□ H15年04月期 B-04  Code:[HH0601] : 接地アンテナの放射効率の定義、放射効率の向上方法と接地方法
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1504B04 Counter
無線工学 > 1アマ > H15年04月期 > B-04
B-04 次の記述は、接地アンテナの接地(アース又はグランド)方法について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。ただし、[ ]内の同じ記号は、同じ字句を示す。
(1) 接地アンテナの電力損失は、ほとんど[ア]による[イ]損失によるので、放射効率を良くするためには、[ア]を少なくする必要がある。
(2) 銅板などを地表下に埋設して接地線を接続し、その銅板の周囲の土に[ウ]などを混合し、常時湿気を保つ接地は、[エ]接地と呼ばれる。
(3) 乾燥地など大地の導電率が悪い所での接地のためには、地上に導線や導体網を張り、これらと大地との容量を通して接地効果を得る[オ]が用いられる。
誘電体 ラジアルアース 接地抵抗 深堀 多重
カウンターポイズ 表皮効果 木炭 10 砕石

 接地アンテナの放射効率と、それに関連の深い接地方法の問題です。放射効率が低いと、いわゆる「飛ばない」アンテナになってしまいます。

[1]アンテナの放射効率とは何か?

 回路などでは、○○効率という言葉がよく出てきます。送信機で、ファイナル段の効率、といえば、高周波出力/ファイナル段の直流入力のことですし、電源の効率といえば、出力電力/入力電力です。
 では、アンテナの(特に接地アンテナの)放射効率、とはなんでしょうか? 簡単に言えば、アンテナに入れた電力のうち、空中に電波となって放射された電力の割合、を言います。
 定義は簡単ですが、実際どうやって決まるのでしょうか? それを考えるにあたっては、Fig.HH0601_aのような、接地アンテナ(ここではλ/4垂直接地アンテナを取り上げました)の等価回路を考えてみます。
 まずは黒く描かれたコイルとコンデンサです。これらは、アンテナの共振現象をモデル化したもので、それ自体はエネルギーを消費しません
Fig.HH0601_a 接地アンテナの動作モデル
Fig.HH0601_a
接地アンテナの動作モデル
 つまり、これらのコイルやコンデンサにエネルギー損失はありません。

[2]アンテナの放射抵抗と接地抵抗とは何か

 次に、青く描かれた放射抵抗Z0です。これは、空中に電波が出て行く(=アンテナから電力が空間に流れ出す)現象を抵抗で電力を消費するものとしたモデルです。つまり、放射効率の分子はこの抵抗で消費される電力になります。
 その下に接続されている、茶色の導体抵抗ですが、これは、アンテナが導体でできているために、抵抗分を持つことをモデル化したものです。通常、この抵抗はアンテナエレメントが十分太ければ、後に述べる接地抵抗に比べて無視できる大きさですが、厳密には高周波になると表皮効果が出てくるため、全く無視できるか、というとそうでもありません。ここでは接地アンテナを使うのがVHF程度まで、と考えて、一応無視します。
 以上が、同軸ケーブルでいうと、内部導体側に繋がるエレメントのモデルです。
 一方、外部導体側に繋がるのは、赤で描かれた接地抵抗REのみです。接地抵抗は、この場合でいうと、同軸の外側導体と、導体としての地球の間に入る抵抗値です。この値は、直に地面に電極を埋める場合でも数Ω〜数100Ωあるため、導体抵抗と比較して、無視できません。

