□ H17年04月期 A-02  Code:[HA0601] : 絶縁材料として用いられる材料の特性
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1704A02 Counter
無線工学 > 1アマ > H17年04月期 > A-02
A-02 次の記述は、電気機器に使用される絶縁材料について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
絶縁材料は電気の絶縁に利用されるほか、コンデンサの誘電体としても用いられる。
絶縁材料に必要な性質は、絶縁抵抗が大きく、絶縁耐力が高いことである。
一般に非電離気体の抵抗率はほとんど無限大で、空気も優れた絶縁材料である。
絶縁材料に必要な性質は、吸湿性がなく、使用温度に十分耐えることである。
絶縁材料に必要な性質は、比誘電率が大きく、電気的損失が大きいことである。

 電気を実質的に通さないものは「絶縁体」なわけですが、これを積極的に利用しようとすると、利用目的と物性の違いにより長所短所が出てきます。これをまとめてみました。

[1]絶縁体の特性 その1 電気的特性

 まず、絶縁体に求められる特性のうち、電気的特性のみをまとめてみました。
特性値
用途と望ましい性質
材料の例
抵抗率
「絶縁体」の名の通り、電気を通さない性質。可能な限り抵抗率は大きいこと。
 インピーダンスの高い高精度アナログ回路に用いる場合は、漏れ電流が少ないこと。空気などの非電離気体の抵抗率はほとんど無限大である。
高圧線碍子
電線被覆(塩ビ)
テフロン端子
プリント基板材料
絶縁耐力
高圧をかけても絶縁破壊を起こさない性質。普通、絶縁破壊するかどうかはある電界強度の閾値を超えるかどうかで決まる。利用する電圧範囲と安全を見込んだ範囲で絶縁を保てること。高圧の場合、人命に関わるので重要。
高圧碍子
高圧用コンデンサの誘電体
誘電率
コンデンサの誘電体として使用する場合に特に重要。誘電率の絶対値のみでなく、回路によっては周波数特性が良いこと、誘電吸収が少ないことなどの特性が重要となる場合が多い。
コンデンサの誘電体
(セラミック・プラスチックフィルム等)
 
 上の誘電率の項目で、「誘電吸収」という用語が出てきますが、これについて簡単に説明します。
  • 誘電吸収
     コンデンサで考えた場合、交流を印加しても、電流は流れますが、その位相が電圧と90度ずれるため、電力を消費しないはずです。しかし、実際には誘電体の誘電率が、高周波になると時間変化に追いつけずに遅れる成分があり、これによる分極の遅れが電力を消費します。この損失分を誘電率で表現するため、誘電率が実数ではなく(虚数部を持つ)複素数で表す表現方法で「複素誘電率」というものが用いられます。虚数部が誘電損失の大きさになります。

[2]絶縁体の特性 その2 物性

 実際に絶縁体を組み込んだ電気部品を考えると、電気的特性のみならず、その物性(物理的特性)も重要であることが多いです。
特性値
用途と望ましい性質
材料の例
吸湿性
一般に絶縁物に吸湿性が大きいと、加水分解したり絶縁耐力が低下したりするので、吸湿しないことが望ましい。
コンデンサの誘電体
屋外用電線の被覆
耐久性
時間が経っても抵抗率・絶縁耐力・誘電率などの性質が変化しないこと。普通、吸湿や光照射で材質が劣化し、抵抗率が下がったり、絶縁耐力が下がる等の不具合が出ることがある。
高圧線碍子
屋外用電線の被覆
熱膨張係数
他の金属等と貼り合わせ・蒸着等で一体として部品を形成する場合、熱膨張係数がそれらの金属などと大きく異なっていると、温度サイクルにより剥がれたりクラックが入ったりすることがある。温度変化に耐えられるようにするためには、熱膨張係数が同程度のものを選択する必要がある。
セラミック
コンデンサ
プリント基板の基材
 

それでは、解答に移ります。
 …電気絶縁と誘電体は絶縁体の用途なので正しい記述です
 …絶縁抵抗大・絶縁耐力大は誘電体として正しい記述です
 …非電離気体の抵抗率は無限大に近いので正しい記述です
 …吸湿なし、温度特性良は誘電体として正しい記述です
 …電気的損失が大きいことは望ましくないので誤った記述です
となりますから、が正解(誤った記述)と分かります。