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(1) 無線工学の基礎
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2022年 |
12/31 12月期問題頁掲載 |
09/01 08月期問題頁掲載 |
05/14 04月期問題頁掲載 |
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無線工学 > 1アマ > H29年08月期 > A-24 |
A-24 |
送信機の出力電力を29 [dB]の減衰器を通過させて電力計で測定したとき、その指示値が1 [W]であった。この送信機の出力電力の値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、log102≒0.3とする。
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1 |
200 [W] |
2 |
400 [W] |
3 |
600 [W] |
4 |
800 [W] |
5 |
1,000 [W] |
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問題の番号から言って、この問題は計測の分類と意図されているようですが、中身は単純なデシベル計算です。過去の出題は、増幅器ばかりでしたので、減衰器は面食らうかも知れませんが、減衰器も入出力を反対に見れば増幅器ですので、そう考えれば難しい問題ではありません。
[1]指数・対数の復習
まず復習がてら、指数と対数について確認した後、デシベルと真値の変換方法や、ちょっとしたコツなどを書いてみました。まずは指数・対数の復習です。「俺はこんなの知ってる」という方はいきなり解答まで進んでも構いません。 A,Bがそれぞれ正の数、n,mが任意の数だとすると、
log(AB)=logA+logB …公式(1)
log(A/B)=logA−logB …公式(2)
log(An)=nlogA …公式(3)
An+m=An×Am …公式(4)
Anm=(An)m …公式(5)
電気の世界では通常、logは10を底(てい)とする、常用対数を使用します。すなわち、log10=1ということです。また、公式ではありませんが、特徴的な以下の数値は覚えておくと便利です。問題に良く出る数値で、最小限に止めておきます。
0 [dB]=10log1
3 [dB]≒10log2.0
4 [dB]≒10log2.5
10 [dB]=10log10
20 [dB]=10log100
デシベル計算で使う公式・数値はこの程度です。覚える公式は数が少ない方がいいですから。公式(1)〜(5)までを覚えていれば、0dBや10の倍数のデシベル値は覚える必要はありません。この値だけでも、上の公式と組み合わせれば、かなりないろいろな数が作れます。
例えば、ある系(アンプ・ケーブル・アンテナ・フィルタ…)があって、入力がA、出力がB(AやBは電圧や電流、または電力)だとすると、その系の「利得」(又は「損失」)G(デシベル)は、
Ga=20log(B/A) [dB] …電圧または電流利得(損失)
Gp=10log(B/A) [dB] …電力利得(損失)
と表されます。あとはAやBに問題で与えられた数値を入れたり、利得をかけたりして、AやBの中身が公式で簡単にできるなら簡単にしてから計算するだけです。なお、一般にAとBは同じ次元を持つ量でなければなりません。
ちなみに、係数が20(電流・電圧)と10(電力)で違うのは、以下のような理由によります。電圧や電流などの「一次変量」の比率を表現するものと、「電圧×電流」、「電流2×抵抗」あるいは「電圧2/抵抗」のように電圧や電流の「二次変量」で表現される電力を、同じ利得を同じデシベル値で表現するためです。電流や電圧が一次の量で、電力が二次の量なので、電力の係数を電圧や電流の半分にしてやらないと同じ値にならないからです。 また、増幅器やアンテナ等、比較する基準に対して大きく出力が出てくるものは、デシベル値が正の値になりますが、ケーブルや(受動素子のみからなる)フィルタ、減衰器等の入力に比べて出力が小さくなるものは、負の値になります。ただ、これも厳密なものではなく、例えば減衰器(アッテネータ)は入力より出力が小さいに決まっているので、わざわざ負の値で「そこの-10dBのアッテネータ、取って」などとは言いません。自由空間伝搬の減衰量なども、伝搬すれば電界強度も単位面積当たりの電力も小さいに決まっているので、マイナスは付けません。 ですから、デシベルの値が出てきた時は、それが「増加」や「利得」のことを言っているのか、「減衰」や「損失」のことを言っているのか、に注意する必要があります。
[2]デシベルから真数への換算表
では、下記に、私が考えた、デシベルから真数への変換について、簡単な計算とともにコツをまとめておきます。
デシベル |
変換方法 |
真値 (電力) |
1 [dB] |
4-3 [dB]と考えると、公式(2)でA=2.5, B=2なので真値=2.5/2
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1.25
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2 [dB] |
6-4 [dB]と考えると、公式(2)でA=4, B=2.5なので真値=4/2.5
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1.6
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3 [dB] |
上記の通り(10log2.0)
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2.0
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4 [dB] |
上記の通り(10log2.5)
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2.5
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5 [dB] |
2+3 [dB]と考えると、公式(1)でA=2, B=3なので真値=1.6×2
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3.2
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6 [dB] |
3×2 [dB]と考えると、公式(3)でA=2(10log2≒3), n=2なので真値=22
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4
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7 [dB] |
10-3 [dB]と考えると、公式(2)でA=10, B=2なので真値=10/2
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5
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8 [dB] |
2×4 [dB]と考えると、公式(3)でA=2.5, n=2なので真値=2.52
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6.25
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9 [dB] |
3×3 [dB]と考えると、公式(3)でA=2, n=3なので真値=23
|
8
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10 [dB]以上の値や、電圧・電流比のデシベル表示についても、同様に考えれば、様々な値に応用が利くことと思います。もちろん、この表を逆に使って、真値→デシベルの変換もできます。
それでは、解答に移ります。
上で「減衰器は反対に見れば増幅器だ」と書きましたが、要するにこの問題は、「電力利得が29 [dB]の増幅器の入力に、1 [W]を加えたら、出力は何 [W]になるか」と言っているのと同じです。あとは29 [dB]という値をどう考えるか、です。 電力比で29 [dB]というのは、
29 [dB]=20 [dB](真値で100倍)+3 [dB](問題文より2倍)×3
ですから、
29 [dB]→100×23=800 倍
となります。1 [W]の入力ですから、出力としては800 [W]が得られます(問題文に従えば、「800 [W]の電力を29 [dB]の減衰器に加えると、出力に1 [W]が得られる」ということ)。従って、最も近いのは4と分かります。
余談ですが、この減衰器、入力が800 [W]あって出力が1 [W]しかありませんから、残りの799 [W]は熱になります。きっと、放熱器のお化けみたいな(或いは水冷か油浸か)すごいものでしょう。出力を開放(無接続)で使っても、壊れないでしょうね。
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