□ H19年12月期 B-03  Code:[HD0108] : エミッタホロワ増幅回路の特徴と動作
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1912B03 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年12月期 > B-03
B-03 次の記述は、図に示すエミッタホロワ増幅回路について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。ただし、抵抗R1、R2及び静電容量C1、C2の影響は無視するものとする。
(1) 電圧増幅度Avの大きさは、約[ア]である。
(2) 入力電圧と出力電圧の位相は、[イ]である。
(3) 入力インピーダンスは、エミッタ接地増幅回路と比べて[ウ]。
(4) この回路は、[エ]接地増幅回路ともいう。
(5) この回路は、[オ]変換回路としても用いられる。
問題図 H1912B03a
Fig.H1912B03a
 1  同相  低い  コレクタ  電圧
 10  逆相  高い  ベース 10 インピーダンス

 1段のエミッタフォロワ増幅回路の特徴を問われています。エミッタフォロワ回路はコレクタ接地回路、とも呼ばれます。高いインピーダンスで受けて、低いインピーダンスで送り出す回路として、非常に良く使われる回路ですので、マスターしてしまいましょう。

[1]エミッタフォロワの動作原理…VBEに着目

 まず、トランジスタはその基本動作として、ベース−エミッタ間電圧(VBE)が、コレクタやベースに流れる電流にかかわらずほとんど一定、ということを思い出しましょう。常温で、シリコントランジスタなら、約0.7 [V]です(厳密には変化します)。これは、許容コレクタ損失が何100 [W]もあるようなものでも、数[mA]しか流さない小信号のものでも、ほとんど同じです。
Fig.HD0108_a エミッタフォロワの構成例と動作
Fig.HD0108_a
エミッタフォロワの構成例と動作
 それを理解した上で、この回路の動作を見て行きます。
 Fig.HD0108_a左はエミッタフォロワの模式的な回路図です。R1とR2はベースにバイアス電流を流すため、バイアス電圧を決めている抵抗です。また、C1, C2は入出力の信号から直流分をカットするコンデンサです。このコンデンサによるリアクタンス分は、増幅したい周波数領域で十分低いものと考えます。
 入力のない時のベース電圧をVBIAS [V]とし、振幅v [V]のAC入力信号を入れるとします。
 この時、ベース電圧(Fig.HD0108_aの回路図でA点の電圧)VB [V]は、
 VB=VBIAS±v …(1)
となります。一方、エミッタ電圧(B点の電圧)VE [V]は、常にVBより0.7 [V]低いので、
 VE=VB−0.7
   =VBIAS±v−0.7 …(2)
となります。この関係をグラフに書くと、Fig.HD0108_a右上となります。

[2]エミッタフォロワの特徴1 電圧利得はほぼ1

 この回路の最終的な出力電圧Vout [V](C点の電圧)について考えてみます。この点の電圧は、B点の電圧の直流成分をカットしただけなので、(2)式より、
 Vout=VBIAS±v−0.7−(VBIAS−0.7)
   =±v …(3)
となって、入力と同じ振幅になりますから、電圧利得は1です。また、符号は正ですから、位相は同相(入力電圧が上昇すれば、出力電圧も上昇)です。

[3]エミッタフォロワの特徴2 インピーダンス変換作用

 以下、すべてバイアス分の電圧や電流は除き、信号分だけで議論します。トランジスタの電流増幅率をβとし、信号源から流れ出す電流を±IB [A]
とします。負荷に流れる電流±IE [A]は、
 IE=βIB …(4)
となります。負荷抵抗RL [Ω]に(4)の電流が流れ、その両端に±v [V]の電圧が生じているので、
 IE=v/RL …(5)
と書けます。入力インピーダンスZin [Ω]は、入力電圧v [V]と電流IB [A]の比で、
 Zin=v/IB …(6)
一方、出力インピーダンスZout [Ω]は(4)=(5)とおいて、
 Zout=RL=v/βIB …(7)
となります。ここで、(6)式と(7)式を比べると、
 in=βZout …(8)
となります。
 例えば、増幅器の出力インピーダンスが100 [Ω]程度と低く設計したとしても、一般的な小信号トランジスタを持ってくれば、そのβは、200程度はありますから、入力インピーダンスは100 [Ω]×200=20 [kΩ]という非常に大きな値となります。
 つまり、入力インピーダンスが高く、出力インピーダンスが低い特徴を持っています。このため、スピーカーの数[Ω]という低いインピーダンス負荷が繋がるオーディオアンプも、アンテナの50 [Ω]系を出力インピーダンスとする送信機も、出力段はほぼ例外なくこの形式です。
 エミッタフォロワの大きな働きは、インピーダンス変換である、ということができます。

[4]エミッタフォロワの特徴3 周波数特性

 エミッタフォロワの周波数特性は良好(広帯域)です。もちろん、トランジスタの持っている増幅作用がなくなるまでの高い周波数では、特性が落ちますが、それより低い周波数では広帯域で平坦な特性を示します。
 これは、ベース(入力)とエミッタ(出力)の間に電位差がないため、ここに寄生容量が存在していても見かけ上容量はゼロ(電位の等しい電極間に電界はできないため電荷は溜まらない)で、ミラー効果がないためです。

それでは、解答に移ります。
 …エミッタフォロワの電圧利得はほぼ1 1です
 …入出力の位相は2同相です
 …入力インピーダンスはエミッタ接地に比べ非常に8高いです
 …エミッタフォロワは、4コレクタ接地回路とも呼ばれます
 …エミッタフォロワは、10インピーダンス変換機能を持ちます
となります。