□ H18年08月期 A-02  Code:[HA1002] : 電磁気的な誘導による妨害を低減するためにケーブルに施す対策
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1808A02 Counter
無線工学 > 1アマ > H18年08月期 > A-02
A-02 次の記述は、電磁界の誘導の低減又はこれによる妨害の低減について述べたものである。このうち正しいものを下の番号から選べ。
高圧線からの電磁誘導を低減するため、通信ケーブルの敷設は、高圧線となるべく平行になるようにし、かつ、グランド面から遠ざける。
変圧器の一次側と二次側の静電誘導を低減するため、一次巻線と二次巻線の間に金属薄板等を挿入する。
有害な電磁誘導を低減するため、無線機器の線路構成には平行二線式給電線を使用し同軸線路や導波管は使用しない。
静電誘導による妨害を低減するため、通信ケーブルには金属シースを被(かぶ)せない。
高圧線等からの電磁誘導による妨害を低減するため、平行二線式給電線は、なるべく捩(よじ)らないように平行に配線する。

 有線で信号を伝送する場合、目的の信号を確実に伝送するため、途中で受ける外来ノイズには十分な対策を取る必要があります。我々の無線局もアンテナから左記は電波として飛ばしますが、有線で伝送するアンテナからリグまでには、ノイズ対策が十分でないと、せっかくの高利得なアンテナも無駄になってしまいます。
 この問題では、そんなノイズ対策のあれこれについて、非常に実践的な実例を元に問われていますので、是非マスターしてしまいましょう。

[1]ノイズ対策の3つのキーポイント

 まず、ノイズが混入するまでには、以下の3要素が必要です。

(1) ノイズ源が存在すること
これは当たり前すぎるかもしれません。世の中には様々なノイズ源が存在して、目的の信号に絶えず混入しようとしています。ある特定の発信源があって、その電源を止めてしまうことが可能なら、最も簡単で確実な対策となります。

(2) 伝搬経路が存在すること
ノイズ源と混入側の間に、ノイズが伝わる経路が存在することです。この経路を絶つかあるいは問題ないレベルまで減衰させることができれば、ノイズ対策は完了です。一般に、電源ラインなどから有線で伝わってくる経路と、電磁誘導等で空間を伝わってくるケースがあり、電子機器などのノイズ対策では前者にはラインフィルタや接地など、後者には各種シールドで対処します。

(3) 受信側にノイズの周波数に感度があること
これは案外見落とされがちですが、回路素子のスピードが非常に遅く、UHF〜SHFの高周波の妨害波に対して反応しなければ、発信源があって伝達経路があっても、被害はありません。しかしながら、近年ではこうしたケースは少なく、また、回路素子自体が低速であっても高周波に対しては非線形性を持ったりすることもあり、油断できません。

 ここまでの予備知識を得たところで、問題の内容を見てみると、ここでは主に、(2)の[伝搬経路を絶つ]対策を問われていることが分かります。

[2]伝搬経路を絶つための各論

(1) シールド(遮蔽)を設ける
 まず、低周波回路で使われるトランス等の静電シールドについてです。静電誘導を避けるため、トランスの一次側巻線と二次側巻線の間に、銅板等で静電シールドを設けることがあります。静電誘導が相手ですので、接地しないと効果がありません(Fig.HA1002_a左上)。また、このシールドは1ターンしてはいけません。1次側から見てショートした1回巻の2次巻線になりますから、スイッチを入れた途端、ヒューズが飛びます。
 静電シールドの他にも、鉄等の磁性体で作る磁気シールド、高周波回路の廻り込みに用いる電磁波シールドがあり、混入源の性質により使い分けます。
Fig.HA1002_a 様々なノイズ対策
Fig.HA1002_a
様々なノイズ対策

(2) ケーブルの引き廻しに注意する
 次に、電線の引き方です。高圧大電流の送電線などが近くにある場合、それに平行に信号線を長く引いてはいけません。高圧線の発生した電磁界が、もろに信号線を貫いてしまうからです。距離を離すか、どうしても引かなければならない時は、適切なシールドを(信号線側に)掛けます。
 我が家はカテゴリ6ケーブルで家庭内LANを引いていますが、松下電工のモジュラージャックの説明書には、「電灯線からは15cm以上離すこと」と書かれています。仕事でも、パルスモータの大電流が流れる配線とフォトインタラプタ(位置検出センサ)のケーブルを、機内で長距離束ねて敷線したため、トラブルになったケースもあります。

(3) ケーブル(伝送路)そのものの耐ノイズ性を上げる
 最後に、ケーブルに関する配慮です。問題に出てくるケーブル類(伝送路)を、外からのノイズ混入に弱い順に並べる(Fig.HA1002_a下半分)と、
 平行2線 < ツイストペア(撚り線) < 同軸ケーブル < 導波管
の順になります。
 平行2線は、最もノイズに弱い電線ですが、撚っただけでノイズに強くなります。これは、外から混入する電磁波が、隣り合う撚りの「目」に反対の起電力を生じさせ、打ち消すように働くためです。よく使われるネットワークケーブル(カテゴリ5〜6)の中身は、このツイストペアです。
 Fig.HA1002_aには載せていませんが、ツイストペアにシールドをかぶせたケーブルも存在します。ネットワークケーブルにもSTP(Shielded Twist Pair)ケーブルという、工場などノイズの多い場所で使用されるケーブルが売られています。
 一方、我々に馴染み深い同軸ケーブルは、(モノにも依りますが一般に)ツイストペアよりもノイズに強いです。理由は、外部導体がシールドの役目をしているためですが、価格の安いものは外部導体の編組が粗く、ノイズにも弱くなります。外部導体をより完全なシールドにするため、二重編組やアルミテープ、大出力用では銅パイプなどを用います。
 最後に、導波管を最強にしたのは、金属管ですから内部に電磁界が侵入しづらいことと、例え侵入したとしても、導波管にはカットオフ周波数があり、ある周波数以下は管内を伝搬できない、という2つの理由からです。

それでは、解答に移ります。
 …通信線を高圧線と平行に引くとノイズを呼び込むので誤りです
 …トランスの静電シールドの正しい入れ方の説明です
 …平行2線は同軸ケーブル等よりノイズに弱いので誤りです
 …静電誘導を防止するには金属シースは有効なので誤りです
 …平行2線は捩(よじ)った方がノイズに強くなるので誤りです
となりますから、正解はと分かります。