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12/31 12月期問題頁掲載 |
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05/14 04月期問題頁掲載 |
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無線工学 > 1アマ > H29年08月期 > A-05 |
A-05 |
図に示すRLC直列回路の尖鋭度(Q)の値を求める式として、誤っているものを下の番号から選べ。ただし、共振角周波数をω0 [rad/s]とする。
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この問題が出題された平成29年は、出題傾向が大きく変わった年です。この問題についても、前年末のQと周波数帯域の定量的な問題に続き、Qの様々な表式について出題されたものです。共振現象の定性的な説明はH2012A03の解説等を参考にして下さい。ここでは、主に数値的な取り扱いをしますので、数式が続きます。複素数はありますが、微分も積分はありませんし、途中を省略せず、物理的な意味も含めて説明しますので、諦めずに追ってみて下さい。
[1]直列共振回路の復習
まずは、最初に簡単に直列共振回路の復習をします。
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Fig.HB0405_aに、RLC直列回路と交流電源、それに、この回路のインピーダンス(ベクトル表示)を示します。この例では、コイルのリアクタンスXLがコンデンサのリアクタンスXCより大きい状態を示しています。 この回路の、全体のインピーダンス(複素数)は、
で表されます。(1)式の中で、jXがコイルやコンデンサのリアクタンス分の合計を示しますので、Xの値は、
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Fig.HB0405_a RLC直列回路のインピーダンス
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となります。直列回路なので、L、C各々の要素のリアクタンスを「足した」ハズなのに、虚数の計算のマジックで引き算になっています。ωLもωCも0より大きな実数ですから、これらを単純に足しただけなら、どう転んでもゼロにはなり得ませんが、引き算なのでXがゼロになり得る、というのが、共振回路のミソです。 さて、この回路全体のインピーダンスZ(複素数)の大きさ|Z|は、Fig.HB0405_aの右下の直角三角形の斜辺の長さですから、
と求められます。LCRの直列回路は、共振状態で、この|Z|が最小になる(電流は最大になる)ので、|Z|を最小にする条件を求めてみましょう。その条件とは、(3)式のルートの中のカッコの中身(ωL−1/(ωC))が、ゼロになる状態です。すなわち、
となって、おなじみの共振周波数を求める公式が導出できました。 次に、この時に回路に流れる電流I0の大きさを求めておくと、
となります。共振していない時は、X≠0ですから、(1)式のjXも≠0となり、Zが複素数になるので、電流も複素数となりますが、共振時の電流は実数です。つまり、電源電圧Eの位相と流れる電流Iの位相の位相にズレがない状態です。 さらにインピーダンで説明すると、Fig.HB0405_aのベクトル図で、共振時はXLとXCの大きさが同じで向きが逆、つまりZベクトルには上下の成分がなく、「床に寝て」しまい、Rと同じ大きさになっている、という状態です。
[2]Qの意味するものは何か
共振のQというのは、様々な所で出会います。1アマの問題でも、受信機の選択度と絡めて出題されたり、GHzオーダーの回路設計ではなくてはならない、実用面で非常に重要なパラメータです。 そんなQの定義式としては、ω0を共振周波数として、
という形のものを記憶されている方も多いのではないでしょうか。一方、受信機の選択度や、送信機のスプリアスの抑制などで、「Qを大きくすると良い」という記述を目にします。Qが大きいほど、共振周波数から少しでもずれると、次段にエネルギーが転送されなくなる(鋭いカットオフ特性を持つフィルタとして機能する)という意味です。 また、Qが大きいほど、回路の損失が少ない、とも言えます。(6)式の定義では、Rが分母に来ていて、コイルのリアクタンス(ω0L)をRで割っていますから、式の形からも、Qが大きいほど、損失が少ない(一般には)良い回路、ということができます(コンデンサについても同様)。 Qの「本名」をQuality Factorと言いますが、まさに(共振)回路のQualityを定量的に表しているもの、という意味でしょう。 さらに、Qは、(4)式を使ってちょっと変形(ω0=1/√(LC)を(6)式に代入)してやると、
という具合に、QがR,L,C各々の値で定まり、共振周波数とは無関係な値として表記することもできます。
