□ H17年08月期 A-08  Code:[HD0104] : 雑音指数についての説明・計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1708A08 Counter
無線工学 > 1アマ > H17年08月期 > A-08
A-08 図に示す増幅回路において、入力端子に入る信号電力をSI、このとき同時に入る雑音電力をNI、また、出力端子から出る信号電力をS0、このとき同時に出る雑音電力をN0とするとき、この増幅回路の性能を示す雑音指数(NF)を表す式として、正しいものを下の番号から選べ。
NF=(SI・NI)/(S0・N0
NF=(S0・N0)/(SI・NI
NF=(S0/N0)/(SI/NI
NF=(SI/NI)/(S0/N0
問題図 H1708A08a
Fig.H1708A08a

 V・UHFでDXを狙っている方が良く使うプリアンプの最も重要な特性に、NF(雑音指数又はノイズフィギュア)というものがあります。この問題は、その意味について問うています。

[1]増幅回路の雑音(ノイズ)とは?

 まず、この問題を解く前に、増幅回路の雑音について考えてみます。雑音指数の定義式を暗記してしまえば、問題はすぐに解けてしまいますが、意味も分からず暗記しても、すぐ忘れてしまいます。他の問題にも役に立つ、増幅器と雑音について考えておくことが、結局は早道です。
 増幅回路(アンプ)の雑音(ノイズ)を考える場合、入力には信号分Siとノイズ分Niが混じっています。すなわち、入力信号のS/NはSi/Niです。
 今、アンプの利得がα倍だとすると、出力の信号分So
 So=αSi …(1)
となります。入力のノイズもまたα倍されますから、αNiのノイズ分が出てきます。出力のノイズを計算するには、これだけでいいように思われますが、アンプ自身もノイズを発生することを忘れないようにしなければいけません。
Fig.HD0104_a 多段アンプとノイズの増幅
Fig.HD0104_a
多段アンプとノイズの増幅
 実際の送受信機等やオーディオアンプでは、Fig.HD0104_aのように多段でシステムを構成しますが、一気に見てしまわないで、1段ごとに考えてみましょう。
 まず、アンプ自身が発生するノイズをNEとすると、出力のノイズ分Noは、
 No=αNi+NE …(2)
(この式は正確ではありません。正確には√{(αNi)2+NE2}でなければなりませんが、ここでは、「ノイズは単純に足されるもの」というように考えます。)となります。ここで、入力信号のS/Nと出力信号のそれを比べてみると、
 [入力] Si/Ni > αSi/(αNi+NE) [出力] …(3)
 つまり、(3)式からは、(アンプ自身のノイズがゼロでない限り)アンプを通って出てきた信号のS/N比は、必ず入力のS/N比よりも小さくなることが分かります。アンプは、(ノイズのみをフィルタリングする機能を持たせない限り)入ってきた信号もノイズも区別なく増幅するので、S/N比は変わらないはずですが、アンプ自身の発するノイズ、という厄介なものを抱えているため、出力のS/Nは入力のS/Nよりも悪くなってしまう、ということです。
 UHF帯などで、ノイズすれすれの信号を拾っている場合、いくら途中の段でゲインを上げても、S/Nは良くなりません。高周波増幅段で発生した雑音も増幅してしまうからです。これを防ぐには、フロントエンド(受信機の最もアンテナに近い)のアンプ自身が発するノイズが、徹底的に少なくなるようなデバイスを選択する以外にない、と(3)式は言っているのです。

[2]雑音指数(ノイズフィギュア、NF)とは?

 では、この「S/N比が劣化してしまう度合い」はどうやって示せばよいでしょうか? 実は、高周波や広帯域アンプでよく聞く「雑音指数」とはまさにこの「入出力でS/Nが劣化する度合い」なのです。その定義は、以下の通りです。
 NF=(入力のS/N比)/(出力のS/N比)
   =(i/Ni)/(o/No) …(4)
 電気の世界では、S/N比はデシベルで表すことが多いので、雑音指数もデシベルで表すことがほとんどです。(4)式の対数を取れば、
 20logNF=20log(Si/Ni)20log(So/No) …(5)
となります。赤字は出力のS/Nのデシベル表示、青字は入力のS/Nのデシベル表示ですから、デシベルで表した雑音指数は、入出力のS/Nの差、ということになります。
 多段で構成されたアンプの場合は、各段でのS/Nの劣化の合計、ということになります。

[3]半導体等で生じるノイズの種類

 半導体を始め、電子回路には「本質的な」ノイズが生じます。ここで、本質的な、と言っているのは、例えばスイッチング電源のような、人間がある程度制御し得るものではない、という意味です。つまり、半導体や導体の原子・電子レベルで生じるものであって、高性能なデバイスと優秀な回路設計をもってしても、ゼロにはできない(減らすことはできますが)性質のものです。
 以下にその例を挙げます。

熱雑音ショットノイズ、ジョンソンノイズとも呼ばれます。絶対零度でない抵抗を持つ物体から発生します。抵抗値が大きいほど、ノイズ電圧も大きくなります。スペクトル的には平坦で、ホワイトノイズの一種です

バーストノイズポップコーンノイズとも言われます。突発的なノイズバーストがランダムな時間間隔で生じるもので、ポップコーンがはじけるようなものであることからこう呼ばれます。真の原因は解明されていません

1/fノイズフリッカノイズとも言います。半導体内部のエネルギー準位の乱れ(不純物、格子欠陥等)で起こると言われており、電流を流さない限り生じませんスペクトルは1/f特性(ピンクノイズ)で、ゲインの大きい小信号のDCアンプでは大きな問題になります

それでは、解答に移ります。
 (4)の定義式と問題の選択肢を見比べれば、が正解と分かります。間違っても[入力信号×入力ノイズ]等の選択肢を選ばないようにして下さい。