□ H17年08月期 B-05  Code:[HJ0401] : スペアナとオシロを、その機能と測定対象で対比
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1708B05 Counter
無線工学 > 1アマ > H17年08月期 > B-05
B-05 次の記述は、オシロスコープ及びスーパヘテロダイン方式スペクトルアナライザについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。
(1) スペクトルアナライザは、信号を構成する[ア]を観測できる。
(2) オシロスコープは、信号の[イ]を観測できる。
(3) オシロスコープの表示器の横軸は時間軸を、また、スペクトルアナライザの表示器の[ウ]は周波数軸を表す。
(4) スペクトルアナライザは分解能帯域幅を所定の範囲で任意に変えることが[エ]。
(5) 感度が高く、より弱い信号レベルの測定ができるのは、[オ]である。
波形 縦軸 できない オシロスコープ 周波数成分
ごとの振幅
占有周波数帯幅 横軸 できる スペクトル
アナライザ
10 周波数成分
ごとの位相

 オシロスコープ(以下「オシロ」と呼びます)とスペクトルアナライザ(以下、「スペアナ」と呼びます)は、時間変化する信号をグラフィカルに測定する、という点では共通ですが、表示する内容が全く異なります。

[1]時間波形を観測するためのオシロスコープ

 スペアナよりはオシロの方がポピュラーな測定器でしょう。オシロは、信号の時間的な変化を測定するための測定器です。昔からあるアナログオシロは後に示す構成で、表示部がCRT等でできていますが、最近のものは、入力信号をA/D変換してメモリに蓄積し、それを液晶画面などに表示するデジタルオシロも多くなっています。ここでは、表示器にCRTを用いたアナログオシロについて説明します(CRTの原理は既知としています)。
Fig.HJ0401_a オシロスコープの構成
Fig.HJ0401_a
オシロスコープの構成
 Fig.HJ0401_aにその基本的な構成を示します。測定する信号は、プローブと呼ばれるピックアップ部分を経て、入力の広帯域アンプで増幅されます。増幅された信号は、一方は垂直軸アンプに入ります。ここでは、表示器で必要な垂直軸方向の電圧に増幅されます。
 他方は、トリガ回路に入ります。トリガ回路では信号があるレベルを「上回った」あるいは「下回った」という比較をして、条件を満たす時に、次段の掃引発信器に対してスタートパルスを発生させます。
 「トリガ」というのは「(銃等の)引き金」という意味ですが、オシロでは横軸(時間軸)のスタートを与えるタイミング信号の意味で使われます。実際のオシロでは、このトリガ条件を複雑に組合せたり、可変のディレイ(遅延)をかけたり、複数チャンネルを表示させるためのトリガモードを持っているものなど、目的に応じて工夫されています。また、外部からのトリガ入力を持ったものもあります。
 トリガ回路からスタートパルスを受けた掃引信号発生器では、一発のノコギリ波を発生させます。このノコギリ波の1周期の時間は、時間軸設定のスイッチなどによって可変になっています。掃引信号のノコギリ波は、水平軸増幅器に入り、表示器の水平方向のスキャン電圧まで増幅されます。
 ここまでで、CRTで表示に必要な信号は揃いました。時間とともに輝点を横方向にスキャンするノコギリ波信号信号の振幅に応じて縦方向の輝点の位置を決める垂直信号です。これらを同時にCRTに加えると、信号の時間波形が表示される、というわけです。

