう、ということを考えます。
 反射係数(の絶対値)とVSWRの値ρは、H1904A19の解説の(7)式で表されます。
 
この式から、予想通りVSWRも|γ|のみの関数で、円の中心(γ=0)がVSWR=1、最外円(|γ|=1)がVSWR=∞となるので、その中間は、同心円(|γ|=一定)を描いてVSWRに換算した数値を振ってやれば、スミスチャートからVSWRが直読できることになります。VSWRは直感的で良いのですが、反射係数に含まれる偏角θの情報がなくなってしまうので、例えば、ダイポールアンテナのエレメント長を調整しながらマッチングを取る時に、VSWRだけではエレメントが長い(誘導性)のか、短い(容量性)のか、分からなくなってしまう、というデメリットがあります。

[4]スミスチャートのメリットその2…ケーブル接続

 スミスチャートの利点はまだあります。基準インピーダンスと等しい特性インピーダンスの給電線を負荷に接続した時、給電線込みでのインピーダンスがどうなるか、を簡単に求めることができます。負荷のインピーダンスが示す点を、給電線を延ばす方向によって(チャートの中心に関して)、ケーブル長で決まる角度だけ回転させるだけで済むのです。
 例えば、Fig.HJ0605_d左のように、基準インピーダンスと等しい特性インピーダンスZ0 [Ω]の長い無損失給電線を負荷ZL [Ω]に接続しているとします。この部品(負荷)は、引出しケーブル(特性インピーダンスZ0 [Ω])が直付けになっており、外せないとします。仕方がないので、給電線の途中、負荷からL=λ/8 [m]のA点にコネクタを付け、負荷を見込んで測定したインピーダンスがZA [Ω](規格化してzA)だったとします(ここでλは給電線上での波長)。
 ケーブルを除いた負荷そのもののインピーダンスZL [Ω]を求めたい場合、どうすればよいでしょうか?
Fig.HJ0605_d 給電線の接続
Fig.HJ0605_d
給電線の接続
 こんな時はスミスチャートの出番です。Fig.HJ0605_d右のスミスチャート上、A点が測定結果なので、これをz=1を中心にして反時計回りにπ/2 [rad]回転させたZLが、負荷に付いていて外れないケーブルを外したと仮定した、負荷そのものの(規格化)インピーダンスになります。
 逆に、A点に延長ケーブルを付けて、電源側にL=λ/4 [m]だけ遡った位置P点で負荷を見込んでインピーダンスZP [Ω]を測定すると、いくらになるか、も簡単に求められます。上の例とは逆に、スミスチャート上で、A点から時計回りにπ [rad]回転させれば、P点での(規格化)インピーダンスzPが求められます。
 このように、基準インピーダンスに等しい特性インピーダンスの給電線上のどこかで負荷を見込んで測定したインピーダンス、ケーブルの長さLとケーブル上での波長λが既知である時、
負荷側に近付く方向には反時計回りに回転
負荷から遠ざかる方向には時計回りに回転
回転量は4πL/λ [rad]
で新たな点から負荷を見たインピーダンスが求められます。Fig.HJ0605_dを見ると、A点ではインダクティブに見えた負荷が、実は単体ではキャパシティブだったり、給電線を延長するとまたキャパシティブになったり、と変化する様子が分かります。
 無損失の給電線をいくら繋いでも反射係数の大きさ(VSWRも)は変わりませんから、給電線を長くしても、スミスチャートの中でインピーダンスの点が|γ|=一定の円周上をグルグル回るだけです。
 なお、回転量は2πL/λ [rad]ではないのか、と思われるかもしれませんが、給電線上のある点から「負荷を見込んで」測る場合、「波」は測定点と負荷の間を往復しなければならないため、2倍になっています。

[5]スミスチャートのメリットその3…デバイスの周波数特性

 3つ目のスミスチャートの利点は、部品や回路等、デバイスのインピーダンスの周波数特性が視覚的に分かることです。
 今迄の説明は、暗黙のうちに「抵抗分rやリアクタンス分xが一定だ」ということを前提にしていました。しかし、これらが常に一定である理由はどこにもなく、特にxは容量性でも誘導性でも、その値は周波数によって大きく変わります。
 近年では、デバイスの評価に、さほど周波数が高くなくてもネットワークアナライザを使用することが多くなっています。それは、周波数スイープ可能な発振器を内部に持ち、反射係数(ネットワークアナライザではS11と表記します)が複素数のまま直接測定でき、しかもそれをスミスチャート上に表示してくれるためです。
Fig.HJ0605_e 反射係数の周波数特性
Fig.HJ0605_e
反射係数の周波数特性
 例えば、Fig.HJ0605_e左のように、ある部品の反射係数γを、周波数を振って測定する場合に、その特性が絶対値|γ|でしか求められないと、f2やf3では整合が取れそうだが、f1やf4の周波数では、整合が取れなさそうだ、ということは分かりますが、反射係数の偏角情報が失われているため、この部品にどういう整合回路を付加すれば必要な帯域で反射を抑えられるのか、ということがよく分かりません。
 同図右のように、スミスチャートでγの周波数特性を描けば、単に「基準インピーダンス(中心)に近いか遠いか」だけではなく、偏角の周波数特性も分かります
 特に、位相にシビアなフィルタ回路等では、γの実部と虚部が揃って偏角が出せないと、回路設計ができません。

