□ H17年04月期 B-02  Code:[HA0102] : 熱電子放射現象のメカニズムの説明とその応用例
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1704B02 Counter
無線工学 > 1アマ > H17年04月期 > B-02
B-02 次の記述は、電子の放射現象について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。
(1) 真空中で、金属又はその酸化物を[ア]すると、内部の[イ]運動が活発になり外部に飛び出す。
(2) (1)の現象を[ウ]現象という。この現象を利用したものに[エ]などの[オ]がある。
SCR 二次電子放射 自由電子 陽極 冷却
ブラウン管 陰極 正孔 加熱 10 熱電子放射

 金属やその酸化物を加熱した時に、電子が放出される現象を「熱電子放射」といいます。ここではその原理と応用について解答します。

[1]熱電子放射の発生原理

 まず、金属を例に取ります(金属酸化物は一般に絶縁体ですが、熱電子放射に関しての原理はほぼ金属と同じです)。
 常温の金属内(Fig.HA0102_aの左)では、電子が金属原子の周囲を自由に動き回っています。ですが、「勢い余って」金属の表面から飛び出してくるものはほとんどありません。理由は、電子の運動が、「仕事関数(work function)」と呼ばれる、表面から飛び出すために必要な運動エネルギーの閾値を超えないため、外に出られない状態だからです。
 この金属をどんどん(融けない程度に)加熱して行くと、中の電子の運動が次第に活発になり、ついには仕事関数を超えるものが出始めます。
Fig.HA0102_a 熱電子放射の原理
Fig.HA0102_a
熱電子放射の原理
 すると、そのような「元気の良い」電子は表面を飛び越えて金属の外に出ることができるようになります(Fig.HA0102_aの右)。これが熱電子放射です。ちなみに、金属の中の電子は、皆同じ速度で運動しているのではなく、ある平均値を持って、向きはランダムに運動しているので、全ての電子が外に飛び出てくるわけではありません。ただ、温度を上げれば上げるほど、飛び出す電子の割合は増えます。

[2]熱電子放射の応用…最近劣勢です

 このようにして出てきた電子に、金属が負に、外部の電極が正になるように電界を加えてやれば、電子は電界の向きに加速され、さらに大きなエネルギーを持ちます。これを蛍光体に当てて蛍光体を光らせれば、これがすなわちCRT(ブラウン管)、電子が陽極に向けて「飛行」する途中の電界を変化させて、流れる電流を制御できるようにしてやれば、これがすなわち電子管(真空管)ということになります。
 モバイル機器をはじめとした低消費電力化・小型化の流れの中で、熱電子放射は本質的に「加熱」が必要なのと、出てきた電子を加速するための「高電圧」が必要なため、不利になってきています。真空管はすでにオーディオ愛好家と高周波大電力管(進行波管等)など以外には使われなくなりましたし、オシロスコープでさえ最近では画面は液晶のものが多くなってきました。

それでは解答に移ります。
 …文脈から9加熱です
 …加熱で飛び出すのは3自由電子です
 …文章のような現象は10熱電子放射現象といいます
 …熱電子放射は電子管や6ブラウン管等に応用されています
 …熱電子が放射されるのは7陰極です
ということになります。

 ここからは余談ですが…
 金属やその酸化物には、光を当てたり、外部で非常に大きな電界を掛けたりすることでも電子が飛び出します。要は、電子に仕事関数以上の大きなエネルギーを与えてやればいいわけで、選択肢の中にある、光電子というのは、光を当てた時に出てきた電子をいいます。
 それと、閾値のエネルギーは金属等の物質の種類で決まる「定数」なのに、何故、仕事「関数」というんでしょうか? functionの誤訳? いまだにナゾです。