□ H15年04月期 A-24  Code:[HB0202] : 単相半波整流回路で、抵抗の値から可動コイル形指示計器が指す値を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1504A24 Counter
無線工学 > 1アマ > H15年04月期 > A-24
A-24 図に示す単相半波整流回路において、交流電源電圧の波形が正弦波でその実効値が100 [V]のとき、可動コイル形電流計Mの指示値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、Mの内部抵抗及びダイオードDの順方向抵抗の値は零であり、Dの逆方向抵抗の値は無限大とする。
0.45 [mA]
0.7 [mA]
0.9 [mA]
1.0 [mA]
1.4 [mA]
問題図 H1504A24a
Fig.H1504A24a

 この問題を「計測」のジャンルに入れようか、「回路」に入れようか迷いましたが、知っていなければならないのは交流の性質である、として「電気回路」の問題としました。

[1]可動コイル形指示計器の指示値は平均値

 まず、可動コイル形計器に交流を加えた場合、その指示は「平均値」に比例します。厳密には正負に対称な波形の交流を加えても、平均値はゼロなので針は振れませんのでこの問題のように整流器と組み合わせて使用します。一方、通常交流を測定する場合、電圧として振られている目盛りは「実効値」です。
 この差を「補正」しなければなりませんが、波形が同じなら実効値と平均値は比例関係なので、ある係数をかけるだけで目盛りを振ることができます。ところが、波形が異なると、その係数が異なるため、同じ目盛りでは誤差を生じます。このため、通常の計器は正弦波交流を基準に目盛りが振られています。
 ここでは、正弦波についての「最大値」「平均値」「実効値」の関係を調べてから、目盛りの振り方について考えてみましょう。

[2]波形に着目した振幅の表現…最大値と平均値

 まずは、波形をオシロスコープ等で観測した時に、その形から分かる振幅を調べます。目で見て直感的に理解できるので、難しくないと思います。
Fig.HB0202_a 交流電圧の表現形式
Fig.HB0202_a
交流電圧の表現形式
1) 最大値
 まず、最大値Vmについてですが、これは波形を観測して最も分かりやすいもので、波形の振幅が最も大きくなる点の電圧です。

2) 平均値
 これも割と理解しやすいです。正弦波交流の半周期を波形で描くと、Fig.HB0202_aの左上のようになりますが、この「山形」と面積が同じで、時間軸の長さが同じ長方形の高さを、平均値と言います。要するに、波形の山を均して平たくしたら、高さはいくつになるかということです。
 最大値がVm [V]の正弦波は、周波数をf [Hz]、として、ある時刻t [s]の電圧を、
 V(t)=Vmsin(2πft) …(1)
と表すことができます。三角波など直線で囲まれた波形と異なり、正弦波の関数を積分しなければ得られませんが、積分の計算は数学の解説に譲り、ここでは結果だけを書きます。V(t)の平均値VAは、
 VA=2Vm/π …(2)
となります。2/π=0.637ですから、平均値は最大値の6割強、ということになります。これは正弦波での値ですから、他の歪んだ波形では値が異なります

[3]電気エネルギーに着目した振幅表現…実効値

 ここまでは、交流波形から求められる振幅でしたが、電気をエネルギーの流れと捉えて表す振幅もあります。正弦波交流以外でも使えるので、汎用性があり、我々の周囲にはこの値で表現されたものが多いです。
3) 実効値
 実効値は、ある最大電圧の交流(ここでは正弦波交流)の電圧を抵抗にかけた時に消費される電力と、同じ電力を消費させる直流電圧は何Vか、という意味になります。例えば、家庭に来ているAC100 [V]は、実効値で表示されています。ということは、直流でも動作する500 [W]の電熱器を家庭のコンセントに接続した時と、DC100 [V]の電源につないだ時では、同じ500 [W]の電力を消費する、ということです(Fig.HB0202_a下半分)。
 細かい計算は、平均値と同様に、より専門的な書に譲りますが、(1)式の「2乗平均」というものを取ります。2乗を取るのは、電力は電圧(又は電流)の2乗に比例するからです。その結果だけ記すと、実効値VEは、
 VE=Vm/√2 …(3)
となります。1/√2=0.707ですから、実効値は最大値の7割強、ということになります。これも平均値と同様、正弦波での値ですから、他の歪んだ波形では値が異なります。

それでは、解答に移ります。
 この計器単体は交流用ではないため、目盛りは直流で振ってありますが、これに交流を通せば指示されるのは平均値であることはすでに上で述べました。平均値VAを求めるには、上記[2]で書いたように、最大値Vmが必要ですが、最大値は[3]で書いたように実効値VEから求めることができます。それでは、順に求めて行きます。
(3)をVEについて解いて、
 Vm=(√2)VE …(4)
(4)を(2)に代入して、
 VA=2{(√2)VE}/π …(5)
これにVE=100 [V]を代入して、平均値VAを求めると、
 VA=0.900VE=90 [V]
さらに、半波整流なので、半周期分しか電流が流れず、平均値はさらにこの半分(この問題はここが引っ掛け)。そこで、VA=45 [V]となるわけです。
 後はオームの法則が成り立つのは平均値であろうが、実効値であろうが同じですから、計器に流れる平均電流は、45 [V]/100 [kΩ]=0.45 [mA]と計算できます。
 従って正解は、と分かります。