□ H14年12月期 B-04  Code:[HE0901] : アマチュア衛星通信の特徴(使用周波数、衛星の種類、周波数シフト等)
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1412B04 Counter
無線工学 > 1アマ > H14年12月期 > B-04
B-04 次の記述は、衛星通信について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。
(1) アマチュア通信用には[ア]衛星が使用されており、[イ]効果によって受信電波の周波数が偏移を受け、また、地球局のアンテナが常に衛星を向くように[ウ]する必要がある。
(2) 地上から送信された電波が静止衛星を一回経由して、地上の受信点に到達するまで、約[エ]の時間を要する。
(3) 衛星との間の通信回線では、送受信間の干渉を避けるために、アップリンクとダウンリンクでそれぞれ別の[オ]を使用する。
静止 周回 制御 巡航 1/2秒
1/4秒 ドプラ ドリフト 電波型式 10 周波数帯

 アマチュアの衛星通信についての問題です。衛星を使った交信をしたことのある方ならすぐに解ける問題だと思いますが、私は経験が無いので聞きかじりです。それでは見て行きましょう。

[1]アマチュアの衛星通信方式

(1) 使用周波数帯・電波形式
 バンドプランでは、28 [MHz]と144 [MHz]以上のバンドに衛星通信が割り当てられています。波長が長いと電離層通過時の減衰が多いですし、衛星側のアンテナも大型化しますので、主にVUHF以上で交信が行なわれています。

(2) 衛星の形式
 通信衛星には周回衛星と静止衛星があります。このうち、静止衛星は実は「静止」しているわけではなく、地球の自転角速度と同じ角速度で回っているため、地上から見ると静止「しているように見える」衛星、というわけです。地球側でアンテナを固定できることから、放送衛星はみなこれです。しかし、静止軌道は赤道の36,000 [km]も上空にあるため、アマチュアで実用になるには地上局・衛星局側とも大出力が必要になり、衛星も大型化します。このため、アマチュアで用いられている衛星は、全て周回衛星です
Fig.HE0901_a 衛星の構成と通信方式
Fig.HE0901_a
衛星の構成と通信方式
 軌道は数100 [km]程度と低く、出力が小さいので衛星も小型で済む代わりに、衛星が動いて見えるので、ビームアンテナで常に追尾が必要で、後に述べるドップラ効果も生じます。また、衛星が地球に隠れてしまう間は利用できません

(3) 伝播通路
 地上局と衛星の間には基本的には何も障害物はありませんから、自由通路伝搬です。高い周波数(おおむね10 [GHz]程度より上)では(衛星放送が大雨で見られなくなることがあるように)大気中の水分で散乱・吸収される、という効果が出てきます。また、あまり周波数が低いと、電離層での反射・吸収の損失が増加(特に電子密度が高い時)します。

(4) 地上局での交信
 地上局では、大電力を必要としないで済むよう、また受信感度を上げるため、仰角可変の八木アンテナが多く用いられます。地球局と衛星局の位置関係は変化するため、偏波面を固定することができないので、円偏波がよく用いられます。そのため、八木アンテナでも円偏波が受信できるクロス八木アンテナや、元々円偏波が送受信できるヘリカルアンテナ等も用いられます。
 距離がさほど遠くないので、月面反射通信のような巨大なパラボラアンテナやブーム長が数 [m]を超えるような八木アンテナのスタックは必要ありません。衛星の軌道表を手に入れたら、水平と仰角を調整しながら衛星を追尾し、交信します。今は殆どPCでローテーターの制御を行なっています。衛星に向ける送信の「上り(アップリンク、という)」周波数と、衛星からの「下り(ダウンリンク、という)」周波数は、通常別のバンドを用います。145 [MHz]と435 [MHz]の組合せが一番一般的ではないでしょうか?
 衛星は地上局から見て動いています。動いているものが波源になって、固定されたものがその波を受ける場合、周波数が相対速度に応じて変化する、ドプラ効果(ドップラー効果、ともいう)があるので、衛星の周波数は送信周波数よりシフトして受信されます。
 救急車のサイレン音のシフトと同様、衛星が近づく時は周波数が上方にシフト、遠ざかる時は周波数が下方にシフトします。

(5) 衛星内部の構成
 宇宙で使用される条件(耐久性や信頼性の確保など)に対応した構造を除けば、レピータとよく似ています。ただ、トランスポンダ、という周波数変換器を積んでおり、レピータはバンド内でしたが、衛星では(通常)異なるバンドに周波数を変換します。また、太陽電池などの電源を備え、地球局からの指令を受けて姿勢制御や内部の動作の制御を行なうシステムを備えている所も、衛星特有の仕組みです。
 衛星には寿命があります。低軌道衛星では軌道上が全くの真空ではないため、非常に薄い大気との摩擦で軌道が低下する他、太陽電池などが宇宙線にさらされるなどして、長くても5〜10年の寿命のものが多いようです。

それでは、解答に移ります。
 …アマチュア用の衛星は、現時点では全て2周回衛星です
 …受信電波は7ドプラ効果により、周波数がシフトします
 …地球局は動くアンテナで衛星を捉えるよう3制御する必要があります
 …静止衛星は36,000 [km]上空なので、往復には6 1/4秒かかります
 …衛星通信では送受で別の10周波数帯を用います
となります。