□ H18年04月期 A-04  Code:[HB0205] : 周波数が既知の正弦波交流の位相差と時間差の対応
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1804A04 Counter
無線工学 > 1アマ > H18年04月期 > A-04
A-04 周波数50 [Hz]の正弦波交流において、位相差π/6 [rad]に相当する時間差の値として、最も近いものを下の番号から選べ。
0.34 [s] 0.67 [s] 1.34 [ms] 1.67 [ms]


 交流の「位相」を角度と時間から問う問題です。予備知識として、周期波形1つ分の時間は「周期」で、単位は秒ですが、これを1周期で1回転する回転する円上の点にみたてて、角度で表したものが「位相(角)」です。「なんで時間が角度なの?」という疑問をお持ちの方は、三角関数と交流理論を紐解いてみて下さい。

[1]交流波形の位相とは何か

 説明はいまさら要しないかもしれませんが、交流、というのは「周期波形」です。同じ形の波が時間とともに何度も繰り返されている、という性質です。
 1秒間に何度繰り返されるか、が「周波数」であり、波の高さが「振幅」(ここでは最大値)です。どれも波の形が一つ描かれていれば、計測できるものです。
 ところが、「位相」というのは、2つの波形の時間差やある基準時間からの差がないと議論できないので、分かりにくいのです。繰り返し波形を一つ持ってきて「この交流の位相は?」という質問は成り立ちません。
Fig.HB0205_a 位相差と時間差
Fig.HB0205_a
位相差と時間差
 Fig.HB0205_aで説明すると、2つの波形の周期がそれぞれP [s]で、山の「頂上」で比較した場合、その時間差がQ [s]だとすると、位相差φ [rad]は、
 φ=(Q/P)×2π [rad] …(1)
 (又は(Q/P)×360 [度])
となります。普通、電気の世界で位相を表す場合は360 [度]が2π [rad]の弧度法を用いますので、この表現に慣れて下さい。
 なお、ここでは波形の「山の頂上」で比較しましたが、「谷底」でも上昇又は下降方向のゼロクロス点同志で比較しても、全く同じ議論です。
 「位相」は、2つの波形が半周期分ずれたタイミングで存在する時、180度(又はπ [rad])の位相差、1周期分ずれている時は「360度(又は2π [rad])の位相差」といいます。また、一つの波形で議論する時は、波形上の一点を取り、次の周期の同じ点までの位相差を「360度(又は2π [rad])の位相差」と言います。要するに、ある波形と波形の時間差、あるいは同じ波形でも基準からの時間差を周期で割って角度にしたものが「位相差(又は位相)」ということになります。
 但し、一般に位相は周波数(周期)の異なる波形間では定義されません。周波数が異なる、ということは時間スケールが異なっている、ということで、比較できないからです。
 この問題のように、周波数と位相差が分かっていて、絶対的な時間差を求める場合、まず、周波数f [Hz]の交流の周期P [s]を求めます。
 P=1/f [s] …(1)
また、周期Pが2π、求める時間差Q [s]と位相差φ [rad]は比例関係にあるので、
 P:2π=Q:φ …(2)
 Q=P×(φ/2π) …(3)
となります。
 逆に、周波数と時間差が分かっている二つの信号の位相差も(2)式から簡単に求められます。

[2]なぜ周波数や周期を用いないのか?

 「周波数」や「周期」は時間軸さえ目盛りが振られていれば、直接読み取ることができますので分かりやすいものです。位相は周期で割るという「正規化」をかけているため、直感的に分かりづらいのです。しかし、位相を用いれば、周波数がどんな値でも絶対値([ms], [μs], [ns], [ps]…)で議論する必要がなく、波の性質を良く表現できるために用いられます。
 例えば、フィルタに交流信号を通す時、位相遅れが生じます。同じ性質を持ったカットオフ周波数が10倍異なる2つのフィルタがあったとして、両者の遅れ時間を絶対時間である、秒で議論すると値が10倍違いますが、位相で議論すれば同じ値になります。同じ性質を持ったものは、周波数が違っても、同じ数値で議論したいですから、位相で表記する方が便利です。

それでは、解答に移ります。
 能書きはさておき、この問題で問われているのは、50 [Hz]の正弦波で、位相差π/6に相当する時間はいくらか、ということです。
 問題の数値、P=20 [ms]、φ=π/6 [rad]を(3)式に代入すれば、
 Q=1.666… [ms]
と求められますから、正解はと分かります。

 ここからは余談ですが、この問題、選択肢をよくご覧下さい。一方は秒のオーダー、片やミリ秒のオーダーで桁が全然違いますね。普段自作や仕事で電気信号を扱う機会がある方はもちろんのこと、そうでない方もこの違いにはお気づきでしょう。
 これだけ違うと、いきなり選択肢が半分に絞れてしまいます。どう間違えても50 [Hz]の信号の位相差が1周期(20 [ms])より小さいπ/6なのに、それより大きな数になりようがありません。あまり本質的ではありませんが、上記のような面倒な計算をしなくても、π/6=30°分かれば、20 [ms]×(30/360)で、1.67 [ms]とほぼ暗算で出せる問題ですから、明らかに間違いな選択肢は、見たらすぐに消してしまいましょう。