□ H20年08月期 A-02  Code:[HA0309] : コンデンサに蓄えられるエネルギーの公式と計算
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2008A02 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年08月期 > A-02
A-02 コンデンサに電圧V [V]を加えたとき、Q [C]の電荷が蓄えられた。このときコンデンサに蓄えられるエネルギーWを表す式として、正しいものを下の番号から選べ。
W=QV2 [J]
W=QV [J]
W=(1/2)Q2V [J]
W=(1/2)QV [J]
W=(1/2)QV2 [J]

 この手の問題は公式を覚えていれば解けますが、頭についている1/2を落とすことがあります。試験に合格するためだけなら不必要ですが、「何故そうなっているのか」を考えてみることにしました。

[1]コンデンサに蓄えられるエネルギー

 容量C [F]のコンデンサに電圧V [V]で充電した時、蓄えられているエネルギーW [J]は、次の公式で表されます。
 W=(1/2)CV2 …(1)
「これはもう公式なんで、覚えて下さい」と書いてしまっては、あまり面白くありません。私などは、「頭に付いてる1/2は何なんだ?」と気になって覚えられません。記憶だけに頼ると、他の公式とまぜこぜになって、すぐこの1/2を忘れてしまいます。
 また、このページは、1アマの問題を題材にして無線技術の基礎の勉強をするのが(一応の)目的なので、丸暗記するのではなく、少しでも本質に迫ってみようと思います。

[2]コンデンサに充電する、という物理的意味

 コンデンサにエネルギーが溜まる、というのはどういうことか、を考えてみます。平行平板コンデンサを考えて、両極板に電荷が蓄積(つまり充電)しないと、エネルギーが蓄えられないのは当然ですが、ここではエネルギー(=物理用語で「仕事」と等しい)を明確にするため、次のように考えます。
 コンデンサの静電容量はC [F]、両極の電位をV [V]、極板間隔をd [m]、極板間の一様な電界をE [V/m](=V/d)として、
  • コンデンサの両極は何にも接続されていない
  • コンデンサは最初は充電されていない
  • 電位の基準の電極(仮に負極)から微小な正電荷Δqを取出す
  • Δqを他方の電極(仮に正極)に向けて運ぶ
  • Δqは電界Eにより進行方向と逆向きの一定な力Fを受ける
  • Fの力を受けて距離dだけ運ぶ。これには仕事量ΔWが必要
  • 正極の電位は運ぶ前よりΔV、電界の強さΔE上昇する
  • この動作を極板間電圧がVになるまで繰返す
 というように考えてみることにします。実際には両端が浮いたコンデンサの電極の間で、一方から電荷を取出したりすることはできないので、頭の中での実験、すなわち「思考実験ということになります。
Fig.HA0309_a 微小電荷を運ぶ
Fig.HA0309_a
微小電荷を運ぶ
 Fig.HA0309_aにこの動作の様子を示します。この図の左が電荷Δqを動かす前、右が動かした後です。
 このようにして(目に見えない「小人」にお願いして)、少しづつ電荷Δqを何度も運び、最終的に両電極に±Q [C]の電荷が溜まって正極の電圧がV [V]になった状態と、普通に電源から充電してこの状態になったのと、物理的には全く違いはありません。つまり、どのような方法を用いても、コンデンサに溜まっているエネルギーはこの状態では同じです。
 Δqを1回運んだ後は、正極の電位がΔV(=Δq/C)だけ上昇しているので、次にΔqを運ぶ時は、電界がΔE(=ΔV/d)だけ強くなっていて、電荷を運ぶのに要する仕事はΔWだけ増加します。運べば運ぶほど、電界が強くなるので、一度に要する仕事量(コンデンサのエネルギーの増分)は大きくなります。
 そして、正電極の電圧がV [V]になるまでに「小人」さんがしたトータルの仕事Wが、コンデンサに蓄えられているエネルギーに等しい、というわけです。ではそのWは、どのようにして求めればよいのでしょうか?

[3]電荷を運ぶための仕事量の総和を求める

 Fig.HA0309_bにその計算方法を示します。横軸に蓄積されている電荷量Q [C]を取り、縦軸にはその時のコンデンサの極板間電圧v [V]を取ります。蓄積電荷量が多くなるほど、一回のΔqの運搬に要する仕事ΔW=「短冊の面積」が大きくなって行くのが分かります。
 一回に運ぶ電荷量がΔqなので、要する仕事量(=コンデンサに蓄えられるエネルギーの増加分)ΔWは、
 ΔW=Δqv=CvΔv …(2)
と書けます(Q=CVなので、Δq=CΔvだから)。この作業が終わる(vがV [V]になる)までに要した仕事の総量W [J]を求めるには、(2)式の両辺を積分すればよく、
 W=C∫vdv=(1/2)CV2 …(1)
となります。なお、vの積分範囲は0〜Vです。さらに、この式にQ=CVを代入して書き換えれば、
 W=(1/2)QV …(4)
Fig.HA0309_b 蓄積エネルギーの計算
Fig.HA0309_b
蓄積エネルギーの計算
となります。Fig.HA0309_bをみれば、水色の部分の面積を求めていることになりますが、「この面積を求めるのに積分まで持ち出すとは、なんと面倒なことを…」と思われるかもしれません。右下の水色の三角形を見れば、
 Wが、底辺の長さがQで、高さがVの直角三角形の面積
であることがすぐに分かります。なので、W=(1/2)QVと求めるだけで、積分など何も使わずに済むからです。
 ともあれ、この結果から分かることは、蓄えられるエネルギーは
容量が同じなら電圧の2乗に比例((1)式)
蓄えられている電荷量と極板間電圧の積に比例((4)式)
することが分かります(上の2つは、同じ現象を違った見方で見たものに過ぎません)。

[4]エネルギーが蓄積されている場所

 ちょっと横道にそれますが、このWなるエネルギーが蓄えられている場所はどこでしょうか? 電極?それとも誘電体? 「真空コンデンサ」なんていうものもありますから、真空にエネルギーが蓄えられるなんて考えにくいですが、電磁気学は明快に「極板に挟まれた空間である」と答えています。この辺は、分かりやすく書かれた本がほとんどなくて残念なのですが、電荷が全くなければ「電場(電界の及ぶ空間)」がなかったにもかかわらず、極板に電荷が溜まると、挟まれた空間に、電場という「それがない場所よりもエネルギーの高い状態を持った空間」が出現し、ここにエネルギーが蓄えられる、という解釈になっています。
 ならば、電荷の溜まったコンデンサから、誘電体のみを切り出してくれば、エネルギーが保存できるのでは?と考えますが、そんなことはできません。なぜなら、その電場を作り出しているのは極板に蓄えられた電荷であり、誘電体がそこ(極板間)から遠ざかってしまえば、もはや電場は誘電体のある場所には存在しないからです。

それでは解答に移ります。
 ここまで読んでいただければ、正解は(4)式からと分かります。

 1アマの問題で積分を持ち出すことはまずありませんが、頭に付いている係数(1/2)を説明しようとすると、どうしても出てきてしまうのです。ここではあえて突っ込みましたが、試験を受ける時はコンデンサのエネルギーの公式は覚えておくしかないでしょう。最後に、同じエネルギーの式ですが、(1)式と(4)式を混同しないようにご注意下さい。