□ H16年04月期 A-03  Code:[HA0305] : 平行平板コンデンサのパラメータ(電極間距離・誘電体の比誘電率)と容量の定量計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1604A03 Counter
無線工学 > 1アマ > H16年04月期 > A-03
A-03 静電容量が36 [pF]である平行板コンデンサの電極間の距離を半分とし、電極間の誘電体の比誘電率を3倍にしたときの静電容量の値として、正しいものを下の番号から選べ。
 54 [pF]
162 [pF]
216 [pF]
324 [pF]
432 [pF]

 平行板コンデンサの特性の問題です。コンデンサの各パラメータで書かれた公式の意味を理解していれば、解くのは比較的容易です。

[1]平行板コンデンサの特性

 最初から本質を突いてしまうと、平行板コンデンサの容量は、極板面積と誘電体の誘電率に比例し、極板間距離に反比例する…ということに尽きてしまいます。この問題は(後に述べる)上の関係を定量化した公式を知っていれば、頭の中で解けてしまいます。
 それではイマイチつまらないので、もう少しきちんと意味を理解してみることにします。
 とりあえず始めにその「公式」とやらを復習します。極板面積をS [m2]、極板間距離をd [m]、誘電体の誘電率をε [F/m]とします。このコンデンサの静電容量C [F]は、
 C=εS/d [F] …(1)
Fig.HA0305_a 平行板コンデンサのパラメータと容量
Fig.HA0305_a
平行板コンデンサのパラメータと容量
と表されます。言葉で書くと、冒頭に青字で書いた部分の内容になります。
 容量の大きなコンデンサを作りたければ、Sを大きくするか、dを小さく(誘電体を薄く)すればいいわけです。もちろん、εを大きくしても構いません。電子部品の世界では、それぞれの用途に応じてこの3つのパラメータを調整し、製品となる所望の容量のコンデンサが作られています。
 御興味のある方は、村田製作所(セラミックコンデンサ)や日ケミ(電解コンデンサ)等で公開されている技術的な文書をお読みになると、コンデンサの奥深さに触れられます。
 さて、本題に戻ります。極板面積が増えれば、容量が増えるのは直感的に理解しやすいですが、誘電体の厚みはどうでしょう。誘電体が厚ければ電荷がたくさん溜められそうな気もしますが、実際はそうではありません。電荷は両極板に溜まるのであって、誘電体の中に溜まるものではないからです。
 誘電率はどうでしょう? 誘電率、というのは、一言でいえば誘電体が分極(電気力線の向きに応じて原子や分子の中の電子が特定の向きに偏る現象)を起こす起こしやすさを表したものです。分極が多く起こるほど、多くの電荷が電極に集められます。つまり容量が増えます。

[2]真空の誘電率と比誘電率…真空になぜ「誘電率」が存在する?

 何もない真空にも誘電率があって、これをε0と表します。ε0=8.85×10-12 [F/m]です。空気などの非電離気体は、通常は誘電率がほとんどε0とみなして構いません比誘電率とは、ある物質の誘電率εと真空の誘電率ε0の比をいいます。これをεrと書くことにすると、先の記述で、空気ではεrがほぼ1、ということです。一般には、
 ε=εrε0 …(2)
と書けます。ですから、平行板コンデンサの誘電体が真空の時と、比誘電率がεrの誘電体を挿入した同じ形状のコンデンサでは、容量がεr倍異なる、ということになります。
 以下の部分は、余談的な内容も含むので、エレキの勉強には直接関係ない部分もありますが、前から不思議に思っていることがあります。それは、真空中にも物質が何もないにもかかわらず、なぜ誘電率がゼロではないのか、ということです。実は私も不勉強で分かりません。ただ、磁力線に関わる「透磁率」も真空中では何もないのに、一定値(真空の透磁率μ0)が存在することと、この2つの定数の積の平方根の逆数(1/√(ε0μ0))が真空中の光速に等しいこととを併せて考えると、真空が電磁波を伝搬させるための「何か」を備えている(昔はこれを「エーテル」と言ったらしいですが)ことを説明するためのものではないか、と思っています。

それでは、解答に移ります。
 この問題では、dを半分にして、誘電率を3倍にした、と言っています。最初のコンデンサの容量をC1とすると、
 C1=ε1S/d …(a)
です。次に、極板間隔をd/2にして、誘電率を3倍(ε2=3ε1)にした時の静電容量C2は、
 C2=ε2S/(d/2)
   =(3ε1S)/(d/2)
   =6(ε1S/d)=6C1 …(b)
となり、厚さ半分と誘電率3倍の効果を合わせて6倍の容量増になります。元の容量が36 [pF]ですから、36×6=216 [pF]となり、正解はと分かります。