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■ 無線工学を学ぶ
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(1) 無線工学の基礎
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2022年 |
12/31 12月期問題頁掲載 |
09/01 08月期問題頁掲載 |
05/14 04月期問題頁掲載 |
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無線工学 > 1アマ > H17年12月期 > A-09 |
A-09 |
図に示す回路の名称として、正しいものを下の番号から選べ。
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1 |
スケルチ回路 |
2 |
平衡変調回路 |
3 |
フォスターシーリー形周波数弁別回路 |
4 |
レシオ(比)検波回路 |
5 |
2同調形検波回路 |
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Fig.H1712A09a
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ここで問われているのは検波or復調回路についてですが、特に周波数変調(FM)の復調回路がよく出題されます。まずは、FMの復調回路にどんなものがあるかを眺めてから、解答に入りましょう。
[1]2同調検波回路
同調回路(中身は共振回路)の周波数特性を思い出して下さい。ある(直列でも並列でもよい)共振回路に高周波電圧を加えてゆくと、共振周波数において電流が最大又は最小になりました。 では、周波数を上げて行くor下げて行くその「途中」はどうなっていたでしょうか?
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Fig.HD0501_a 2同調検波回路の構成
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周波数と共に、電流(又は共振回路を構成する素子の両端の)電圧が周波数と共に変化しませんでしたか? これはまさに「周波数の変化が(電流または電圧の)変化に変換される」というFMの復調そのものの働きではないでしょうか? これをうまく利用したのが、同調検波器です。共振回路が1つでもこの効果は認められますが、2つにして共振周波数をずらし、かつ、互いに逆極性の電圧が出るようにしておくと、中心周波数からの変動に対して正負の出力が得られます。
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これがFig.HD0501_aの2同調形検波回路です。入力には同調回路1があり、比較的広い周波数範囲で共振します。共振周波数はfcとします。この共振回路のLがトランスを構成し、2次側にもLが磁気的に結合した同調回路が2つあって、それぞれの共振周波数がf1とf2(但し、f1>fc>f2で、f1−fc=fc−f2)となっています。
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Fig.HD0501_b 2同調検波回路の動作
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共振回路3は、共振回路2に対して逆極性の電圧が発生するように、トランスを工夫しておきます。すると、この2つの共振回路を合成した特性は、Fig.HD0501_bのように、中心周波数fcを中心にした周波数の変化が、電圧の変化となって出力されます。周波数のシフトが大きくなりすぎると、合成回路の特性は非直線になりますから、最大周波数偏移時でもf2〜f1の中に収まるようにしなければなりません。 D1, C4, R1やD2, C5, R2は包絡線検波器を構成していますから、出力されるのは低周波成分のみとなります。
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ここで調べた、共振回路の「すそ」の特性が「周波数変化を振幅変化に変換する」というのが(アナログ的な)FM検波では基本になっています。
[2]フォスター・シーレ検波回路(フォスター・シーリー回路とも)
もう一つ、共振回路にその共振周波数から少しずれた信号を入れると、出力の位相が周波数の偏移量に応じてずれるという現象を利用した検波回路です。フォスターさんとシーレさんが発明した、というのでこの名前がついています。
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この回路は、Fig.HD0501_cのように構成します。中間周波入力は左の端子で、検波出力が右の端子に得られます。入力部は磁気的に結合したL1とL2で2つの共振回路を組みます。この2つの共振回路は、いずれも中心周波数fcに同調させます。一方、一次側から十分大きな容量を通して二次側のセンタータップに加えると同時に、2つの包絡線検波回路(D1, C4, R1やD2, C5, R2で構成)のコモンに加えます。 この回路は、Fig.HD0501_c下の等価回路にあるようなモデルで描くことができます。
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Fig.HD0501_c フォスター・シーレ検波回路の構成
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つまり、L2側に生じたv1/2にL3を通して加わる、位相がπ/2ずれたviが加算される格好です。
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中心周波数でのベクトル図を描けば、同図右下のように表せます。(以下、この図で示すviはL3に生じている電圧です。) D1側に生じたv1/2はviよりπ/2進み、D2側に生じたv1/2はviよりπ/2遅れます。 この周波数では、D1側の出力電圧ベクトルvo1とD2側の出力電圧ベクトルvo2は大きさが等しいので、出力電圧voはゼロです。この様子は、Fig.HD0501_dの真中の図で示してあるものと同じです。 f<fcに偏移した時は、Fig.HD0501_dの上に示されたように、viを基準にすると、D1側が遅れ、D2側が進みます。このようになると、|vo1|<|vo2|となるので、出力は負になります。 f>fcに偏移した時は、Fig.HD0501_dの下に示されたように、上とは全く逆の理屈で、|vo1|>|vo2|となるので、出力は正になります。 この検波回路の特徴としては、振幅制限作用がないことです。各電圧ベクトルが振幅変動を起こせば、即ちベクトルの長さが変化すれば、出力電圧の大きさも比例して変動してしまいます。このため、前段に振幅制限器を置くことが必須になります。
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Fig.HD0501_d フォスター・シーレ検波回路の動作
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この回路の「ミソ」は、入力の周波数がズレると、二次側の共振回路の誘導電圧の位相がズレることと、入力側の基準電圧をベクトル的に合成して差を取る、という工夫にあると思います。私にはこんな回路、とても思いつきません。
[3]比(レシオ)検波回路
この回路は、上に挙げたフォスター・シーレ回路の改良形になります。フォスター・シーレ回路では、特徴にも書いたように、振幅制限作用がありませんのでここが改良の対象です。
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Fig.HD0501_e 比検波器の構成と動作
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回路図Fig.HD0501_eを見ていただくと分かりますが、よく見ないとフォスター・シーレ回路と見分けがつきません。 大きな違いとしては、D2が逆向きであること、(定数は入っていないが)大容量のC6とC7やR3が追加されていること、また、R3の両端から電圧を取り出していることです。 ベクトル図で書くとほとんど同じですが、異なるのは包絡線検波した後の電圧のかかり方です。D1側に生じた整流出力v21とD2側に生じた整流出力v22の和がv2となっているとします。
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この時、入力の周波数(または位相)が変化せず、振幅だけが変動したとすると、R3の両端にかかる電圧は、C3とR1やR2が作る時定数が十分長いため、ほとんど変化しません。つまり、この回路は振幅制限(リミッタ)作用があるので、フォスター・シーレ回路には必要だった、前段のリミッタを省略できます。
それでは、解答に移ります。
まず、問題の回路図を見て選択肢のうち、この回路がスケルチ回路や平衡変調回路でないことは明らかですね。スケルチなら増幅を止める機構が、平衡変調なら信号入力と搬送波入力の2つの入力がそれぞれなければなりません。 残りは上に掲げた3回路のうちのどれか、ということになりますが、ここまで読まれた皆さんはもうお分かりの通り、4の比(レシオ)検波回路です。フォスター・シーレ回路との違いは、検波ダイオードの向きと信号の取出し位置にある抵抗です。
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