□ H20年12月期 A-22  Code:[HH0803] : 2点間距離、アンテナ高、周波数、送信電力から近似式で電界強度を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2012A22 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年12月期 > A-22
A-22 相対利得6 [dB]、地上高25 [m]の送信アンテナに、周波数150 [MHz]で36 [W]の電力を供給して電波を放射したとき、最大放射方向で送信点から20 [km]離れた受信点における電界強度の値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、受信アンテナの地上高は4 [m]とし、受信点の電界強度Eは、次式で与えられるものとする。
E = E0×(4πh12)/(λd)
0:送信アンテナによる直接波の電界強度 [V/m]
1,h2:送、受信アンテナの地上高 [m]
λ:波長 [m]
d:送受信点間の距離 [m]
440 [μV/m]
318 [μV/m]
220 [μV/m]
132 [μV/m]
 88 [μV/m]

 この問題は、公式が示されているので、ラッキーな気がしますが、実はもう一つの公式を覚えていないと解けません。最近、急に多く出題されるようになりました。

[1]自由空間の電界強度

 この問題を解くのに必要な、もう一つの公式は、自由空間における送信アンテナ(相対利得G)と送信出力P [W]、送受間の距離d [m]と電界強度E0 [V/m]の関係式です。厳密に導出しようとすれば、あれこれ面倒(説明できる自信がない…)ですので、ここでは公式として覚えていただくことにします。
 自由空間の電界強度は、以下の式で求められます。
 0=(7√GP)/d [V/m]…(1)
このE0
 E = E0×(4πh12)/(λd) …(2)
に代入すれば、求める電界強度が出ます。ところで、この7という係数ですが、この式は理論式ではなくて、近似式なので、この中には真空中の誘電率やら透磁率やらπやらが混ざって、この数字になっています。理論式と違い、有効桁数は無限ではありません。

[2]直接波と大地反射波を考慮した計算

 ところで、(2)式は覚えるのには複雑な式ですが、どのように導出されたか、その背景だけを説明します。
 送信アンテナが地上高h1にあると、受信アンテナの地上高h2の点では、電気影像によって送信点の地下h1にもアンテナがあるように見えます。
 これは、大地の反射を考慮したものと考えてよく、Fig.HH0803_aのように、受信点で直接波と大地反射波の合成電界が求める電界強度となります。
 この二つの経路には、距離の差とそれに伴う位相の差が生じます。それを含めて計算すると、水平距離dが波長λに比べて十分大きい場合は、近似計算できて(2)の結果となります。
Fig.HH0803_a 大地反射波を考慮した合成電界
Fig.HH0803_a
大地反射波を考慮した合成電界
 また、アンテナの高さh1, h2は波長λよりも十分高くなければならないので、HF帯などでは近似が成り立たない可能性があります。普通、そのような問題は出ないと思います。
 (1)式を(2)式に代入した結果の式も、見たことがあるかもしれません。
 E=(88h12√GP)/(λd2) …(3)
電界強度が、距離の二乗に反比例するのは、感覚として分かります。また、分母に波長が入っているので、波長が短いほど電界強度が大きいのですが、受信アンテナの実効長は波長に比例するので、定性的に考えれば受信機の入力端子に発生する電圧は、波長に依らないことになります。
 ちなみに、係数の88は7×4π=87.96のことです。(1)式の係数7もそうですが、元々が近似式なので、係数は近似してしまってもいいでしょう。また、一連の議論の中で出てくる利得Gは相対利得であることに注意して下さい。

それでは、解答に移ります。
 (3)式に各々の値を代入すればいいわけですが、事前に換算しておかなければならないデシベル値等がありますので、それを先に計算しておきます。
 まず、波長ですが、150 [MHz]の電波の波長λは2 [m]です。次はデシベルで表された利得です。相対利得で6 [dB]ということですが、これは真数で
 G=106/10≒4
となります。利得のdB表記は電力の次元ですので、10の肩に乗っている6は10で割ります。また、d=20 [km]=20000 [m]と換算しておきます。後は全ての値を(3)式に代入するだけですので、
 E={88×25×4×√(4×36)}/(2×200002)
  =0.000132 [V/m]=132 [μV/m]
となりますから、正解はと分かります。