□ H16年04月期 A-06  Code:[HC0601] : ブラウン管の構造と動作原理
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1604A06 Counter
無線工学 > 1アマ > H16年04月期 > A-06
A-06 次の記述は、ブラウン管について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
 ブラウン管はCRTとも呼ばれ、[A]から放射される[B]を細い電子ビームにし、信号にしたがってこれを偏向させて蛍光面に像を描かせるものである。
 電子ビームを偏向させるには、偏向板に電界を加える方法及び電子ビームに直角の方向に[C]を加える方法がある。

グリッド 熱電子 磁界
グリッド 光電子 圧力
グリッド 熱電子 圧力
カソード 光電子 磁界
カソード 熱電子 磁界

 今ではちょっと時代遅れになってしまった感のある、ブラウン管(CRT)の動作原理の問題です。まだまだ現役で使われているものも多いですから、今後も出題されないとは限りません。

[1]ブラウン管の原理…電子の筆で絵を描く

 ついこの間まで身近にあったブラウン管は、真空管の一種です。電子の流れを制御して、画面に画像を映し出します。その原理は比較的簡単(きれいな画像を出そうと思えば、それはそれは大変な改良が必要だった技術)です。液晶と異なって、電子の当たる、当たらない(電流のON/OFF)で発光を制御しますから、高速な点滅が可能(動画でも尾を引かない)、全面黒い画面では電力をほとんど消費しない、など、ブラウン管の利点もあります。液晶では動画がにじむ、バックライトがつきっぱなし(最近はいろいろ改良されていますが)どブラウン管に比べて改良の余地があります。

[2]ブラウン管の構成…電子銃+偏向電極+スクリーン

 それでは、はじめに簡略化した構造を見て行きます。
 まず、ブラウン管(静電形)の中の構造ですが、Fig.HC0601_aのようになっています。熱電子を発生させるヒータとカソードそれに出てきた電子を加速する加速電極、これらに繋がるヒータ電源と高圧電源です。電源以外の部分はすべてブラウン管の中に収められており、カソードと加速電極部分をまとめて「電子銃」と呼ぶこともあります。
 電子銃の後ろには、水平偏向板と垂直偏向板があり、電子の軌道を曲げて所定の位置に向けます。電子が衝突して、最終的に目に見える画像を描き出す蛍光スクリーンがあります。
Fig.HC0601_a CRTの構造と動作原理
Fig.HC0601_a
CRTの構造と動作原理

[3]各部の動作…電子を発生させる、曲げる

 もう少し詳細に、各部の動作を見てみます。

(1) 高速電子を発生させる

 まず、電子は加熱されたカソードから熱電子として飛び出します。飛び出してきたところにはスリットや電子レンズといった、電子を細いビーム状の流れに整形する素子があり、これを出たところで高い正の電圧がかかった電極間の電界により加速されます。
 ブラウン管を用いたテレビが液晶テレビのようにすぐに影像が出てこないのは、主にこのヒータでカソードを暖めている時間によるものです。昔は10〜20秒もかかりましたが。

(2) 電子の軌道を曲げる

 次に、出てきた高速の電子はスクリーンに向かいますが、途中で進行方向に直角にかかった偏向電極で作られる電界によって、曲げられます。電子ですから、偏向電極の正の電圧の掛かっている方に引かれて曲がります。水平、垂直の2方に曲げられた電子は、スクリーン上の指定された位置に向かいます。逆に言えば、スクリーン上の到達点を指定するような、水平・垂直の偏向電圧をかけるわけです。
 なお、ここで紹介したブラウン管は、電子の軌道を曲げるのに偏向電極間の電界を用いていますが、磁界を使うタイプもあります(テレビなどは磁界の方が主流?)。磁界を発生させるのは「偏向ヨーク」というコイルで、Fig.HC0601_aの偏向電極あたりに位置しています。それに流す電流の強弱で電子の軌道を曲げます。この場合、電子はローレンツ力という力を受けて曲げられます。

(3) 画面を光らせる

 蛍光スクリーン(蛍光面)に当たった電子は、その衝突エネルギーで蛍光体を光らせます。電流が多ければ明るく、少なければ暗くなります。カラーの場合は、三原色ごとに蛍光体が塗られており、各色ごとに電子ビームの強弱で色の比率が変化して、様々な色を表現することができるようになっています。電子ビームの強弱は、アナログ放送ではアナログ信号ですので、色数は原理上無限です。

それでは、解答に移ります。
 …電子を放射する電極の名前はカソードです
 …電子は、ヒータで暖められて出てくるので、熱電子です
 …電界を使うタイプの他に、磁界を使うタイプもあります
となりますから、正解はと分かります。