□ H19年12月期 A-08  Code:[HD0102] : エミッタ接地の等価回路でトランジスタのhfeや負荷抵抗から増幅度を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1912A08 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年12月期 > A-08
A-08 図に示すエミッタ接地トランジスタ増幅回路の簡易等価回路において、入力インピーダンスがhi [Ω]、電流増幅率がhf、負荷抵抗がRL [Ω]のとき、この回路の電圧増幅度Aを表す式として、正しいものを下の番号から選べ。
問題図(横長) H1912A08a
Fig.H1912A08a
A=−hf
A=−hfL
A=−hf/hi
A=−(hfL)/hi
A=−(hf2L)/hi

 バイポーラトランジスタの等価回路というとなんだか難しそうですが、1アマで出てくるものは、最も単純なモデルなので、ツボを押さえればオームの法則だけで解けてしまいます。あまり難しく考えないで行ってみましょう。

[1]ベースに流れる電流ibとコレクタ電流icの関係

 トランジスタ回路を解析する時に、最も基本的なポイントを最初に押さえておきます。トランジスタ自身の等価回路も、周辺の抵抗や電源を含む実際の増幅回路も、ここから始まります。
  ベースに流れる電流ibのhfe倍の電流がコレクタ電流ic
もちろんhfeはトランジスタの電流増幅率です。式で表せば、
 c=hfeb …(1)
というシンプルな関係です。
 これがトランジスタの動作の基本原理です。PN接合がどうだとか、バイアスの掛け方がどうだとかも必要ですが、等価回路で問われるのは、トランジスタそのものの動作です。このことをまず頭に入れておきましょう。簡単に言えば、トランジスタは「わずかな電流で大きな電流を制御する素子」ということができます。

[2]丸の中に矢印が入った記号は「電流源」

 丸の中に矢印が入った回路図記号は、回路関係(なかでもアナログ回路)の方でないとあまり馴染みがないかもしれませんので、少し説明をしておきます。この記号は「電流源」といって、常に指定された電流を流し出す電源の理想的なモデルを示しています。
 もう少し詳しく説明しましょう。「指定された電流を流し出す電源」とは、例えば、1 [mA]流し出すような「電流源」があったとします。この電流源の両端に1 [kΩ]を繋げば、1 [mA]×1 [kΩ]で1 [V]が生じる、ということです。一定の電流を出力するわけですから、繋ぐ抵抗を変えてやれば、それに比例した電圧が抵抗の両端に生じます。
Fig.HD0102_a 電流源の記号と動作の意味
Fig.HD0102_a
電流源の記号と動作の意味
 「理想的な」とは、上の例で、抵抗を1 [MΩ]に変えてみると、1 [mA]×1 [MΩ]で1 [kV]が両端に生じるはずです。実際には電源電圧を超える電圧は発生しないわけですが、ここで解くべき問題は「モデル=理想的な回路」であって、実際の回路ではないことに注意して下さい。逆に抵抗を小さくして、0Ω(ショート)にしても1 [mA]が流れるのは変わりありません。このように、理想的な動作をするため、この問題がオームの法則だけで解けるのです。
 電流源とは早い話が、負荷に何が繋がろうとも指示された電流を出力する電源、というわけです。我々が無線機や回路の実験に使う定電圧電源は「負荷に何が繋がろうとも指示された電圧を出力する」という電源です。ちなみに、問題の回路図一番左の「丸に波印」は交流の定電圧源です。

それでは、解答に移ります。
 問題の回路図を見ると、電流源の右上に、hfbと書かれています。これは、「この電流源はibのhf倍の電流を発生させるもの」だ、ということを言っています。すなわち、コレクタ電流icがhfbだというのです。
 問題が求めているのは、「電圧利得を求めること」です。電力利得ではありませんのでご注意を(電力利得が問われる問題も出ています)。電圧ですから、負荷抵抗RL[Ω]に流れる電流ic[A]が分かれば求められます。
 まず、入力電流ibは、
 ib=vi/hi …(a)
出力電圧vo[V]は、
 vo=−icL …(b)
ここで、負号がついているのは、電流源の向きを考えれば、コモンの基準電位から見て、負荷抵抗のコレクタ側が(交流的に)負電位になるためです。一方、ibとicには、上で述べたように、
 ic=hfb …(c)
の関係がありますから、(c)を(b)に代入して、電圧利得A=vo/viを求めれば、
 A=vo/vi=−hfbL/(hib)
  =−(hfL)/hi …(d)
となりますから、正解はと分かります。