□ H19年04月期 A-18  Code:[HG0704] : ニッケル水素蓄電池の構造と動作原理の説明
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1904A18 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年04月期 > A-18
A-18 次の記述は、ニッケル・水素蓄電池について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 電解液として水酸化カリウムを用い、陽極板として[A]を、陰極板として水素吸蔵合金(Metal-Hydride)を用いた二次電池であり、1個あたりの公称電圧は[B]である。
(2) また、[C]が小さく比較的大電流の放電にも向き、保守は鉛蓄電池に比べて容易である。


水酸化ニッケル 1.5 [V] 自己放電
水酸化ニッケル 1.2 [V] 内部抵抗
亜鉛 1.5 [V] 内部抵抗
亜鉛 1.2 [V] 自己放電

 最近進歩が著しい、ニッケル水素充電池の問題です。

[1]ニッケル水素電池の概要

 ニッケル水素電池は、(ニカド電池に比べて)容量が大きくカドミウムという環境負荷物質を使わないので、広く使われるようになってきました。動作は、電解液にアルカリ溶液を使うニカド電池と似ていますが、その名の通り、活性物質としてニッケルと水素を使うのですが、水素は金属ではないので、「電極」としては使えません。電極にするには「ある工夫」が必要になります。
 その工夫が、「水素吸蔵合金」と呼ばれるもので、金属の中に水素を取り込んでしまう、という不思議な性質を持ったものです。充電時の動作原理をFig.HG0704_aに、放電時の動作原理をFig.HG0704_bに示します。電解液は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムで、ニカドと同じです。
 以降、水素吸蔵合金はMという記号で示します。

[2]動作原理その1…充電時

 負極では、電源から与えられた電子と、水素吸蔵合金、それに水が反応して、以下のようになります。
Fig.HG0704_a ニッケル水素電池の動作原理…充電時
Fig.HG0704_a
ニッケル水素電池の動作原理…充電時
 M+H2O+e- → MHOH- …(1)
ここで、MHとは、水素吸蔵合金Mが水素Hを「吸蔵」したものであって、これらが化学反応を起こして「結合」したものではありません。このあたりは私もはっきりと詳しいことは分かっていませんが、「金属の水素化物」になってしまうと反応が不可逆になるので、ただ単に「溜め込んでいるだけ」と解釈して下さい。一方、正極で起こる反応は次のようになります。
 Ni(OH)2OH- → NiOOH+H2O+e- …(2)
これは、ニカド電池の正極の反応と全く同じです。定性的には、(1)と(2)を見ると分かりますが、
負極には水素が、正極にはオキシ水酸化ニッケルが生成する
水酸化物イオンOH-、充電の前後で数が変化しない
水は正極で生成して負極で消費されるので、増減しない
ということになります。

[3]動作原理その2…放電時

 反応はすべて充電時と逆になります。
負極では、
 MHOH- → M+H2O+e- …(3)
となり、正極では、
 NiOOH+H2O+e- → Ni(OH)2OH- …(4)
となります。充電時と全く逆です。
 反応の特徴としては、
・負極では、水素吸蔵合金から水素が解離し、水が生成する
・正極では、水酸化ニッケルが生成する
水は負極で生成して正極で消費されるので、増減しない
という点です。
Fig.HG0704_b ニッケル水素電池の動作原理…放電時
Fig.HG0704_b
ニッケル水素電池の動作原理…放電時

[4]ニッケル水素電池の特徴

 ニカド電池から、いろいろな点が改良されています。まずはその長所です。
電圧は1.2 [V]…ニカドと同じなので、互換性があります。
容量が大きい…一般に、ニカド電池の倍程度の容量が得られます。
メモリー効果がない…ニカドにあるような継ぎ足し充電によるメモリー効果がほとんどありません。
環境負荷物質を使っていない…カドミウム・水銀を使っていません。
繰り返し使用に強い…300〜500回繰り返して使えます。
過放電・過充電に強い…鉛蓄電池のように、過充電や過放電しても電池として用を成さなくなることがほとんどありません。
次に短所です。
充電時の発熱が大きい…充電時は終了が近づくにつれてかなり発熱します。
自己放電が大きい…ニカドに比べて自己放電が大きく、長期保存が利きません(但し、最近では半年置いても8割残るものも出ています)
低温に弱い…ニカドよりも改善したと言われますが、まだ低温で容量が減少します

それでは、解答に移ります。
 …ニッケル水素電池の陽極は、水酸化ニッケルです
 …ニッケル水素電池の公称電圧は1.2 [V]です
 …ニッケル水素電池の内部抵抗は小さく、大電流も取出せます
となりますから、正解はと分かります。