□ R04年12月期 A-03 Code:[HB0108] : Y−Δ変換、Δ−Y変換を使うと簡単になる回路網の計算 |
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無線工学 > 1アマ > R04年12月期 > A-03 |
A-03 |
図に示す回路において、端子ab間の合成抵抗の値として、正しいものを下の番号から選べ。
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1 |
(2/5)R [Ω] |
2 |
(4/5)R [Ω] |
3 |
(6/7)R [Ω] |
4 |
(8/7)R [Ω] |
5 |
(10/7)R [Ω] |
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Fig.H3412A03a
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この問題を「平衡しないブリッジ回路」として解いても解けなくはないですが、キルヒホッフを持ち出さなくてはならず、かなり厄介です。最初、私もそれで解こうとして悩みました。「全然簡単じゃない!」「もっときれいな解き方があるはず」。 回路の「ある部分」をよーく見てみると、「ある変換」を施せば簡単な問題に早変わり…ということに気付きます。
[1]回路の等価変換
電気回路網には、いろいろな形があって、これまでにも対称性に着目して回路を単純にして解く手法を学んできました。 同じような手法の中には、「等価変換」といって、その回路網に接続する端子から見て、その回路と全く同じに見える別の回路で表現するテクニックがあります。 つまり、回路網を「複数の端子の付いたブラックボックス」だとすると、例えば、どの端子間を取ってそのインピーダンス(や抵抗)を測っても、同じになる複数の回路が作れる、ということです。
[2]Y型回路からΔ型回路への変換(Y−Δ変換)
上の内容では、抽象的でよく分かりませんから、具体例で説明しましょう。
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例えば、Fig.HB0108_aの左にあるような、Y型に結線された任意の3つのインピーダンスZA,ZB,ZCがあります(ちなみに、これらは一般には全て複素数ですが、虚数=リアクタンス分のみでも実数=抵抗分のみでも構いません)。これを、右のようにΔ型に結線して、どの端子間で測っても、YとΔが同じインピーダンスになるようにするには、Z1,Z2,Z3をそれぞれいくらにすればいいでしょう、という問題になります。 つまり、Z1,Z2,Z3をZA,ZB,ZCで表せば良いわけです。一つの方法は、A−B間を短絡、B−C間を短絡、C−A間を短絡、という3条件でのYとΔそれぞれの6つ(3本×2組)の方程式を立てて解くものです。
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Fig.HB0108_a Y−Δ変換
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この計算は単純ながら数式が延々と続くことになるので、ここでは結果だけ示します。ご興味のある方は、回路網の教科書には必ず証明が出ていますから、見てみて下さい。 Z1,Z2,Z3をZA,ZB,ZCで表すと、
となります。 電力屋さんは、三相交流等の計算で、対称な回路(ZA=ZB=ZC=Z0)を扱うことが多いですが、この時は、暗算で、
Z1=Z2=Z3=3Z0
と求められます。
[3]Δ型回路からY型回路への変換(Δ−Y変換)
YからΔがあるなら、ΔからYもあるだろう、と考えるのは当然のことです。
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Fig.HB0108_b Δ−Y変換
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これも、Y−Δ変換の時と同様に、A−B間を短絡、B−C間を短絡、C−A間を短絡した時のΔとYそれぞれの方程式を立てて解く方法がありますが、延々と数式になるので、答えだけ書きます。また、これも電気回路の教科書には導出過程が出ていますので、興味のある方はご参照下さい。
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ZA,ZB,ZCをZ1,Z2,Z3で表すと、
となります。 これも、対称な回路(Z1=Z2=Z3=Z0)では簡単で、暗算で、
ZA=ZB=ZC=Z0/3
と求められます。
[4]解法例1
さて、今迄何のためにY−ΔやΔ−Y変換をやってきたのか、というと、面倒な回路の計算を楽にするためです。とは言っても、Fig.HB0108_aやFig.HB0108_bを見ても、変換後に抵抗の本数は減っておらず、面倒な計算が楽になるのか疑問ですし、せっかく式を覚えても、使えなければ意味がありません。 そこで、これらの変換を使うと、「見通しがパッと明るく」「計算も楽に」なる問題例を挙げます。(この例は、R03年9月の出題です。)
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Fig.HB0108_c左上のように、抵抗R1〜R5の5本の抵抗からなる回路網で、a−b間の合成抵抗値を求めよ、という問題です。ここまで解説を読まれた皆さんは、青枠の中がΔ結線になっていることにすぐお気づきになるでしょう。でも、それに気が付かないと、この5本の抵抗が「平衡していないブリッジ」に見えてきます。計算の遅い私などは、「平衡しないブリッジなんて時間内に解けないよ」と思って次の問題に行ってしまうかもしれません。 でも、試しに、青で描かれたΔ型の部分を、Y型(同図左下赤色)に変換してみると…何と、ブリッジだと思っていた回路が、Y型回路と残り抵抗2本の簡単な回路になってしまいました。
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Fig.HB0108_c 問題例1
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抵抗の本数は減っていませんが、明らかに回路は単純になっています。ここまで来れば後はFig.HB0108_c右下のように回路を変形して、
a−b間の合成抵抗=RA+(RB+R4とRC+R5の並列)
という合成抵抗の問題を解けばいいわけです。
[5]解法例2
別の解法例を挙げましょう。(この例は、R04年12月の出題です。)
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Fig.HB0108_d 問題例2
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Fig.HB0108_dの上の回路のように、R1〜R7からなる三角が3つ連なった回路があるとします。Δが3つ…なのですが、全部の三角形をYに変えてしまうと、余計厄介になります。変換の数を減らしたいなら、R7を含む三角形一つだけをYに変換したいところですが(やってみると分かりますが)、シンプルな回路にならないので、両側の三角形(Fig.HB0108_dの青の部分)をYに変換してみます。 すると、青の部分は同図下の赤の部分のようになります。真ん中の5本の抵抗からなるホームベース形の部分が厄介そうですが、よく見ると簡単です。この部分は、ノードx−y間で、
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・RBとR7とREが直列になったもの…Rpとする
と
・RCとRDが直列になったもの…Rqとする
が並列になっている、と考えられます。このab間の合成抵抗Rabは、次式で求められます。ここまで見通せればしめたものです。
後は上で求めた抵抗の変換公式に値を入れて計算するだけです。
それでは、解答に移ります。 この問題は、Fig.HB0108_dですから、R1〜R7にそれぞれ題意の値を代入すれば良いのですが、全部同じ値Rなので計算は簡単になります。(4),(5),(6)式から、RA=RB=RC=RD=RE=RF=R/3です。面倒なのでR/3=rと置いて(R7=3r)、(7)式に代入すれば、
Rab=r+{(r+3r+r)(r+r)/(r+3r+r+r+r)}+r
=2r+10r2/7r
=24r/7=8R/7
となりますから、正解は4と分かります。
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