□ H20年08月期 A-01  Code:[HA0310] : 二つの導体球電荷を与えた後に接続し、電荷の移動量を計算する
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2008A01 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年08月期 > A-01
A-01 図に示すように、対地間静電容量がC1=2 [μF]、C2=4 [μF]の2個の導体球A及びBに、それぞれQ1=4 [μC]及びQ2=14 [μC]の電荷を与えた後、両者を細い銅線で接続してスイッチSを接(ON)にしたところ、C2からC1に電荷が移動して電気的つり合いの状態となった。このとき、移動した電気量の値として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、導線及びスイッチの影響は無視するものとする。
6 [μC]
5 [μC]
4 [μC]
3 [μC]
2 [μC]
問題図 H2008A01a
Fig.H2008A01a

 一見純粋な物理の問題のようでいて、実はコンデンサの並列に置き換えれば解けてしまう、という問題です。

[1]カギは導体球と地球との間に作るコンデンサ

 この問題は平成20年8月期の時点での新問ですが、戸惑うことなく、よく図を見て下さい。導体球の下に描かれたコンデンサの図記号と、問題文中の「対地間静電容量」はどんな関係にあるのでしょうか?
 これは物理(電気)の問題ですから、大地は無限に広がる(理想的な)導体と考えます。一方、導体球は金属等でできている球体ですから、大地と導体球の間には、静電容量が存在します。この容量のことを対地間静電容量と呼び、問題図ではC1やC2と称しているわけです。この導体球と大地で構成する容量は、電気部品としてのコンデンサの容量と、振る舞いはなんら変わりません。すなわち、導体球の対地間静電容量をC [F]、溜まっている電荷量をQ [C]、導体球の大地に対する電位をV [V]とすれば、
 Q=CV …(1)
が成り立ちます。また、導体球が複数あって、それらが銅線で接続されても元々あった電荷量が保存される(電子は消えてなくならない)ことや、導線で接続された導体球同士は同じ電位になることなど、片側がGND電位に接続された(電気部品としての)コンデンサが複数あるのと、物理としては全く同じことが起こります。

[2]電気回路(コンデンサの並列)で解く

 上記のことが分かれば、この問題は物理の問題というよりは、電気回路…中でもコンデンサの並列の問題だ、ということに気づかれたかもしれません。
Fig.HA0310_a 導体球をコンデンサに置換える
Fig.HA0310_a
導体球をコンデンサに置換える
 となればあとは簡単で、Fig.HA0310_a左のように考えます。
 A,Bのコンデンサの各々の静電容量をCA,CB [F]とし、スイッチ投入前はたまっていた電荷をそれぞれQA1,QB1 [C]とします。スイッチは開かれていますから、双方の導体球の電位VA1,VB1 [V]は一般に、
 VA1=QA1/CA …(2)
 VB1=QB1/CB …(3)
となり、異なる値を示します。
 その後、スイッチSを閉じる(Fig.HA0310_a右)と、両コンデンサの両端の電圧(電位)VA2,VB2 [V]は、
 VA2=QA2/CA=QB2/CB=VB2 …(4)
となります。これが、問題に言う「電気的つり合いの状態」です。「つり合う」というのは、両者の電位が等しくなって、電荷が移動しない(=電流が流れない)状態のことを言います。
 また、スイッチのON/OFF前後で電荷は保存されますから、
 QA1+QB1=QA2+QB2 …(5)
が成り立ちます。
 あとは、問題に与えられている数値をこれらに代入して解けば、普通のコンデンサの問題と、全く同じにして解けてしまいます。

それでは解答に移ります。
 問題の左側の導体球Aの対地間静電容量をCA、右側BのそれをCBとし、スイッチを閉じる前のそれぞれの蓄積電荷量をQA1,QB1とします。スイッチを閉じた後の導体球A,Bの電荷量QA2,QB2を考えると、右から左に移動した電荷量をδQとして、
 QA2=QA1+δQ …(a)
 QB2=QB1−δQ …(b)
が成り立ちます。片方が減った分が、他方の増えた分ですから、問題ないですね。(a),(b)式を(4)式に代入します。すると、
 (QA1+δQ)/CA=(QB1−δQ)/CB …(c)
これを、δQについて解いて、
 (QA1+δQ)CB=(QB1−δQ)CA
 δQ(CA+CB)=QB1A−QA1B
∴ δQ=(QB1A−QA1B)/(CA+CB)
ここで、CA=C1=2 [μF],CB=C2=4 [μF],
A1=Q1=4 [μC],QB1=Q2=14 [μC]を代入すれば、
 δQ=(14×2−4×4)/(2+4)=2 [μC]
と求められますから、正解はと分かります。ここでは、収束後の電圧が等しいという(4)式を使いましたが、電荷保存の(5)式を利用しても結果は同じです。
 (5)式を使う場合は、(この問題では)解法がちょっと複雑になります。まず、(2),(3),(4)式をQA1、QB1、QA2、QB2について解いて、全部(5)式に代入します。収束後の両コンデンサの電圧をV [V]すると、
 VA1A+VB1B=V(CA+CB)…(d)
と表せますから、この問題で言えばVA1A=4 [μC]、VB1B=14 [μC]、CA=2 [μF]、CB=4 [μFを代入してVについて解けば、V=3 [V]と求められます。
 後は、例えばAの点電荷に着目して、初期状態電荷量4 [μC]と、スイッチをONにして定常状態になった後の電荷量CAV=2×3=6 [μC]を比べて、2 [μC]の増加、ということが分かります。

 なお、今回は問題に「電荷がC2からC1に移動して…」と移動の方向まで書かれていたので、δQ>0となりましたが、方向が書かれていない時は、δQが適当な方向に移動すると決めておき、計算の結果がδQ<0となったら、(計算間違いでない限り)当初想定したのと逆方向に電荷が移動した、ということになります。