□ H31年04月期 A-11  Code:[HE0406] : SSB送信機のブロック図と、各々のブロックの働き
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12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3104A11 Counter
無線工学 > 1アマ > H31年04月期 > A-11
A-11 次の記述は、図に示すSSB(J3E)送信機の原理的構成例の各部の動作について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
問題図(横長) H3104A11a
Fig.H3104A11a
平衡変調器は、音声信号と第1局部発振器出力から搬送波を抑圧したDSB信号を作る。
第1帯域フィルタは、平衡変調器で作られた上側波帯及び下側波帯のいずれか一方を通過させる。
周波数混合器で第2局部発振器出力と中間周波増幅器出力とが混合され、第2帯域フィルタを通して所要の送信周波数のSSB信号が作られる。
SSB信号をひずみなく増幅するため、電力増幅器には電力効率のよいC級増幅器を用いる。
ALC回路は、音声入力レベルが高いときにひずみが発生しないよう、中間周波増幅器の利得を制御する。

 これまで、SSB送信機の構成の問題では、ALCのフィードバックは励振増幅器に掛かっていました。今回は、中間周波増幅器に掛かっています。問題を解くのには関係ありませんでしたが。

[1]SSB送信機の構成と各部の働き

 Fig.HE0406_aにSSB送信機の原理的構成を示します。この図を元に、各部の働きを見て行きます。
(1) 音声増幅器(低周波増幅器)
 マイクの出力は微小なので、この後で行なわれる変調に使える大きなレベルに増幅します。トランジスタの時代はB級かAB級でしたが、最近はオペアンプを使うことが多いでしょう。音声信号の周波数をfsとします。
(2) 第1局部発振器(以下、第1局発)
 ローカルオシレータとも呼ばれます。平衡変調する際の搬送波周波数(中間周波数)にあたる周波数を発振しています。ここでの発振周波数をfcとします。
(3) 平衡変調器
 音声信号と第1局発からの搬送波を入力すると、搬送波は抑圧され、搬送波上側波帯(USB;fc+fs)と下側波帯(LSB;fc−fs)が得られます。変調方式によっては音声信号も出力されることがありますが、出力部に高周波のみ通す構成(高周波トランス・容量結合)を取ることによって、これらの2成分のみが得られます。
(4) 第1帯域フィルタ
 USBとLSBが得られましたが、必要なのはこのどちらかです。必要な側波帯のみを取り出すために、このフィルタを置きます。USBとLSBは近接した周波数ですから、これを区別するためにはスカート特性が急峻なフィルタが必要で、信号処理がアナログのリグでは普通クリスタルフィルタを使います。
(5) 第2局部発振器(以下、第2局発)
 第1帯域フィルタの出力周波数(fc±fsのどちらか)と、送信周波数fTまでの差の周波数fLを発振します。
Fig.HE0406_a SSB送信機の構成と上・下側波帯の周波数構成
Fig.HE0406_a SSB送信機の構成と上・下側波帯の周波数構成
(6) 周波数混合器
 平衡変調器と似た働きをします(回路は同じリング回路だったりする)。第1帯域フィルタの出力(中間周波数)と第2局発との周波数的な和(上側波帯)、または差(下側波帯)を出力します。出力には和と差の両方が出てきます。これを後段の第2帯域フィルタでどちらかを選択します。
(7) 第2帯域フィルタ
 周波数混合器の出力から、上側波帯または下側波帯のどちらかを選択します。ここで、最終的にアンテナから出てゆく電波がUSBなのかLSBなのかが決まります。
 例えば、第1帯域フィルタの出力が456 [kHz]の上側波帯だとして、送信周波数が7,050 [kHz]のLSBだとすると、第2局発の発振周波数は、7,506 [kHz]か6,594 [kHz]のどちらかです。7 [MHz]帯ではLSBを使いますから、第1帯域フィルタの出力が上側波帯なら、第2帯域フィルタの出力は下側波帯でなければLSBにならないので、送信周波数より第2局発の方が高くなるような関係でなければなりません。このあたりのことは、下で改めて検討します。
(8) 励振増幅器
 周波数混合器の出力は、通常そのまま(逓倍や混合などの変換なしに)の周波数で増幅します。最終段は電力増幅ですが、高周波になればなるほど、一気に大きなゲインを稼げないことが多いので、何段かに分けて増幅します。
 特に、最終段(俗に「ファイナル段」と言います)の手前のアンプを励振増幅器と言います。SSB送信機の場合は、特にここに送信出力が過大にならないためのALC回路の制御電圧を加え、レベルが上がりすぎる時はここの利得を下げてオーバードライブにならないように調整します。
(9) 電力増幅器
 アンテナから出力する数 [W]〜[kW]の大きな電力に増幅します。SSBでは、増幅器の出力をひずませてはいけないので、電力増幅にはB級又はAB級を用います。従って、電力効率はあまり良くない、といえますが、そもそもSSBはAMと違い、変調がかかっていない時は電波が出ませんので、多少効率を犠牲にしても、ひずみが少ない方がいい、というポリシーもあり得ます。
 ちなみに、SSBでは変調段以降ではすべてB級又はAB級の増幅器を採用します。C級は使いません。簡単に言うと、SSB信号にひずみを加えることは、すなわち余分な周波数成分を加えることになるためです。(このあたりの詳しいことは、別問題で解説しています。)
(10) ALC回路
 ALC回路は、電力増幅器の出力(高周波電力)を検知して、レベルが高すぎる場合にのみ励振段のゲインを下げる制御電圧を発生させます。一種の負帰還回路ですが、帰還利得や時定数によっては出力にひずみが生じたりしますので、設計は難しいようです。

