□ H19年08月期 A-19  Code:[HH0504] : 進行波アンテナとして動作するアンテナ
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12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1908A19 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年08月期 > A-19
A-19 次に挙げるアンテナのうち、進行波アンテナとして動作するものを下の番号から選べ。
キュビカルクワッドアンテナ
八木アンテナ
ダイポールアンテナ
コリニアアレーアンテナ
ロンビックアンテナ

 進行波アンテナはどれか、という問題で、選択肢にいろいろなアンテナが出てくるパターンです。それぞれのアンテナの性質を知っておくことが正解への早道ですので、ここでは各アンテナの性質を復習します。

[1]ダイポールとその関係アンテナ

 アンテナの最も基本となるλ/2波長ダイポールアンテナと、そのn倍の長さの高調波アンテナ、及び、λ/2ダイポールを2本、90度交差させて位相差給電し、水平面内の無指向性を得るターンスタイルアンテナです。すべて、定在波アンテナです。
Fig.HH0504_a 半波長ダイポールの構造と特性
Fig.HH0504_a
半波長ダイポールの構造と特性
Fig.HH0504_b ターンスタイルの構造と特性
Fig.HH0504_b
ターンスタイルの構造と特性

半波長ダイポールアンテナ(Fig.HH0504_a)
項 目 特  性
構造・動作原理 片側約λ/4のエレメントを直線状に展開し、平衡給電する。共振させて用いる
指向性・偏波面 指向性:水平面内=8の字 垂直面内=無指向性
偏波面:銅線の展帳方向に同じ(一般に水平)
インピーダンス 73+j43 [Ω]だが、普通両側を短縮してλ/2より短くし、リアクタンス分(虚数部:j43)をゼロにして使う
利得・実効長(高) 利得2.15 [dBi] 実効長λ/π [m]
電流分布 給電部が電流最大で末端に行くほど正弦的に減少する分布。先端では原理的にゼロ
周波数帯域 共振周波数を中心とする、狭い帯域。
(エレメント径を波長に対して太くすると多少広がる)
特徴・用途等  アマチュアでHFのワイヤー系といえばダイポール。長波長側のバンドではコイルを入れて短縮
 この変形に、インバーテッドV(逆V)アンテナがある。これは、給電点を頂点として逆V形に張ったもの。敷地の狭い所でも張れる。開き角が小さくなるほどインピーダンスは低下、帯域は狭帯域に。他の特性は、ほぼ半波長ダイポールと同様

高調波アンテナ(図なし)
項 目 特  性
構造・動作原理 片側nλ/4の長さ(n=2,3,4…)のエレメントに、ダイポールと同様に給電する。エレメントには定在波が立ち、給電点が電圧腹(=電流の節)となる給電方法を電圧給電、電圧の節(=電流腹)となる方法を電流給電という
指向性・偏波面 指向性:水平面内=エレメント長により複雑な8の字
 垂直面内=無指向性
偏波面:銅線の展帳方向に同じ(一般に水平)
インピーダンス エレメント長に依るが、電圧給電の場合は高く、電流給電の場合は低い
利得・実効長(高) 利得:エレメント長が長いほど大きいが、特定方向に強く指向性が出るようになるため、扱いづらい
電流分布 構造・動作原理を参照
周波数帯域 共振周波数を中心とする、狭い帯域。
(エレメント径を波長に対して太くすると多少広がる)
特徴・用途等  要するに7 [MHz]のフルサイズダイポールに14 [MHz]や21 [MHz]を乗せて使えば高調波アンテナ、ということですが、偶数倍の周波数では電圧給電になるので、それ用の整合回路が必要になりますし、奇数倍で電流給電であっても、基本波の時とインピーダンスが異なるので、やはり整合が必要
 苦労する割に、放射パターンが変形した8の字(文字ではなんとも表現しづらいです)なので、回転できなければ取りたい局がそのビームの中に入ってくれるとも限らないので、あまり使われない
 nが10とか50とかになっても、進行波アンテナにならないか?と問われると…なるかもしれませんが、放射パターンが実用的でなくなるような感じもします。アンテナシミュレータで調べてみた方、居ませんか?

