□ H15年08月期 A-12  Code:[HE0503] : 変調信号周波数・最大周波数偏移・逓倍数から送信周波数と偏移量を計算
インデックス
検索サイトから来た方は…
無線工学の基礎 トップ

以下をクリックすると、元のページが行き先に飛び、このウインドウは閉じます

 ■ 無線工学を学ぶ
 (1) 無線工学の基礎 
 年度別出題一覧
  H11年 4月期,8月期,12月期
  H12年 4月期,8月期,12月期
  H13年 4月期,8月期,12月期
  H14年 4月期,8月期,12月期
  H15年 4月期,8月期,12月期
  H16年 4月期,8月期,12月期
  H17年 4月期,8月期,12月期
  H18年 4月期,8月期,12月期
  H19年 4月期,8月期,12月期
  H20年 4月期,8月期,12月期
  H21年 4月期,8月期,12月期
  H22年 4月期,8月期,12月期
  H23年 4月期,8月期,12月期
  H24年 4月期,8月期,12月期
  H25年 4月期,8月期,12月期
  H26年 4月期,8月期,12月期
  H27年 4月期,8月期,12月期
  H28年 4月期,8月期,12月期
  H29年 4月期,8月期,12月期
  H30年 4月期,8月期,12月期
  R01年 4月期,8月期,12月期
  R02年 4月期,9月期,12月期
  R03年 4月期,9月期,12月期
  R04年 4月期,8月期,12月期
 分野別出題一覧
  A 電気物理, B 電気回路
  C 能動素子, D 電子回路
  E 送信機, F 受信機
  G 電源, H アンテナ&給電線
  I 電波伝搬, J 計測

 ■ サイトポリシー
 ■ サイトマップ[1ama]
 ■ リンクと資料

 ■ メールは下記まで



更新履歴
2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1508A12 Counter
無線工学 > 1アマ > H15年08月期 > A-12
A-12 図に示すFS(F1)通信方式の送信機において、自励発振器の中心周波数が200 [kHz]及び周波数偏移が±150 [Hz]、第1局部発振器の発振周波数が8.5 [MHz]、第2局部発振器における水晶発振器の発振周波数が53.0 [MHz]であるとき、発射される電波の中心周波数及び周波数偏移の値として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、第1及び第2帯域フィルタの通過帯域の周波数は、それぞれ第1及び第2局部発振器出力の周波数より高いものとする。
問題図 H1508A12a
Fig.H1508A12a
1245.9 [MHz]±150 [Hz]
1280.7 [MHz]±150 [Hz]
1280.7 [MHz]±450 [Hz]
1298.1 [MHz]±150 [Hz]
1298.1 [MHz]±450 [Hz]

 送信機の系統図を元にして、FM波の中心周波数と帯域幅を求める問題です。FM変調の帯域幅を求める公式は覚えていなければなりませんが、あとは構成をよく見て、計算を間違えなければさほど難しくはないと思います。

[1]FM変調の帯域幅と逓倍

 まず、この問題を解くのに、覚えていなければならないのがFM変調の占有周波数帯幅の計算式です。最大周波数偏移をΔfm、信号波の最大周波数をfsとすると、占有周波数帯幅Wは
 W=2(Δfm+fs) …(1)
となります。難しいことを言うと、この式は近似式です。FM変調の側波帯はAM変調のように有限範囲には収まらず、原理上無限に広がるので、変調波のエネルギーがこの帯域の中にほぼ全部(法の定義では99 [%]以上)収まっている、という範囲です。係数2は、搬送波周波数を中心に、片側にB=Δfm+fsの幅で両側に広がっている、という意味です。つまり、変調すると、搬送波の上側か下側どちらかに偏ってエネルギーが分布するのではなく、AM変調のように、幅Bで搬送波の上下両側に均等に分布する、ということなのです。
Fig.HE0503_a FM送信機の構成と各部の周波数例
Fig.HE0503_a FM送信機の構成と各部の周波数例
 それでは、Fig.HE0503_aを見て下さい。今までご説明したことは、図の中のFM変調器から出てきた信号の帯域幅の議論でした。搬送波(図の中では「基準発振器」の出力)がf0だとすると、変調器の出力はf0±Bということになります。この±BはSSBのようにどちらかを選択してしまうことはできません。
 さらに、ここがミソですが、FMという変調方式は、一般に変調器だけでは大きな周波数偏移が得られません。直接変調にしても間接変調にしても、大きな周波数偏移を得ようとすると、回路的な安定が得られにくくなります。
 周波数偏移を拡大するため、逓倍器を使います。逓倍数がm(整数。一般的に2〜4程度)だとすると、
 逓倍器の出力(周波数)=m(f0±B) …(2)
ということです。mがf0だけでなく、Bにもかかっていますから、周波数偏移が大きくなることを意味します。

[2]周波数混合と帯域フィルタ

 一方、局部発振器では一定の周波数fLで発振している発振器の後段に、n逓倍器をつなぎます。一般にFMに出られる周波数はV・UHFですから、10 [MHz]オーダーの水晶周波数では、図では一つの箱で書いてありますが、実際には何段も逓倍する必要があります。
 この局部発振器と逓倍段の出力nfLは、変調器と逓倍段からの出力m(f0±B)とともに周波数混合器に入ります。周波数混合器は平衡変調器と同じような働きの非線形素子ですから、nfLを中心に±m(f0±B)の信号が出力されます。このうち、出力で必要とするのは上側か下側のどちらかだけですので、次段にある帯域フィルタで一方のみ選択します。
 従って、送信出力は、
 nfL+m(f0±B)  又は  nfL−m(f0±B)
のどちらか、ということになります。
 問題文には必ず、上側か下側かの記述があるはずですので、注意しましょう。

それでは、解答に移ります。
 この問題では、変調器がFM変調ではなく、平衡変調ですので、Bはそのまま問題文中の周波数偏移を代入すればよいことになります。また、基準周波数f0としては、第1局部発振器の周波数と副搬送波の周波数の和又は差を取ればいいことになります。
 問題文中に「両方の帯域フィルタの通過帯域は、それぞれの局部発振周波数よりも高い側にある」と書いてあるので、
 第1帯域フィルタ出力の中心=8,500200 [kHz]=8.7 [MHz]
 第2帯域フィルタ出力の中心
   =8.7×3逓倍53×24逓倍=26.1+1272=1298.1 [MHz]
の方を取ればいいことが分かります。一方、
 周波数帯幅(片側)=150 [Hz]×3逓倍=450 [Hz]
となりますから、が正解と分かります。