□ R04年08月期 A-20  Code:[HH0201] : Qマッチセクション(Q形変成器)の動作原理とインピーダンス計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3408A20 Counter
無線工学 > 1アマ > R04年08月期 > A-20
A-20 次の記述は、同軸ケーブルによるQ形変成器と、これを使用したスタックアンテナへの給電及び整合の原理について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の組合せを下の番号から選べ。ただし、アンテナは50 [Ω]に整合されているものとし、分配点においては送信機からの同軸ケーブルとQ形変成器の内部導体同士及び外部導体同士がそれぞれ接続されているものとする。なお、同じ記号の[ ]内には同じ字句が入るものとする。
 図1に示す原理図において、Q形変成器(75 [Ω]同軸ケーブル)の長さlを同軸線路上の波長の[A]とし、出力側のインピーダンス(純抵抗とする)が50 [Ω]であるなら、入力側から見たインピーダンスは約[B][Ω]となる。
 従って、図2に示す二つのQ形変成器を使用したスタックアンテナの給電の原理図において、分配点における合成インピーダンスは約[C][Ω]となり、送信機から分配点まで任意長の同軸ケーブルにより給電することができる。
 また、長さlは同軸線路上の波長の[A]の[D]にすることができる。
問題図(横長) H3408A20a
Fig.H3408A20a


1/2 100.0 50.0 偶数倍
1/2 112.5 56.3 偶数倍
1/4 112.5 56.3 偶数倍
1/4 112.5 56.3 奇数倍
1/4 100.0 50.0 奇数倍

 Qマッチセクションの問題は、これまで殆ど出題されていない上に、今回はひとひねりが必要です。まずは過去に出たQマッチセクションの説明と同じ説明をしたのち、今回の問題特有の「ひねり」は解答部分で書くことにします。

[1]インピーダンスマッチングの本質とは?

 我々が運用する時は、送信機が「電源」で、アンテナが「負荷」で、その間を伝送線路(=ケーブル)で繋ぎます。
 定電圧電源を負荷に繋ぐ場合と違い、高周波回路では「インピーダンスマッチング」を取らなければならない、というのはご存知かと思います。送信機、ケーブル、アンテナにはそれぞれ送信周波数におけるインピーダンスがあり、これが整合していないと、送信機から出たエネルギーが100%アンテナから放射されません
 この問題で取り上げているのは、ある特性インピーダンスを持った、λ/4の長さの伝送線路を用いることで、送信機とアンテナを整合させることができる、という技術です。

[2]インピーダンスZ0 [Ω]のケーブルにR [Ω]の負荷を繋いだら…

 では、この問題を解く前に、特性インピーダンスがZ0 [Ω]で、長さがλ/4 [m]の伝送線路の先に、R [Ω]の負荷が繋がっている場合、「送信機から見て」何Ωに見えるのか?を考えてみましょう。
Fig.HH0201_a 送信機から見た伝送線路と負荷
Fig.HH0201_a
送信機から見た伝送線路と負荷
 送信機から負荷を見たインピーダンスと、送信機の出力インピーダンスが等しければ「整合が取れている」ということになります。
 「ミソ」は、「送信機から見て」というところです。送信機に繋がっているのはZ0の特性インピーダンスのケーブルで、必ずしも送信機の出力インピーダンスとは同じにならないのですが、λ/4先にある負荷Rを含めて考えると、送信機にはあたかも自分と同じインピーダンスの負荷が接続されて見えるように、Z0やRを組合せで選ぶことができる、というわけです。
 一般に、伝送線路の長さをx [m]として、送信機から見たこの系のインピーダンスをZiとすると、
 Zi=Z0(Rcosβx+jZ0sinβx)/(Z0cosβx+jRsinβx) …(1)
となります。(この式は、「伝送線路方程式」というものを解いて得られますが、その導出は1アマレベルでは不要ですのでここではやりません。)

[3]長さが四分の一波長なら事情は簡単に

 βは定数で、β=2π/λです。(1)は虚数が出てきて面倒そうな式ですが、x=λ/4だとすると、途端に簡単になります。というのは、x=λ/4なら、βx=π/2となり、sinやcosが1や0という簡単な数になるからです。つまり、cosのかかっている項はゼロなので消えてしまい、sinの項のみが残ります。さらに、分母と分子にはjのかかった項だけになるので、jは消えてしまいます。
 では、(1)式にβx=π/2を代入して簡単にすると、
 Zi=Z0(Z0/R)
   =Z02/R …(2)
普通、送信機やアンテナのインピーダンスは決まっていて、「Qマッチセクションのインピーダンスをいくらにするか」という手順で設計します。そこで、(2)をZ0について解けば、
 0=√(ZiR) …(3)
つまり、0は送信機の出力インピーダンスとアンテナのインピーダンスの相乗平均にすれば整合が取れる、ということになります。
 例によって、このページでは「何故そうなるか」を追求したいので、虚数の出てくる(1)のような式をいじくり回して(3)式を導きましたが、試験に合格するだけなら(3)だけを暗記しておけばよいでしょう。

 さて、ここで余談です。
 送信機から見たインピーダンスZiは計算できたのですが、アンテナ側から見たらどうでしょうか? この場合も全く同様にして、電源側にZiというインピーダンスが繋がっている場合の、負荷から見たインピーダンス、すなわち(2)式をRについて解けばよいのです。
 この系が「整合が取れている(マッチングしている)」ということは、送信機側から見ると送信機の出力インピーダンスと同じインピーダンスが、アンテナ側から見るとアンテナと同じインピーダンスが、それぞれ繋がって見える、ということなのです。
 また、波長は速度係数をかけたものでなければならないことに注意します。つまり、波長は真空中の波長ではなく、ケーブル上の波長です。

それでは、解答に移ります。
 この問題では、送信機から分岐点を見ると、2本のQマッチが並列になっています。つまり、分岐点でインピーダンスが100 [Ω]のQマッチセクションが2本並列になっていれば、送信機からは50 [Ω]に見えるはずです。
 一本のQマッチセクションに着目すれば、75 [Ω]の同軸ケーブルを使った時、問題の図1の入力側が、何Ωになるか、を考えれば良いわけです。ここが100 [Ω]に近ければ整合が取れている、というわけです。
Qマッチセクションの整合部分の最短の長さは(その伝送線路上での波長の)1/4とします
(2)式において、Z0=75 [Ω]、R=50 [Ω]としてZi [Ω]を求めると、
 Zi=752/50=112.5 [Ω]
となります
送信機から分岐点を見ると、ここで上で求めた112.5 [Ω]が2本並列になっているので、
 112.5/2≒56.3 [Ω]
となります。つまり、送信機から見るとVSWR=1.1をちょっと超える程度にはなりますが、十分整合は取れている状態になります
Qマッチセクションの長さは、線路上の波長をλとして、(1)式のβxがπ/2の奇数倍になるxならば良いわけで、λ/4の奇数倍ということになります

となりますから、正解はと分かります。