□ H17年08月期 B-03  Code:[HF0703] : 受信機の選択度とIFTの特性。通過帯域幅・単峰特性と双峰特性
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1708B03 Counter
無線工学 > 1アマ > H17年08月期 > B-03
B-03 次の記述は、受信機の選択度及び中間周波変成器について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。
(1) 選択度は、通過帯域内の周波数特性が[ア]であり、通過帯域の両端では[イ]の大きい特性が求められる。
(2) 中間周波変成器で一般に用いられるものは、一次及び二次側に同調回路を持つ[ウ]形である。この同調回路による中間周波帯域の周波数特性を大きく分けると、[エ]及び双峰特性があり、双峰特性の中間周波変成器は、通過帯域幅を十分広くして[オ]を良くすることができる。
忠実度 円形 感度 複同調 結合度
単峰特性 平坦 増幅度 減衰傾度 10 単一同調

 受信機の選択度と、中間周波変成器(中間周波トランス。以下、IFT)の特性についての問題です。カタログスペックを読むのにも役立ちますから、マスターしてしまいましょう。

[1]受信機の選択度とは何か

 まず、受信機の選択度についてです。我々が選択度について話す時には「フィルタの切れがいい」とか、「スカート特性がシャープだ」とかいう言い方をします。選択度、というのは、帯域外の他の電波を受けない程度のことをいうのですが、「フィルタの切れ」とか「スカート特性」というのは何のことでしょうか?
Fig.HF0703_a 減衰傾度・シェープファクタ
Fig.HF0703_a
減衰傾度・シェープファクタ
 Fig.HF0703_aに中間周波(IF)フィルタの特性の例を示します。本当は「受信機の選択度」といった場合、同調回路などの周波数選択性のある回路を全て含めた、オーバーオールの特性を言いますが、アマチュアの無線機の場合はIFフィルタの特性でほぼ決まりますので、これを挙げています。
 帯域内のわずかな減衰量の周波数変化Fは「帯域内リプル」といい、あまり大きいと、周波数によって位相がずれますので、PSKなど位相変調系の受信には注意が要ります。帯域内の平均減衰量Aから6 [dB]落ちたところの幅Bを6dB帯域幅といいます。さらに60 [dB]下がったところの帯域幅Dを60dB帯域幅といいます。
 「減衰傾度」というのは、帯域内から帯域外に遷移する部分の傾きを言います。この傾き(の絶対値)が大きいほど、帯域外の信号がシャープにカットされる、というわけです。
 また、同じような指標として、「シェープファクタ」というものも定義されます。これは6dB帯域幅Bと60dB帯域幅Dの比です。この値が1に近ければ近いほど、スカートの部分が垂直に近い(減衰傾度が大)というわけで「スカート特性がよい」ということになります。
 受信機の選択度を上げる方法は、以下のようなものがメインです。
  • 同調回路のQを大きくする
    Qを大きくすると、共振曲線が急峻になりますから、減衰傾度が大きくなります。

  • 同調回路・フィルタを多段に接続する
    多段接続では、帯域内の信号は低い減衰に留め、帯域外の減衰のみをどんどん増加させることができるためです。
 クリスタルフィルタなどでシェープファクタが1に近い物は、中のQが非常に大きいものを多段接続したりしています。あまり多段に接続すると、減衰が増えるので、効果とのトレードオフになります。

[2]中間周波トランスの単峰特性・双峰特性と結合度の関係

 IFTのように、同調回路が2つ(以上)あって、コイルが結合しているものを、複同調回路といいます。1次側のコイルのインダクタンスとQをそれぞれL1,Q1、2次側のそれをL2,Q2、相互インダクタンスをM、結合係数をk(=M/√(L12))として、
 結合指数 S=k√(Q12)
というものを考えます。詳しく計算すると、結合の疎密によってこの複同調回路の伝達特性が変わり、Sの大きさによって周波数特性の形が大きく2通りあることが分かります。詳しい解説はプロの無線工学で出てきますが、ここでは現象のみの説明にします。

(1) S<1 の場合
 k<1/√(Q12) となります。kが小さいということは、2つの同調回路の結合が「疎」、ということです。この場合、伝達関数(利得といってもいい)の周波数特性の「山」は1つになります。この特性を「単峰特性」といい、狭帯域な周波数特性が得られます。この様子をFig.HF0703_bの左に示します。

(2) S=1 の場合
 S<1から結合を密にして行き、S=1になったとします。この場合も、伝達特性の「山」は1つで、単峰特性となります。

(3) S>1 の場合
 結合が密になった状態です。この場合、伝達特性が2つの山を持つようになるため、双峰特性と呼ばれています(Fig.HF0702_b右)。
 この特性では、中心周波数f0で特性が極小値を持ちます。山の間隔f2−f1はSが大きくなるほど大きくなります。すなわち結合が密になるほど山の間隔が開いて行きます。
Fig.HF0703_b 単峰特性と双峰特性
Fig.HF0703_b
単峰特性と双峰特性
 このように、IFTは結合度を調整することで、帯域幅が調整できます。HFをやっていると、増幅段間の伝達は、SSBやCWなど狭帯域なモードに合わせて狭い方が良い(ノイズが減る、あるいは、近接周波数混信が減る)と考えがちですが、高い方の周波数ではFMなど広帯域なモードもあります。このようなモードに狭帯域な単峰特性のIFTを持ってきてしまうと、復調に必要な周波数成分までカットされてしまい、忠実度が下がり(音声なら「変な声」になる)ます。このようなモードには、密結合した広帯域のIFTで、周波数成分が損なわれないように設計する必要があります。
 余談ですが、送信機のスプリアスを防ぐ問題の選択肢に必ずといっていいほど出てくる誤りの選択肢、「送信段とアンテナ回路の結合を密にする」があります。この問題で見たように、結合を密にすると帯域が広がるため、終段回路のひずみで生じた送信周波数に近いスプリアスも通り抜けてしまいますから、この選択肢は誤りなわけです。

それでは、解答に移ります。
 …帯域内の特性は7平坦であることが望まれます
 …帯域の両端では9減衰傾度が大きいことが望まれます
 …通常IFTに用いられるのは、4複同調形です
 …複同調回路は、結合度により6単峰特性と双峰特性があります
 …通過帯域の十分広いIFTでは1忠実度が良好になります
となります。