□ R04年08月期 B-05  Code:[HF0709] : 受信機の2信号選択度の種類と測定方法
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3408B05 Counter
無線工学 > 1アマ > R04年08月期 > B-05
B-05 次の記述は、受信機の選択度の測定について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。なお、同じ記号の[ ]内には、同じ字句が入るものとする。
(1) 受信機の選択度は、測定に使用する[ア]の台数や測定の目的により、1信号選択度と2信号選択度に大別できる。
(2) 2信号選択度は[イ]とも言い、強い妨害波が存在[ウ]場合の選択度であり、その測定には2台の[ア]を信号源として用いる。代表的な2信号選択度には、感度抑圧効果、[エ]変調及び相互変調があり、これらは、希望波への影響を一定値以内にするために許容される[オ]のレベルを示すものである。
 妨害波  混  実効選択度  しない  パルス発生器
 熱雑音  過  周波数選択度  する 10 標準信号発生器(SG)

 正直に申しますと、この問題を目にするまで、受信機の選択度が2種類に分類され、それぞれに属する様々な選択度があることを知りませんでした。こでまでに解説した各々の選択度の問題を参照しながら、それぞれについて説明します。

[1]選択度の分類

 受信機の選択度は、大きく分けて、Fig.HF0709_aのように、入ってくる信号が信号が1つだけの時の、1信号選択度と、入ってくる信号が2つ以上の時の2信号選択度に分類されます。
Fig.HF0709_a 選択度の分類
Fig.HF0709_a
選択度の分類
 まず、1信号選択度に分類されるのは、近接周波数選択度、影像(イメージ)周波数選択度、スプリアスレスポンスです。各々の概略は、この後述べますが、大まかに言って「ある信号が一つあった時、その信号の要、不要によってどこまで分離できる(不要なら、受信出力として出さないようにできるか)か、という尺度だと言えます。
 一方、2信号選択度に分類されるのは、混変調特性、相互変調特性、感度抑圧特性です。これらは、帯域内外に強い妨害波があって、それらの影響をどこまで排除できるか、という尺度です。
 2信号選択度は、「実効選択度」とも呼ばれますが、なぜこのように呼ぶのかは分かりませんでした。この後、それぞれに属する選択度について、過去の出題を参照しながら説明します。

[2]近接周波数選択度

 近接周波数選択度についての詳細は、H1508B03等を参照していただきたいと思いますが、手っ取り早く(厳密ではないかも知れないが)分かりやすく書けば、受信帯域内とその上下の帯域外の周波数の信号を、どれだけ峻別できるかという性能になります。
 無線機のスペックに詳しい方なら、RFやIFフィルタ等のスカート特性、と言った方が分かりやすいかもしれません。帯域外にどれだけ強い信号があっても全く聞こえてこない、というのが理想の受信機ですが、実際にはそうはならないので、では、中心周波数からどれだけずれれば、どの程度に信号が弱まるのか、という指標になります。

[3]影像周波数選択度

 影像周波数による混信は、イメージ混信とも呼ばれます。影像周波数についての詳細は、H1212B03等を参照していただきたいと思います。
 ヘテロダイン方式の受信機では、中間周波数に変換する前の段階で、希望波と影像周波数関係にある不要な電波が混じっていると、不要波が帯域内に入ってきてしまうので、周波数変換した後では取り除けません
 影像周波数選択度は、不要な影像周波数の信号をどれだけ取り除けるか、の指標です。通常は、希望波と不要波は周波数が離れているため、高周波増幅の段階で、同調回路のQを高くするなどして、周波数変換の手前で影像周波数を十分減衰させます。

