□ H20年12月期 A-11  Code:[HE0508] : 周波数変調波の瞬時周波数・変調指数・全電力などの特性
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2012A11 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年12月期 > A-11
A-11 次の記述は、周波数変調(F3E)波について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 変調信号の[A]の変化に応じて搬送波の瞬時周波数が変化する。
(2) 変調信号が単一正弦波のとき、変調指数は、最大周波数偏移を変調信号の[B]で割った値で表される。
(3) F3E波の全電力は、変調信号の振幅の大きさによって変化[C]。


振幅 振幅 する
振幅 周波数 しない
周波数 周波数 する
周波数 周波数 しない
周波数 振幅 する

 ここで出題されているのは、周波数変調(FM)についての基本的な事柄なので、落とさないように確実にマスターしましょう。

[1]搬送波に「変調」を掛ける方式は全部で3つ

 最初に、「変調」とは何か、を考えてみます。
 音声をマイクで電気信号に変え、それを増幅しただけでアンテナに繋いでも、ほとんど電波は飛びません。空間という伝搬経路に適した周波数の信号でないと、電波として伝わりませんし、用途によって周波数帯を分けることもできません。
 そこで、無線通信に適した周波数の「搬送波」という一定周波数、一定振幅、一定位相の信号(正弦波)を用意し、これに何らかの変化を加えて空間に飛ばそうというわけです。この「何らかの変化を加える操作」が変調です。
 ちなみに、受信側では変調と逆の操作(復調)を加え、音声などの信号を取り出します。
 一般に、単一周波数fCの正弦波の交流信号(搬送波)は以下のように表現できます。
 EC=E0cos(ωCt+φ) …(1)
この式で、E0はこの交流の振幅で、ωC=2πfC、φは位相です。
 tは時間ですから変えられません。変えるとすれば、振幅・周波数・位相の3つのうちどれか(又はこれらの組合せ)ということになります。
 アマチュアでは、アナログ的な音声や電信では振幅か周波数が、デジタルでは周波数か位相を変化させる方式がメインです。携帯電話や衛星通信などで多重度を必要とするデジタル通信では、3要素全ての変化を組み合わせて利用します。ここでは、シンプルな振幅変調と、周波数変調を取り上げます。

[2]変調信号に応じて搬送波の振幅を変化させるAM

 FMに入る前に、振幅変調(AM)を簡単に復習しておきます。振幅変調は、ECを搬送波として、変調信号ES
 ES=E1cos(ωSt) …(2)
の振幅に応じて搬送波の振幅を変化させていました。つまり、E0=ESとして、振幅変調波EAM
 EAM=E1cos(ωSt)cos(ωCt+φ) …(3)
を得ていたわけです。(3)式を見ると、右辺はωSとωCという、2種類のサイン波の積になっています。細かい計算は、三角関数の和と差の積の公式を使ってやるのですが、この周波数成分は、ωCωC±ωSという、おなじみのものになります。もちろん、ωCが搬送波成分で、ωCωSが上側波帯成分、ωCωSが下側波帯成分です。
 式はあまり細かく追わなくていいです。要するに、AMというのは、搬送波の振幅を、変調信号で変化させてやる変調方式なのだ、というふうに理解して下さい。

[3]変調信号に応じて搬送波の周波数を変化させるFM

 次に問題のFMについて調べます。
 上では、搬送波の信号を(1)式で表しました。これはそのままでかまいません。AMと違うのは、変調信号波を
 ωCω0[1+mFMsin(ωSt)] …(4)
と、角速度(=周波数)の形で書いてやることです(mFMは変調指数という定数です。後で説明します)。そして、このωCを(1)式に代入して、周波数変調波の式EFM
 EFM=E0cos{ω0[1+mFMsin(ωSt)]t+φ} …(5)
と書けます。
 この式を見ると、搬送波の周波数がさらに変調信号の波形に乗算されていることが分かります。これを図で表したのが、Fig.HE0508_aの図です。
 変調信号の振幅がゼロ、すなわちFMでいうところの「無変調」の状態では、ωS=0ですから、(4)式からωCω0
 EFM0=E0sin(ω0t+φ) …(6)
となり、これは搬送波そのものです。つまり、Fig.HE0508_aの左のようになります。
 一方、変調信号の振幅がゼロでない時は、(5)式のようであって、これを図で表せば、Fig.HE0508_aの右のようになります。
Fig.HE0508_a 周波数変調の波形イメージ
Fig.HE0508_a
周波数変調の波形イメージ
 振幅の大小が、周波数の粗密になっているイメージです。また、変調信号は(5)式にあるようにE0には掛かっていませんから、振幅は変化しません。
 (1)式の搬送波で、ωCが(4)式のように、時間とともに変化する「関数」であると捉えるとき、これを「瞬時周波数」といいます。FMは、この瞬時周波数を音声などの信号で、変化させてやる方式である、といえます。

[4]変調指数について

 FMは、振幅に応じて周波数が変化しますから、どの程度の振幅で、どれだけの周波数偏移にするのかを、変調器の設計時に決めておかなくてはなりません。また、受信側でもどれだけの周波数偏移でどれだけの振幅を得るのかを送信側と合わせておかないと、音が大き過ぎたり小さ過ぎたりします。
 最大振幅で、どれだけの周波数偏移を得るのか、を最大周波数偏移Fmといいます。変調指数mFMというのは、最大周波数偏移を変調信号周波数fsで割ったもの、すなわち、
 mFM=Fm/fs …(7)
と定義されます。
 変調指数は、変調器・復調器の設計の際に重要なパラメータとなります。占有周波数帯幅、得たい音質などの要求事項から決められる設計事項となります。

それでは、解答に移ります。
 …FMでは、変調信号の振幅に応じて瞬時周波数を変化させます
 …変調指数は、最大周波数偏移を変調信号の周波数で割ったものです
 …FM波の電力は、変調信号の振幅によっては変化しません
となりますから、正解はと分かります。