ターンスタイルアンテナ(Fig.HH0504_b)
項 目 特  性
構造・動作原理 λ/2ダイポールを直交させて配置し、他方をπ/2だけ位相をずらして給電する
指向性・偏波面 指向性:水平面内=ほぼ無指向性 垂直面内=ほぼ無指向性
偏波面:水平(上から見ると、回転偏波)
インピーダンス 73 [Ω] λ/2ダイポールと同じ
利得・実効長(高) -0.85 [dBi] 2本のダイポールに半分ずつ分配するため
電流分布 一本のアンテナについては、λ/2ダイポールと同じ
周波数帯域 λ/2ダイポールと同程度
特徴・用途等  アマチュアではほとんど使われないが、FMやTV放送の送信アンテナとして一般的。放送に必要な無指向性が得られるが、単独ではゲインが低いのと帯域が狭いので、送信鉄塔にFig.HH0504_b右のスーパーターンスタイルアンテナを四方向に配置し、垂直方向に何段も重ねて使う
 

[2]単純な構造で利得を稼ぐアンテナ

 比較的単純な構造で、特定方向の利得を稼ぐアンテナです。ここでは、ロンビックアンテナとコリニアアレーアンテナを挙げておきます。ロンビックが進行波アンテナで、コリニアアレーは定在波アンテナです。
Fig.HH0504_c ロンビックの構造と特性
Fig.HH0504_c
ロンビックの構造と特性
Fig.HH0504_d コリニアアレーの構造と特性
Fig.HH0504_d
コリニアアレーの構造と特性

ロンビックアンテナ(Fig.HH0504_d)
項 目 特  性
構造・動作原理 平衡給電された、一辺が数λ以上の2ひし形をなす2本の導線の終端に、この伝送線路の特性インピーダンスと同じ終端抵抗を付けたもの。進行波が乗り、給電点から終端方向に強い指向性を持つ
指向性・偏波面 指向性
水平面内=給電点から終端の方向の単一指向性(但し、サイドローブの数が多く大きさも大)
垂直面内=打上角は低い
偏波面:水平
インピーダンス 2〜300 [Ω]程度 θや導線間隔に依存
利得・実効長(高) 10〜15 [dBi]程度 これもθや導線の長さ・間隔に依存
電流分布 給電点が最大で、終端に近づくにつれ減衰する分布。減衰した分が空間に放射されている
周波数帯域 進行波アンテナなので、広帯域
特徴・用途等  短波帯で、固定局同士で交信する業務局などが使用。地上高は低くてもよいが、長さ方向のスケールが波長の数倍必要なので、短波で建てようとすると非常に大きな敷地を要する。利得が大きいがサイドローブも大きい。ひし形の一辺の長さと、開き角θの間には、利得に対して最適条件が存在する

コリニアアレーアンテナ(Fig.HH0504_d)
項 目 特  性
構造・動作原理 一般に市販されているものは、同軸ケーブルをλ/2ごとに外部導体と内部導体を交互に接続した構造のもの。入力された平衡電流(ラジアルで、同軸の不平衡電流をカットして平衡電流のみにしている)を各同軸の接続点で位相反転&電波放射に寄与する不平衡分に変換し、電波が放射される。最上段エレメントは接続点からλ/4の所で内部・外部をショート
指向性・偏波面 指向性:水平面内は無指向性 垂直面内:8の字
偏波面:垂直
インピーダンス 調査&勉強中
利得・実効長(高) 0.6×段数 [dBi]程度
電流分布 調査&勉強中
周波数帯域 λ/2ダイポールと同程度
特徴・用途等  水平面内の無指向性が要求されるアンテナで、GPや垂直ダイポールでは利得が足りないために、多段にして垂直面内のビームをしぼり、利得を稼いでいる。アマチュアではVHF・UHFで良く使われる他、携帯電話の基地局にも使われている(通常はレードーム=風雨からアンテナを保護するカバー=が付いているので、アンテナ本体は見えない)
 