[3]アンテナの放射効率は接地抵抗で決まる

 ここまで分かったところで、このモデルを元に、放射効率を求めてみましょう。まず、着目するのは、エレメント側と接地側に流れている電流の大きさIaが同じであることです。これが異なっているのは、現実にはあり得ますが接地とはまた別の問題です。ここではエレメント側と接地側に流れている電流の大きさはともにIaであるとします。すると、エレメント側で空間に放射される電力Prは、
 Pr=Ia20 …(1)
一方、接地抵抗に電流が流れて発生する電力Pgは、
 Pg=Ia2E …(2)
となります。この電力は、空間に出て行くのでもなければ送信機側に戻るわけでもなく、地中で熱になります。そして、PrとPg以外に供給された電力がなくなってしまう要因はありませんから、アンテナへの高周波入力Ptは、PrとPgの和で表され、
 Pt=Pr+Pg
   =Ia2(Z0+RE) …(3)
と求められます。すると、放射効率η(イータ)は、
 η=Pr/Pt
  =Pr/(Pr+Pg
  =Ia20/(Ia20+Ia2E
  =Z0/(Z0+RE …(4)
という、簡単な形になってしまいました。これを見ると、接地抵抗REがゼロに近い方が効率が高まる、すなわちηが1に近づくことが容易にわかります。つまり、接地アンテナでは、接地をしっかり取らないと、送信機で地球温暖化を促進していることになってしまうのです。
 そうは言っても、接地抵抗はどんなに頑張っても数Ωにするのは大変です。λ/4垂直接地アンテナのインピーダンスが、約36 [Ω]と低いために効率を上げづらいのも事実ですから、接地抵抗が下げられないなら、もっとインピーダンスの高いアンテナを使えばいい、という話にもなります。
 確かに、数式上、それも成り立ちます。エレメントを変えて電圧給電できるようにすればいいのですが、片や50 [Ω]の同軸ですから、給電には、高電圧に耐えられる部品でマッチング回路を組まなければならないので、結構大変です。
 こんなこともあって、一般には接地の不要な水平系のアンテナやラジアルで済ませられるGPが好まれる傾向にあるのです。

[4]良好な接地を取るには…深掘接地とカウンターポイズ

 垂直接地アンテナの放射効率が接地抵抗でほぼ決まることは分かりましたが、肝心のその接地抵抗を下げる方法は、どうしたらよいでしょうか?
 接地にさほど詳しいわけではありませんが、ここでは、Fig.HH0601_bで代表的な(試験によく出る)接地方法を勉強します。
Fig.HH0601_b 深掘接地とカウンターポイズ
Fig.HH0601_b
深掘接地とカウンターポイズ
(1) 深掘接地 Fig.HH0601_b左
 文字通り、深く(数m)掘って銅板や銅棒などの電極を埋め込むことです。また、常に湿り気を保たせるようにしておくと効果的です。電極を埋め戻す際、木炭片や接地抵抗低減剤を入れて、より低抵抗になるようにすることもあります。
 この方法は、砂地や火山灰土などで、導電性の悪い土壌ではなかなか接地抵抗が下がりません。その場合は、次に述べるような方法を用います。
(2) カウンターポイズ Fig.HH0601_b右
 無線で扱う信号は高周波なので、直流的に接地できなくても、大きな容量で大地と結合させてしまえばいい、という発想です。
 地表近くに、金属の板やメッシュで、なるべく広い面積を広げ、それにアンテナのGND側を接続します。プロの無線局ではあまり用いられないようですが、私のようなモービル局では、ボディと大地の間の容量でGNDとしているので、これが無いと電波が出せません。

それでは、解答に移ります。
 …接地アンテナの損失のほとんどは3接地抵抗による熱損失です
 …接地アンテナの損失のほとんどは接地抵抗による6熱損失です
 …接地抵抗を下げるため、電極の周囲に9木炭片などを混合します
 …このような接地方法を4深掘接地といいます
 …大地と電極間の容量で取る交流接地は7カウンターポイズといいます
となります。

 以下、余談です。100W予備免許中の高校生の頃、この[深掘接地]をやってみました。修学旅行で行った松江で、「切り炭」を5kgばかり買って来て、7〜80cm掘って、30cm×20cm程の銅板電極2枚の周囲にその炭を砕いてびっちり埋め、水を撒いてやってみましたがちっともTVI・BCIは止まりませんでした。
 なぜなら、シャックが2階にあったため、接地線が波長と同じオーダーの長さで、全然接地になっていなかったためと考えられます。バカだったんですね>俺 というオチが付きます。
 それ以来、もしHFでハイパワーなシャックを組むなら、「アングラ」な地下室がベストだと思いますし、最悪でも1階でなければダメでしょう。良好な接地も重要ですが、接地線の長さももっと重要、という余談でした。