[2]周波数成分分析を行なうためのスペクトルアナライザ

 オシロスコープは横軸が時間で縦軸が振幅の「波形」を観測する測定器でしたが、スペアナは、横軸が周波数で縦軸が振幅の「周波数スペクトル」を観測する測定器です。これを扱うには、少し予備知識が必要です。
 それは、「任意の(周期)信号は周波数と振幅の異なる正弦波の合成として表される」という法則です。例えば、HFの送信機が動作した時に、TVIが出るような現象は、送信出力がきれいな正弦波ではなく歪んでいて、基本波の整数倍の正弦波(高調波)成分が含まれているからです。また、デジタル信号などの矩形波や弦楽器の音などは、基本波の数10倍程度までの非常に広い範囲の高調波成分を持っています。
 このように、スペアナは、ある信号がどのような周波数と振幅を持った成分でできているのかを表示してくれる測定器です。
 では、そのスペアナの構成を見て行きましょう。スーパーヘテロダイン方式と呼ばれているスペアナの構成をFig.HJ0401_bに示します。スーパーヘテロダインという名前といい、構成の中にVCOや周波数混合器、帯域フィルタ等があって、まるで受信機のブロック図のようです。実は、まさにこの動作は狭帯域フィルタを実装した受信機の動作とほとんど同じなのです。
 では、入力から順を追ってその動作を見て行きましょう。
 まず、入力端子に入った被測定信号は、LPF(低域フィルタ)で不必要な高周波成分をカットします。
Fig.HJ0401_b スペクトルアナライザの構成
Fig.HJ0401_b
スペクトルアナライザの構成
 これは、高周波成分があると、エリアジング(エイリアシング)と呼ばれる偽信号が帯域内に入ってきて観測されてしまうためです。
 掃引発振器は、常にノコギリ波を発振しています。この発振器は一般に、オシロの場合と違い、トリガ入力は必要なく、入力信号とは独立に動作しています。このノコギリ波は、次段のVCO(電圧制御発振器)に入ります。VCOは入力電圧に応じた周波数の正弦波を発振する発振器です。これにノコギリ波を入れる、ということは時間とともに周波数が直線的に高く(又は低く)なって行き、ある周波数まで至ると、また元の周波数に戻って変化し始める、という動作を繰り返すことになります。VCOの出力は、歪みのない(きれいな)正弦波である必要があります。
 入力と、時間的に変化する正弦波を周波数混合器に入力すると、両者の周波数の和と差の成分が出力に現れます。このうち、どちらかを次段の帯域フィルタで選別します。この帯域フィルタは通過帯域幅が可変になっていて、この帯域幅を変えることによって、測定するスペクトルの周波数分解能が決まります。
 スペアナのキーとなる本質的な動作はFig.HJ0401_bのピンクのブロックでほとんど全てが完了します。この部分では、入力の信号から、VCOの発振周波数と一定の差の周波数を持った成分のみを抜き出しているのです。これは、まさに相手局の信号のみを選び出す受信機の動作と同じです。
 さらにその後もほとんど受信機と同じ動作が続きます。帯域フィルタの出力は、フィルタの中心周波数を中央に持つ中間周波数ですから、これを一旦増幅した(中間周波数増幅器)あと、検波して表示に必要な電圧まで増幅すればよい、ということです。
 一方、横軸は周波数ですが、掃引発振器の出力を水平軸アンプで増幅してやれば、これで表示に必要な出力は揃いました。あとは、CRTにこれらをそれぞれ垂直軸と水平軸の入力に加えてやれば、横軸に周波数、縦軸にその成分の強度、すなわち周波数スペクトルが表示される、という仕組みです。
 その昔、リグの周波数ダイヤルを一定速でモーターで回し、CWフィルタの思い切り狭い帯域のを入れて、バンドの下から掃引させてAF出力の振幅をペンレコに描かせれば、それが立派なスペアナだ、と言った先輩がいましたが、当時、動作が分からなかった私には目からうろこでした。

[3]スペアナの特徴

 スペアナの特徴としては、まず、振幅の感度がオシロよりも格段に高いことが挙げられます。オシロでは、輝線を目で確認しますが、縦軸フルスケール=1に対して波形の輝線はどんなに頑張っても1/100(=40 [dB])以上に細いのを見たことがありません。つまり、弱い信号は線の太さの中に埋もれてしまいます。
 これに対して、スペアナは相当ダイナミックレンジの悪いものでも60 [dB]は取れますし、普通のものは80〜100 [dB]は取れます。つまり、最大信号がレンジいっぱいの0 [dB]だったとして、-60 [dB](1/1000)以下の振幅の周波数成分でも検出できる、ということです。

[4]デジタルなスペクトルアナライザ…(余談)

 余談になりますが、オシロがアナログからいろいろな機能を持ったデジタルオシロに置き換わっているのと同様、上記[2]のようなアナログなスペクトルアナライザも減っています。代わりに台頭してきたのが、デジタルなスペアナ、とも言うべきFFT(高速フーリエ変換)を応用したスペアナです。
 中間周波数以降でA/D変換して、そのデータ列にFFTという処理をすると、アラ不思議、出てきたデータがそのままスペクトルデータなのです。フーリエ変換というのは、実時間波形から周波数成分への変換ですが、デジタルの実時間データに対して「ある処理」をして計算量を減らし、高速に実時間→周波数変換を行なうものです。
 フーリエ変換では、出力される結果が振幅だけでなく、位相も得られます。これを応用したものが、ベクトルアナライザといわれ、携帯電話等のデータ通信で用いられている位相変調波の解析等に用いられます。

それでは、解答に移ります。
 …スペアナの機能は、5周波数成分ごとの振幅を測定することです
 …オシロでは、時間1波形を観測します
 …スペアナの7横軸が周波数軸を示します
 …スペアナの分解能帯域幅はある範囲で任意に変えることが8できる
 …感度が高い測定器は9スペクトルアナライザの方です
となります。