[4]スプリアスレスポンス

 スプリアスレスポンスは過去に出題がないようなので、概要をご説明します。
 まず、スプリアスレスポンスのスプリアスというのは、局部発振器(Local Oscillator)の高調波や低調波、受信波の高調波等を指します。局部発振器や周波数変換器は、現実の電子回路であり、完全な線形動作(=ひずみがゼロ)をするわけではありません。発振波形が歪めば高調波が出ますし、周波数逓倍を行なっている発振器なら低調波も出ます。また、受信信号の増幅の過程でもひずみは避けられないので、希望波にも高調波成分が発生します。
 例えば、受信したい電波(希望波)の周波数をfr [Hz]、局部発振周波数をfLO [Hz]、中間周波数をfIF [Hz]とします。受信機が理想的に動作している状態で、ダウンコンバートの場合は、
 
が成立っているはずです。しかし、例えば、局部発振器の発振波形が歪んでいて、高調波を含む場合、nを2以上の自然数として、
 
を満たすような、希望波と全然関係ない周波数fxも、同じ中間周波数に変換されてきてしまいます。また、局部発振器が低い周波数から逓倍するタイプであったとすると、低調波を含みますので、
 
を満たすfyも上と同様に中間周波数に変換されてきてしまいます。さらに、受信信号増幅にもひずみは避けられないので、ある周波数fz [Hz]のm次の高調波が、
 
を満たしてしまうと、これも中間周波数に変換されてしまいます。
 つまり、スプリアスレスポンスとは、ヘテロダイン方式の受信機の各部で生じる高調波や低調波の間に、差周波が中間周波数に等しくなる関係が満たされて現れる妨害、またはその程度の指標ということができます。

[5]混変調特性

 混変調そのものについての詳細は、H2012B03等を参照していただきたいと思います。
 これも、ざっくり言ってしまうと、混変調とは、強力な信号が高周波増幅器の帯域内にあって、振幅変調等で強度が時間的に変動している場合、希望波がその妨害波で強度変調を受けてしまう現象、と言えます。
 なので、混変調特性の評価は、その強力な信号の変動に対して、どの強さまでなら希望波が影響を受けないか、という見方で行います。

[6]相互変調特性

 相互変調そのものについての詳細は、H1308A15等を参照していただきたいと思います。
 相互変調とは、強力な2つの信号があって、それらの周波数の差が、受信周波数や中間周波数に合致した場合に、混信となる現象です。2つの周波数をそれぞれf1 [Hz]、f2 [Hz]とすると、これらの奇数次の変調積(例えば3次の|2f1−f2|、|f1−2f2|、5次の|3f1−2f2|、|2f1−3f2|…等)が問題になります。
 この特性の評価も、2信号がどの強さまでなら、上に述べた変調積による妨害が一定値を超えないか、という形で行います。

[7]感度抑圧特性

 感度抑圧特性そのものについての詳細は、H3404A14を参照していただきたいと思います。
 感度抑圧とは、受信信号に近い周波数に、強力な信号があってそれによって受信機の感度が低下してしまうこと、又はその程度をいいます。この特性も、妨害波がどの強さまでになれば、規定した感度低下が生じるか、で評価します。
 改善策は、これら混変調や相互変調等と同じで、周波数変換までのステージに帯域外の入力を減衰させるQの大きなフィルタを入れるとか、増幅器の利得は最小限に抑える、等です。

[8]受信機の選択度評価に使う測定器

 受信機の選択度評価を行う際に、上に述べてきたように、1信号のみがあれば良い項目と2信号が必要な項目があります。1信号で良い項目は、受信機に入力する信号が1つで良いので、標準信号発生器(SG)も1台で済みます。
 2信号選択度の場合には、周波数の異なる2台のSG(又は1台で2chの出力が得られるもの)が必要になります。

それでは、解答に移ります。
1信号選択度と2信号選択度では、測定に用いる10標準信号発生器(SG)の台数が違います
2信号選択度は、3実効選択度ともいいます
2信号選択度は、強い信号が存在9する下での受信機の特性です
2信号選択度の代表的な3つは、感度抑圧、2混変調、及び相互変調です
2信号選択度のそれぞれの指標は、許容される1妨害波のレベル(強さ)で規定します

となります。