□ H16年12月期 A-12  Code:[HE0503] : 変調信号周波数・最大周波数偏移・逓倍数から送信周波数と偏移量を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1612A12 Counter
無線工学 > 1アマ > H16年12月期 > A-12
A-12 図に示すFM(F3E)送信機において、基準発振器の周波数f0を15.25 [MHz]、変調信号周波数を3 [kHz]、FM変調器の最大周波数偏移を7 [kHz]としたとき、この送信機のアンテナから発射される電波の周波数及びその帯域幅の値として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、帯域フィルタの通過帯域は、局部発振周波数より低い側にあるものとする。
問題図 H1612A12a
Fig.H1612A12a
1265.5  [MHz] ±10 [kHz]
1265.5  [MHz] ±20 [kHz]
1280.75 [MHz] ±10 [kHz]
1326.5  [MHz] ±10 [kHz]
1326.5  [MHz] ±20 [kHz]

 送信機の系統図を元にして、FM波の中心周波数と帯域幅を求める問題です。FM変調の帯域幅を求める公式は覚えていなければなりませんが、あとは構成をよく見て、計算を間違えなければさほど難しくはないと思います。

[1]FM変調の帯域幅と逓倍

 まず、この問題を解くのに、覚えていなければならないのがFM変調の占有周波数帯幅の計算式です。最大周波数偏移をΔfm、信号波の最大周波数をfsとすると、占有周波数帯幅Wは
 W=2(Δfm+fs) …(1)
となります。難しいことを言うと、この式は近似式です。FM変調の側波帯はAM変調のように有限範囲には収まらず、原理上無限に広がるので、変調波のエネルギーがこの帯域の中にほぼ全部(法の定義では99 [%]以上)収まっている、という範囲です。係数2は、搬送波周波数を中心に、片側にB=Δfm+fsの幅で両側に広がっている、という意味です。つまり、変調すると、搬送波の上側か下側どちらかに偏ってエネルギーが分布するのではなく、AM変調のように、幅Bで搬送波の上下両側に均等に分布する、ということなのです。
Fig.HE0503_a FM送信機の構成と各部の周波数例
Fig.HE0503_a FM送信機の構成と各部の周波数例
 それでは、Fig.HE0503_aを見て下さい。今までご説明したことは、図の中のFM変調器から出てきた信号の帯域幅の議論でした。搬送波(図の中では「基準発振器」の出力)がf0だとすると、変調器の出力はf0±Bということになります。この±BはSSBのようにどちらかを選択してしまうことはできません。
 さらに、ここがミソですが、FMという変調方式は、一般に変調器だけでは大きな周波数偏移が得られません。直接変調にしても間接変調にしても、大きな周波数偏移を得ようとすると、回路的な安定が得られにくくなります。
 周波数偏移を拡大するため、逓倍器を使います。逓倍数がm(整数。一般的に2〜4程度)だとすると、
 逓倍器の出力(周波数)=m(f0±B) …(2)
ということです。mがf0だけでなく、Bにもかかっていますから、周波数偏移が大きくなることを意味します。

[2]周波数混合と帯域フィルタ

 一方、局部発振器では一定の周波数fLで発振している発振器の後段に、n逓倍器をつなぎます。一般にFMに出られる周波数はV・UHFですから、10 [MHz]オーダーの水晶周波数では、図では一つの箱で書いてありますが、実際には何段も逓倍する必要があります。
 この局部発振器と逓倍段の出力nfLは、変調器と逓倍段からの出力m(f0±B)とともに周波数混合器に入ります。周波数混合器は平衡変調器と同じような働きの非線形素子ですから、nfLを中心に±m(f0±B)の信号が出力されます。このうち、出力で必要とするのは上側か下側のどちらかだけですので、次段にある帯域フィルタで一方のみ選択します。
 従って、送信出力は、
 nfL+m(f0±B)  又は  nfL−m(f0±B)
のどちらか、ということになります。
 問題文には必ず、上側か下側かの記述があるはずですので、注意しましょう。

それでは、解答に移ります。
 問題文中に「帯域フィルタの通過帯域は、局部発振周波数よりも低い側にある」と書いてあるので、
 送信周波数=nfLm(f0±B)
の方を取ればいいことが分かります。一方、
 中心周波数=nfL−mf0
 周波数帯幅(片側)=W=mB=m(Δfm+fs)
となります。各定数は問題および図から、f0=15.25 [MHz], fL=54.0 [MHz], Δfm=7 [kHz], fs=3 [kHz], m=2, n=24をそれぞれ上の式に代入して、
 中心周波数=1296-30.5=1265.5 [MHz]
 周波数帯幅(片側)=20 [kHz]
となりますから、が正解と分かります。