[3]Qを周波数帯域と結びつけて考える
(以降は「交流回路の基礎理論」(電気学会 2002)p.51を参考にしています)
さて、上で、Qが大きいということは、強い周波数選択性を持つことだ、と書きました。そこで、以降は共振回路の周波数特性とQとを結びつける作業に入ります。数式が多くなりますが、じっくり追っていって下さい。 まず、天下り的ではありますが、回路の電流が共振状態から1/√2(直列共振回路の場合)に減少する周波数(共振点を挟んだ両側)を求めます。何故、1/2ではなく1/√2なのか、は後述します。 電流が1/√2になるのですから、回路のインピーダンス|Z|は共振時の√2倍になればいいわけで、
という条件が出てきます。ここで、ωpは、電流値が共振時の1/√2になる時の角周波数です(これが求めるもの)。 (8)式の両辺の平方根を取れば、
となります。さらに、この両辺をω0Lで割る(右辺は(6)式を使う)と、
となります。何やら面倒くさそうな式になってきましたが、x=ωp/ω0(但し、x>0)と置くと、
となって、xの2次方程式となりました。2次方程式が出てきたからには、中学の数学で習った「解の公式」↓
にお出ましいただいて、解くしかありません。(11)式には複号が入っていますから、プラスの時とマイナスの時に場合分けして解きます。まずは複号がマイナスの時で、
と求められますが、√の前の複号のうち、マイナス側はx<0となって条件を満たしませんから、プラス側の解のみを採用します。その時の角周波数をωp+とすると、
と求められます。次に、(11)式の複号がプラスの時の解は、
となりますが、これも√の前の複号のうち、マイナス側はx<0となって条件を満たしませんから、プラス側の解のみを採用します。その時の角周波数をωp-とすると、
と求められます。
延々と方程式を解いてきましたが、結局、求める共振周波数の上下にある、電流が1/√2になる周波数ωp+とωp-は(14)式と(16)式のように求められました。 さて、ここからは、この周波数の性質です。(14)式と(16)式のωp+とωp-の式の形を見て、ピンと来た人は数学のセンスがある人です。まずは、これらを乗算してみます。すると、
と、何ともシンプルな形になりました。(17)式が言っているのは、ωp+とωp-の「相乗平均」がω0になる(√(ωp+ωp-)=ω0)ということです。別の言い方をすれば、(ωp++ωp-)/2≠ω0、つまり、共振周波数ω0はωp+とωp-のセンターに位置するわけではない、ということです。 蛇足なのでこれ以上計算式は増やしませんが、(14)式と(16)式を足して2で割ってみれば、ωp+とωp-の算術平均となる周波数は、(1/2Q)の程度、ω0より上側にずれていることが分かります。また、そのずれ1/2Qは、Qが大きいほど小さくなるので、Qが十分大きければ、共振周波数はほぼωp+とωp-の真中に来る、ということも分かります。 お次は、周波数幅(ωp+−ωp-)とQの関係です。
となり、共振周波数を周波数幅(ωp+−ωp-)で割ったものがQに等しい、ということが分かります。この(角)周波数幅ωp+−ωp-を半値幅と言います。1/√2なのに、なぜ半値幅と呼ぶかと言うと、電流(又は電圧)が元の1/√2ということは、電力に換算した時に、半分の値になるからです。フィルタのカットオフ周波数の表記もアンテナのビーム幅(アンテナの場合は半値角)も、電圧比で通過域や最大放射方向の1/√2となる周波数や角度で表記します。dB表記では、3 [dB]落ち、とよく言います。フィルタで言えば、通過域での通過電力を1 (0 [dB])とすると、カットオフ周波数での通過電力は1/2(-3 [dB])ということです。 この式が意味するのは、Qが大きい(損失が少ない)共振回路ほど、ω0に対する帯域幅ωp+−ωp-が狭い、ということです。共振曲線で言えば、Qが大きいほど山の形がより尖った形になる、ということです。
【参考文献】
大平孝 「Qファクタは七色仮面」電子情報通信学会誌 Vol.99,No.8,2016 pp.856-857
水野皓司 「今更ながら、Qって何?」電子情報通信学会誌 Vo.99,No.12,2016 pp.1191-1192
それでは、解答に移ります。 この問題は、頭がパニックにさえならなければ、5割の確率で点が取れます。選択肢3と4は、逆数の関係ですから、どちらかが間違っています。また、直列共振回路では、抵抗Rが大きいほどQが小さくなる、ということを知っていれば、4が誤りであることは10秒と経たずに正解できるでしょう。 実際の試験の時は、上記のような解き方でもよいですが、世の中にはもっと複雑な問題もあるので、それに対処できるよう、ここでは一応、教科書的な解き方で行きます。まず、(6)式から、選択肢1と3が除外されます。また、(7)式から、選択肢2が除外されます。従って、正解は4と分かります。
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