□ H29年12月期 A-03  Code:[HB0104] : 抵抗からなる回路網の合成抵抗・枝の電流・未知の抵抗値等の計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2912A03 Counter
無線工学 > 1アマ > H29年12月期 > A-03
A-03 図に示す直流回路において、直流電流I1の値が3 [mA]のとき、直流電圧V3の値として、正しいものを下の番号から選べ。
2 [V]
3 [V]
4 [V]
6 [V]
8 [V]
問題図 H2912A03a
Fig.H2912A03a

 この回路を見た時、電源が3つなので、反射的にキルヒホッフ=連立方程式で解くもの、と考えますが、よく見ると、電荷保存とオームの法則だけで解けます。それが見抜けるようにするには、難しいことは余りなく、「電位差のない所には電流は流れない」という簡単な事実に気付くことです。

[1]キルヒホッフの本質は…

 この問題を連立方程式で解いて解けなくはないと思います(解いていないので断定できない)が、図に示されている事実から分かることだけを追いかけて行けば、もっと簡単な方法で解けることが分かります。キルヒホッフの法則がダメだと言っているわけではなく、難しい方程式を解いて計算時間を消耗するより、式の少ない、短時間で解ける方法がある、ということです。
 そもそも、キルヒホッフの法則は、閉ループを1周した時の起電力の和と電圧降下の総和はゼロになる(第一法則)と、一つのノードに流れ込む電流の総和はゼロになる(第二法則)という、単純な考え方を式にして解くわけですが、場合によっては、この式が非常に簡単になるケースがある、という例です。

[2]問題の回路をよく見て、見通しを立てる

 まず、問題図をよーく見てみます。3つの電源の共通側(−側)をNode Gとして基準電位に取り、3つの抵抗の共通側をNode Dとします。電圧V1の電源からR1を通してI1の電流が流れ出ているので、Node Gを基準としたNode Dの電位VDは次式で表されます。
 VD=V1−R11 …(1)
Fig.HB0104_j 電流が流れない枝を見つける
Fig.HB0104_j
電流が流れない枝を見つける
 (1)式の右辺に、問題文から各々の値(V1=12 [V], I1=3 [mA], R1=2 [kΩ])を代入してみると、VD=6 [V]となります。ここでピンと来なければいけないのは、V2=6 [V]ですから、VD=V2となって、2には電流が流れない(すなわちI2=0)ということです。
 これは、R2の値がいくらであっても成り立ちます。I2≠0となると、R2の両端に電圧が生じ、VD≠V2となってしまうからです。
 2に流れる電流がゼロであるということは、I1はそのまま右の方(この電流をI3とする)に全部流れて行くので、R2がいくらであろうと、
 I3=I1 …(2)
が成立ちます。
 また、回路図のある枝に電流が流れていない、ということは、その枝がないものとして考えて良い、ということなので、R2もV2もないものと考えて問題を解けばよくなります。

[3]残りはオームの法則で解ける

 これで、一気にキルヒホッフや連立方程式のことを考えなくてよくなりました。後は「普通の」抵抗と電源からなる直流回路の問題だと思って解けばよいわけです。
 R2とV2がないものとして考えると、Fig.HB0104_kのように考えられます。上で見たように、I3=I1ですから、この回路のループを紫色の矢印方向に一周した時の起電力と電圧降下の和=0の方程式を立てると、
 V1−R11−R33−V3=0 …(3)
(3)式のI3に(2)式を代入して、
 V1−(R1+R3)I1−V3=0 …(4)
ここで注意しなければならないのは、ループの矢印に沿った方向に起電力が正である場合(V1が該当)を+に、3のように、矢印に沿った方向に負の起電力の場合は−に符号を取ることです。
Fig.HB0104_k 単純な回路に変換
Fig.HB0104_k
単純な回路に変換
 このことは、キルヒホッフの第一法則から方程式を立てる場合にも要注意の事項です。

それでは、解答に移ります。
 この問題の未知数はV3ですから、(4)式をV3について解いて、
 V3=V1−(R1+R3)I1 …(a)
1=2000 [Ω],I1=0.003 [A],R3=1,000 [Ω],V1=12 [V]を(a)式に代入して、
 V3=12−(2000+1000)×0.003=3 [V]
従って、正解はと分かります。R2とV2の値を無視しても解けると分かったら、上記のような理屈をこね回さなくても、暗算でも答えが出せます。

 なお、問題図中のV3には、電流が「流れ込む」形になりますので、電源が「充電」されていることになります。現実の系ではありえないことですが、試験問題は「理想モデル」、電源の記号は「理想電圧源」ということですから、現実とは切り離して考えます。