[2]USBorLSBどちらが出るか?

 まず、平衡変調器の出力ですが、fc±sとなります。これを第1帯域フィルタで上下側波帯のどちらかを選択します。つまり、赤色の復号のどちらかが選択されます。
 次に、このfc±s(のどちらか)を上で説明したように周波数混合器(通常DBM;Double Balanced Mixer 等の非線形素子が使われます)に入力します。周波数混合器といっても中身は平衡変調器とほとんど同じなので、出力にはfLを中心にfL±(fc±s(のどちらか))が出てきます。
 さらにこれを第2帯域フィルタで濾波して青色の復号のどちらかを選択します。
 全ての場合を書き出すと、最終的に電波となって飛んで行く信号の周波数は、以下の4通りになります。

平衡変調後 周波数変換後 出力周波数 最終側帯波
ケース1 上側帯波 下側帯波 L−fcs LSB
ケース2 下側帯波 下側帯波 L−fcs USB
ケース3 下側帯波 上側帯波 L+fcs LSB
ケース4 上側帯波 上側帯波 L+fc+fs USB
 上記の「ケース○」はFig.HE0406_aの丸付き数字に対応しています。
 上の表を見ていただくと、特に第2帯域フィルタで、上側波帯を選択しているのにLSBが出てくるケース(ケース3)や、下側波帯を選択しているのにUSBが出てくるケース(ケース2)などがあります。
 周波数を計算する問題が出た時は、注意深く追って行かないと、引っ掛けられます。
 LSB・USBを判断する基準は、あくまでも第1帯域フィルタの後の信号とスペクトルを比べてどうか、ということです。Fig.HE0406_aの第1帯域フィルタ出力がUSB(黄色の山)でも、第2帯域フィルタで下側を取れば、LSBも出得る、ということなのです。

それでは、解答に移ります。
 …これは平衡変調器の正しい記述です
 …これは第1帯域フィルタの正しい記述です
 …これは周波数混合器と第2帯域フィルタの正しい記述です
 SSB送信機の終段は、電力効率が悪くてもひずみの少ないAB級又はA級増幅を用いるので誤った記述です
 …これはALC回路の正しい記述です
となりますから、正解(誤った記述)はと分かります。
 ところで、上にも書きましたが、今迄、この種のブロック図では、ALCのフィードバックは励振増幅(ドライブ)段に掛かっていました。過去問をよく見られていた方は、気付いたかもしれません。ドライブ段にフィードバックを掛けるのは、真空管時代の方式だ、という話を聞いたことがあります。
 中間周波増幅器(IF-Amp)にフィードバックを掛けても、原理的には同じだと思いますが、こうするには何かメリットがあるはずだ、と思って軽く調べてみました。IF-Ampで振幅を抑えてしまえば、周波数混合器の入力レベルが過大にならず、帯域が不用意に広がらない、という利点はありそうですが、他にもっと大きな利点がありそうです。今回はそこまで調べきれませんでした。