[3]導波器や反射器を持つ指向性アンテナ

 手っ取り早く言うと、八木系のアンテナです。放射エレメントの他に、反射器や導波器があって、反射器の反対方向、又は、導波器の方向に単一の指向性を持つアンテナです。ここでは、八木・宇田アンテナとキュビカルクワッドを挙げますが、両者とも定在波アンテナです。
Fig.HH0504_e 八木・宇田の構造と特性
Fig.HH0504_e
八木・宇田の構造と特性
Fig.HH0504_f キュビカルクワッドの構造と特性
Fig.HH0504_f
キュビカルクワッドの構造と特性

八木・宇田アンテナ(Fig.HH0401_f)
項 目 特  性
構造・動作原理 ほぼλ/2の長さを持つ放射器(ラジエーター)に、λ/2よりわずかに長い反射器(リフレクター)、λ/2よりわずかに短い導波器(ディレクター)を前後に配置する。各エレメントの間隔はλ/4程度
指向性・偏波面 指向性:導波器の方向に単一指向性を持つ 導波器を増すと鋭くなる
偏波面:アンテナの設置方向で水平・垂直どちらも可
インピーダンス 特に整合を取らなければ20〜30 [Ω]
導波器・反射器の位置・構成に大きく依存
利得・実効長(高) 10〜16 [dBi]程度 導波器の数を増すと利得が上昇する
電流分布 導波器はλ/2ダイポールと同様。他のエレメントは導波器からの誘導電流が流れる
周波数帯域 共振形なので、ダイポールと同程度。エレメント間隔の最適化や放射器を折返しダイポールにしたりして広帯域化する
特徴・用途等  FMやTVの受信アンテナから、アマチュア・軍用まで、よく使われる。名称は、東北大の八木博士から取ったものだが、実用化研究は宇田博士が行なったため、正式には八木・宇田アンテナと呼ばれる。導波器の本数がある程度以上になると、大型になる割に利得の増加が大きくないので、同じアンテナを複数スタックにする方法で、ゲインを稼ぐ。アマチュアでは、交信相手が固定していないので、ローテーターが必要

キュビカルクワッドアンテナ(Fig.HH0401_j)
項 目 特  性
構造・動作原理 ループアンテナの中でも1波長分の導線を方形にし、下辺の中心部に給電して放射器とし、ループ長が放射器よりわずかに長い反射器や、短い導波器と組み合わせて指向性を持たせたもの
指向性・偏波面 指向性:導波器方向又は反射器と反対方向に単一指向性
偏波面:給電部分が水平の辺なら水平
インピーダンス ループ単体で100 [Ω]程度
(導波器、反射器を付けると数10 [Ω]に下がる)
利得・実効長(高) 2エレで7 [dBi]程度
電流分布 給電する辺とそれに平行な辺では給電部分(真中)が最大で、両端に行くほど減少する分布。他の辺は、互いに逆位相の分布になるので、放射には寄与せず
周波数帯域 ダイポールよりは広い
特徴・用途等  キュビカルクワッドはループアンテナの一種と考えられるが、ループサイズが波長オーダーと大きいので、小さいループアンテナとは性質が違う。アマチュアでは主にHF〜VHFで主に用いられ、F/B比が大きい、同エレメント数なら八木より利得が大きい等の利点があるが、受風面積が大きく、エレメントを支持する構造が必要
 
 上記のアンテナのうち、進行波アンテナはロンビックアンテナだけです。進行波アンテナか否かを見分けるには、そのアンテナの調整時、長さにシビアな調整が必要なものが定在波アンテナ(共振を利用するため、エレメント長が変わると共振周波数がずれるから)です。また、エレメントの終端が、線路の特性インピーダンスと同じ値の抵抗で終端されていることがあるのも、進行波アンテナの特徴です(全ての進行波アンテナが終端を有しているわけではない)。

それでは、解答に移ります。
 …キュビカルクワッドアンテナは定在波を乗せて使用します
 …八木・宇田アンテナは放射器がダイポールと同じ定在波アンテナです
 …ダイポールアンテナは、定在波アンテナの代表例です
 …コリニアアレーアンテナは、1つの素子がλ/4の定在波アンテナです
 …ロンビックアンテナは、進行波アンテナの代表例です
となりますから、正解はと分かります。