[6]アドミタンスチャート

 ○○タンスがたくさん出てきて混乱しそうですが、アドミタンスはインピーダンスの逆数です。インピーダンスがZ=R+jX [Ω]で表されたように、アドミタンスYもY=G+jB [S](正規化した場合は小文字でy=g+jb)と表記します。GをコンダクタンスBをサセプタンスと呼びます。さらに、B<0の時は誘導性サセプタンスB>0の時は容量性サセプタンスと呼びます(正規化しても同様)。
 逆数である以外は、考え方は全く同じです。スミスチャートを使って、ある部品の反射係数を元にその点をプロットしたら、チャートだけをFig.HJ0605_fのアドミタンスチャートに換えて、目盛りを読めば、その部品のアドミタンスが得られます。要するに、ある値を上から見るか、下から見るか、の違いであって、インピーダンスなり反射係数なりの電気的性質が変わってしまうわけではありません。
 この図をよく見ると、アドミタンスチャートはスミスチャートを180°回転したものになっていることが分かります。
Fig.HJ0605_f アドミタンスチャート
Fig.HJ0605_f
アドミタンスチャート
 スミスチャートがあれば何でもできそうなのに、なぜこんな逆数のチャートまであるのか、というと、この後に述べるように、これらのチャートを使ってインピーダンスマッチング回路を設計する際、スミスチャートは、R、L、Cが直列になっている回路では便利な一方、並列になっている回路は扱いづらいためです。
 並列にはこのアドミタンスチャートを使って分かりやすくした、というわけです。

[7]スミスチャートのメリットその4…整合回路の設計

 最後に、上では「スミスチャートを使って整合回路の設計はあまりやらない」と書きましたが、「今ある回路のミスマッチ状態から、どんな部品をどう入れれば整合が取れるのか、を考える」手法は知っておくべきだ、と考えますので、ここで触れます。
 スミスチャートを使って整合回路を設計する、ということは、中心(基準インピーダンス)にない点を、どうにかして中心近くに移動させる、ということです。こう書くと、定規で直線を引いて持ってくればいいような感じで簡単ですが、実際にはそうは行きません。
 例えば、Fig.HJ0605_bのスミスチャートの右上にあるr+jx=1+j2の点を、中心r=1に持ってくるには、j2を打ち消す-j2を加えればいい(スミスチャート上で言えば、r=1の定抵抗円上をr=1,x=0まで左回転方向に滑らせてくる)わけですが、チャート上のj2+(-j2)という計算は、現実にはどういった回路にすれば良いのでしょうか?
Fig.HJ0605_g マッチングの方法とチャート
Fig.HJ0605_g
マッチングの方法とチャート
 まず、負荷に直列に回路要素を繋ぐ場合、スミスチャートで考えます。
 Fig.HJ0605_g上のように、直列にLを入れる場合は定抵抗円を時計回りに、直列にCを入れる場合は定抵抗円を反時計回りにそれぞれ移動します。抵抗を直列に入れる場合は、等リアクタンス円を∞方向に移動します。
 移動量の計算は、抵抗の場合は入れる抵抗値を基準インピーダンスで規格化した値で、コイルやコンデンサの場合は計算に周波数が必要で、各々リアクタンス(を基準インピーダンスで規格化)を計算して、移動量を決めます。
 次に、負荷に並列に回路要素を繋ぐ場合は、アドミタンスチャートで考えます。
 Fig.HJ0605_g下のように、並列にLを入れる場合は定コンダクタンス円を反時計回りに、並列にCを入れる場合は定コンダクタンス円を時計回りにそれぞれ移動します。抵抗を並列に入れる場合は、等サセプタンス円を(アドミタンスチャートの)∞方向に移動します。
 移動量の計算は、並列の場合と同様ですが、インピーダンスの場合と異なり、逆数なので注意して下さい。抵抗の場合は入れるコンダクタンス(1/抵抗)値を基準コンダクタンスで規格化した値で、コイルやコンデンサの場合は計算に周波数が必要で、各々リアクタンスの逆数を計算してサセプタンスとし、さらに規格化して、移動量を決めます。
 実際には、LやCひとつで中心まで持って来られるとは限らない(むしろそういうケースが殆ど)ので、複数のLとCを組合せてマッチングを取ります。抵抗は、直列でも並列でもエネルギーのロスを生じるので、特に理由がある場合(マッチングと減衰の両方を一度に行うなど)以外は使いません。また、対象回路(アンテナ等)のインピーダンスがあまりにも中心から離れていると、少数の部品では無理があるため、3個以上のLやCが必要になる場合もあります。

参考文献
 「高周波技術センスアップ101 - 数M〜数百MHzの高周波信号と上手につきあうために」(第6版)
 広畑 敦 CQ出版 2013 ISBN978-4-7898-3041-6 第4章 pp.93-120

それでは、解答に移ります。
 Fig.HJ0605_gから、問題図のP点(1+j0.5)にある正規化インピーダンスを中心(1+j0)に持ってくるには、正のリアクタンス(誘導性リアクタンス)を打消すため直列にコンデンサを入れればよいことが分かります。では、その値はいくらでしょうか。P点の正規化インピーダンスをj0.5だけ左回りに持ってくればいいのですから、Cに持たせるべき容量性リアクタンスは25(=50×0.5)[Ω]となります。
 この問題では、周波数f=10 [MHz]=1×107 [Hz](角周波数ω=2π×107 [rad/s])なので、
 25=1/(ωC)
 ∴ C=1/(25ω)=1/(25×2π×107)=2×10-9/π [F]=2000/π [pF]
となりますから、正解はと分かります。
 私自身もFig.HJ0605_gを正確に覚えていなくて、最近ハンディサイズのVNA(ベクトルネットワークアナライザ:nanoVNA-F)を買いましたが、アンテナを繋いでスミスチャートを表示させても、感覚的に何をどう繋げばいいのか、即座に分からないことがほとんどです。
 なお、今回は直列のCが出題されましたが、当然のバリエーションとして直列のL、並列のCやLも出題される可能性がありますので、Fig.HJ0605_gは頭に入れておくと心強いでしょう。