□ R04年12月期 A-04  Code:[HB0303] : 交流電源と抵抗とリアクタンスからなる回路網の計算
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更新履歴
2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3412A04 Counter
無線工学 > 1アマ > R12年12月期 > A-04
A-04 図に示す回路において、交流電源電圧の瞬時値vが100√2sinωt [V]、抵抗Rが20 [Ω]及びコンデンサCのリアクタンスが20 [Ω]であるとき、電源から流れる電流i [A]を表す式として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、角周波数をω [rad/s]、時間をt [s]とする。
問題図 H3412A04a
Fig.H3412A04a

 この問題が出題された時点(R4年12月期)までは、電源に直列な抵抗分とそれに並列に繋がる抵抗やリアクタンスの問題でしたが、今回はシンプルになっている半面、数学的な知識も要求されています。複素数の計算問題というより、三角関数の問題のようです。

[1]複素数計算にチャレンジしてみよう

 2アマまでは実数の世界で何とか解いていましたが、1アマになったら複素数(=実数+虚数 の形の数)計算にチャレンジしてみて下さい。というのも、こういった直列や並列の回路の合成インピーダンスを求める時、複素数でインピーダンスを計算すると、オームの法則だけで解けてしまうからです。2アマの時のようなベクトル計算や直角三角形の1辺の長さを求める公式も(全然無縁なわけではありませんが)使いません。
 ただ、少しだけ面倒なのは、分数で答えが出た時に分母が複素数になってしまった時、実数部と虚数部を明確に分けるため、「通分」のような「正規化」という作業が必要になることです。でも、慣れてしまえば大して難しくはありません。
 この問題では回路の要素(抵抗・コンデンサ・コイル)は3つですが、上に書いたことは、要素がいくつでも使えます。2個や4個になっても、合成抵抗の計算と同じようにやって行けば良いのです。流れる電流も、遅れ位相なのか、進み位相なのか、電流の虚数部を電圧と比較すればすぐに分かります。こんな便利な複素数を使わない手はありません。

[2]複素数を使って解いてみる

 では、具体的に見て行きましょう。回路の要素が直並列、並直列に3つ繋がるパターンはFig.HB0303_aの2種類です。
Fig.HB0303_a 3つのインピーダンスの接続
Fig.HB0303_a
3つのインピーダンスの接続
 3つとも直列、3つとも並列のパターンもありますが、これは別途問題があるので、そこで解いています。
 この図で、Z1〜Z3どれが抵抗・コンデンサ・コイルであるかの組合せは全く任意です。どんな組合せでも合成インピーダンスZは各図の下にある式で表されます。合成抵抗を計算する式と全く同じです。
 Z1〜Z3に、抵抗なら抵抗値R [Ω]を、コイルなら誘導性インピーダンスjXLを、コンデンサなら容量性インピーダンス−jXCを代入します。
 例えば、Fig.HB0301_aの左の回路で、Z1=−jXC、Z2=jXL、Z3=Rだとしましょう。この回路の左半分のインピーダンス、つまり、Z12/(Z1+Z2)を計算すると、
 Z12/(Z1+Z2)=XCL/j(XL−XC) …(1)
この式で、分母にjがあるのは気持ちが悪いので、これを分子に移し(分母と分子に−jを掛ける)、
 Z12/(Z1+Z2)=jXCL/(XC−XL) …(2)
となります。Z3=Rなので、全体のインピーダンスZ [Ω]は、
 Z=R+jXCL/(XC−XL) …(3)
 あとはこれに問題の数値を代入し、複素数の計算をガチャガチャとやるだけです。複素数の計算練習はここではやりませんので、慣れていない方は、同様の問題をいろいろ解いてみて下さい。

それでは、解答に移ります。
 まず、回路各部の値を定義します。抵抗R [Ω]に流れる電流をiR [A}、コンデンサに流れる電流をiC [A}、コンデンサのリアクタンスをXC [Ω]とします(電源の電圧や電流は問題図にある通りです)。iRとiCはそれぞれ、オームの法則から以下のように計算できます。
 iR=v/R …(a)
 iC=v/(jXC) …(b)
Cの計算は単にR/iCではなく、電圧vより電流iCの方が90°(π/2)進むので、(b)式のようになることに注意します。
 電源から流れ出る電流iは(a)と(b)の和ですから、
 i=iR+iC=v/R−jv/XC …(c)
(c)式に題意のvやR、XCをそれぞれ代入してやると、以下のようになります。
 i=5√2sin(ωt)+j5√2sin(ωt) …(d)
ここで、T=5√2 [A]と置くと、(d)式は下記のようになります。
 i=T{sin(ωt)+jsin(ωt)} …(e)
選択肢を見ると、どれも実数ですから、ここで要求されているのは複素数の電流iではなくて電流の大きさ|i|であると分かります。また、(e)式の{}の中は、オイラーの公式により以下のように変形できます。
 |sin(ωt)+jsin(ωt)|=√2sin(ωt+π/4) …(f)
これを使って電流の大きさ|i|を求めれば、
 |i|=I×√2sin(ωt+π/4)=10sin(ωt+π/4) …(g)
となりますから、正解はと分かります。