□ H28年12月期 A-11  Code:[HE0302] : AM変調で、無変調時の出力電圧と変調度から、変調時の出力電圧を求める公式
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2812A11 Counter
無線工学 > 1アマ > H28年12月期 > A-11
A-11 AM(A3E)送信機の出力端子において、A3E波の電圧の実効値を求める式として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、変調をかけないときの搬送波電圧の振幅(最大値)をEc、変調度はm×100 [%]とし、変調信号は、単一の正弦波信号とする。



 AM変調率と、それに絡む高周波電圧値の問題ですが、これまでは変調率mの時の全電力を求める公式を選ぶ問題でした。今回(2016年12月期)始めて「式」を選ぶのではなく、搬送波の振幅から実効電力を求める、という形で出題されましたので、分類は同一で、新たに解説を起こします。

[1]AM変調における搬送波と側波帯の振幅成分

 単一正弦波で変調した時、電力を基準に考えると、搬送波が(電力比で)1だとすると、変調度が1(100%)でも両側波帯の占める電力は0.5(1/2)、単側波帯では0.25(1/4)にしかなりません。
 このことを、計算で確かめてみましょう。
まず、搬送波の電圧(最大値)をVc、角周波数をωc、信号波の電圧(最大値)をVs、角周波数をωs、変調度をmとします。この時、搬送波の瞬時値vcと信号波の瞬時値vsはそれぞれ、
 vc=Vcsinωct …(1)
 vs=Vscosωst …(2)
また、振幅については、定義から
 Vs=mVc
 ∴ m=Vs/Vc …(3)
と表せます。変調波の瞬時値をvamとすると、
 vam=(Vc+vs)sinωc
   =Vc{1+(Vs/Vc)cosωst}sinωc
   =Vc(1+mcosωst)sinωct …(4)
さらに、(4)式を三角関数の和の公式を使って展開して、
 vam=Vcsinωct+mVccosωstsinωc
   =Vcsinωct+(mVc/2){sin(ωc+ωs)t+sin(ωc−ωs)t}
   =csinωc
      (mVc/2)sin(ωc+ωs)t(mVc/2)sin(ωc−ωs)t …(5)
(5)式において、赤字が搬送波青字が上側波帯緑が下側波帯の成分ということになります。

[2]搬送波の電力、側波帯の電力

 これらは、電圧比ですから、電力比に直してみましょう。
Fig.HE0302_a AM変調波の変調率と電力
Fig.HE0302_a
AM変調波の変調率と電力
 本当は時間で積分しなければなりませんが、これらのどの成分も同じインピーダンスZの負荷(例えばアンテナ)に流れ込むので、比を求めるなら単に電圧の2乗比でよく、
搬送波電力 Pc=Vc2/2Z …(6)
上側波帯電力
 PU=(mVc/2)2/2Z
 …(7)
下側波帯電力
 PL=(mVc/2)2/2Z
 …(8)
となります。
 当然のことながら、上側波帯と下側波帯は対称なので、(7)と(8)からも分かりますが、それらの電力は等しく、
 PU=PL …(9)
です。また、Pcに対するPUやPLの比率は、
 PU/Pc=PL/Pc
    ={(mVc/2)2/2Z}/(Vc2/2Z)
    =2/4 …(10)
となりますから、確かに、変調率m=1の時、単一の側波帯の電力は搬送波の1/4になっていることが分かります。しかも、mの二乗なので、m=0.7では約1/8になってしまいます。全電力PTを搬送波電力Pcで表せば、
 T=Pc+PU+PL=Pc(1+m2/2) …(11)
となります。これで、変調度と搬送波電力が与えられた時のAM波の電力、あるいは、搬送波電力とAM波の電力が分かっている時の変調度の計算などが可能になりました。

それでは、解答に移ります。
 送信機の出力インピーダンスとアンテナ系は整合していて、そのインピーダンスがZ0 [Ω]だとします。問題から、搬送波のみの時の高周波電圧の最大値がEC [V]だと言っているので、搬送波の送信電力PC [W]とEC、Z0の関係は、
 
となります。求める、変調率がmの時の高周波実効値(電圧)をET [V]、全電力をPT [W]とすると、実効値の定義から、
 
が成立たなくてはなりません。(a1)及び(a2)式のPCとPTを解説の(11)式(下記に再掲)
 
に代入すると、
 
となるので、この両辺にZ0を乗じて√を取れば、
 
と表せます。従って、が正解と分かります。
 この問題は、実効値なのか、最大値(=波の振幅)なのかを間違えないようにすることがカギになります。これができてしまえば、後は微分も積分も三角関数もない簡単な計算です。