□ H14年12月期 A-19  Code:[HH0802] : 実効長or実効高、電界強度、周波数からアンテナ誘起電圧等を計算
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H1412A19 Counter
無線工学 > 1アマ > H14年12月期 > A-19
A-19 周波数が10.1 [MHz]、電界強度が10 [mV/m]の電波を半波長ダイポールアンテナで受信したとき、受信機の入力端子電圧として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、アンテナと受信機入力回路は整合しているものとする。
 47.3 [mV]
 50.5 [mV]
 74.3 [mV]
 94.6 [mV]
101.0 [mV]

 この問題を解くには、アンテナの実効長・実効高という概念を理解しておかなければなりません。概念といってもさほど難しいものでもありません。

[1]アンテナの実効長・実効高とは何か

 まず、Fig.HH0802_aを見て下さい。アンテナにはその動作状態で、垂直系のアンテナと、水平系のアンテナがありますが、普通、水平系には「実効長」、垂直系には「実効高」という用語を用います。
 水平系のアンテナを例に取ると、アンテナに給電すると、そのアンテナの特性で決まる電流分布が生じます。これは、通常一様に分布することはなく、場所によって電流が変化しています。例えば、λ/2ダイポールに中央部から給電すれば、電流は給電部で最も強く、末端に行くに従って正弦的に減少します。
 これを、全長に渡って一様な電流が流れている分布、つまりどこを取っても同じ電流が流れている分布だと仮定すると、素子の長さはいくらになるか、という問題です。
Fig.HH0802_a 実効長・実効高の考え方
Fig.HH0802_a
実効長・実効高の考え方
 Fig.HH0802_a左の図に描いたように、エレメント長の全域にわたってある電流分布をしているアンテナが、全く一定な分布を持っている仮想的なアンテナと同じとすれば、この仮想的なアンテナの全長はいくらになるか、ということです。
 垂直系のアンテナに関しても、全く考え方は同じです。アンテナの実際の高さと、電波を送受信するのに、実質的に必要な高さが異なることを言っています。

[2]電界強度と実効長(高)、誘起電圧の関係

 実効長や実効高を求めて、何の役に立つんだ、と思われるかもしれませんが、実は、ある電界強度の中にこのアンテナを置いた時、アンテナに誘起する電圧が微分も積分も要らず、掛け算だけで出るのです。電界強度の単位は[V/m]なので、実効長[m]または実効高[m]を掛けると、アンテナの誘起電圧 [V]になります。それに、長い(高い)アンテナなのに、実効長/実効高が短い/低いということは、そのアンテナは実際には電波が出ている部分(高周波電流が流れている部分)があまりない、ということが分かります。
 λ/2ダイポールやλ/4垂直接地といったアンテナの実効長・実効高は、電流分布が単純なので、紙と鉛筆で計算できます(電流分布の導出と微積分が必要なので、証明は行ないません)。λ/2ダイポールの実効長がλ/π [m]で、λ/4垂直接地の実効高がその半分のλ/2π [m]です。
 電界強度E [V/m]と、アンテナの誘起電圧V [V]、それにこの実効長Le [m]の関係は、
 V=LeE …(1)
という、非常に単純な関係です。λ/2ダイポールの場合はL=λ/π、λ/4垂直接地の場合はλ/2πを代入すればよいだけです。

 実効長・実効高と似た概念に、アンテナの「実効面積」という考え方があります。これは、空間を流れている受信電波のエネルギーをどれだけ受信機に伝達できるかを面積で表したものです。アンテナと受信機のインピーダンス整合までを考慮に入れた、エネルギー伝達の効率とも呼べるものですが、アマチュアでは出題されたのを見たことがありません。

[3]アンテナに誘起する電圧と受信機入力端に生じる電圧

 ここで注意して頂きたいのは、上記で求めた電圧Vは、アンテナ単体で、かつ、アンテナ端子が解放の状態での誘起電圧を言っているということです。
Fig.HH0802_b アンテナ系に生じる電圧
Fig.HH0802_b
アンテナ系に生じる電圧
 アンテナを到来電波の電界中に、単体で置いておいても、受信機なりスペアナなりの機器を繋がなければ、役割を果たしません。
 我々が知りたいのは、例えば受信アンテナなら、受信機の入力端子で何[V]得られるのか、ということです。そのためには、アンテナをモデル化してFig.HH0802_bのように考えます。
 まずは、アンテナ(放射抵抗R [Ω]、実効長Le [m])が単体で電界E [V/m]中に置かれた場合、同図左のようになります。
 これは、(1)式で求めた通り、アンテナ端子に生じる電圧はV=LeE [V]です。この電圧を「受信開放電圧」と呼びます。
 但し、この絵のように、信号源はV=LeEの単なる定電圧源ではなく、信号源抵抗Rを持つ電源にモデル化されていることに注意して下さい。
 では、これを受信機(入力インピーダンスR [Ω])に接続したら、入力端で何[V]得られるでしょうか。簡単のため、途中のケーブル等は全てインピーダンス整合が取れていて、かつ、損失はないものとします。
 このこと示しているのが、同図右の絵です。ここで証明はしませんが、信号源抵抗を持つ電源の場合、負荷Rが信号源抵抗に等しい時に、最大の電力伝達が可能になります。これは、直流でも高周波でも同じです。厳密に言うと、交流の場合は、一般にインピーダンスZ=R+jXになりますが、信号源抵抗と負荷が複素共役(信号源がR+jXなら、負荷がR−jXの関係)の時に、送れる電力が最大になります。
 受信機に入力される「電力」P [W]は、
 
で表せます。また、得られる電圧は、難しい計算をするまでもなく、V/2 [V]です。
 アンテナ単体なら得られるはずの電圧の半分しか得られない、というのは何とも残念ですが、信号を伝達する、というのはこういう物理(電圧を上げようとすれば電流が減って電力が減り、電流を増やせば電圧が下がってこれまた電力が減る)なので、高い部品を使っても、納期を掛けても、ベテランを呼んできて設計しても、この値は変わりません。

[4]利得と実効長、実効面積の関係

 上で、実効面積の話も出ましたが、一般的にアンテナの利得(絶対利得です)がG、放射抵抗がR [Ω]、波長をλ [m]とした時の、これらの関係をまとめておきます。
  まず、実効長Leについては、(途中の計算は飛ばしますが)
 
となります。例えば、この式に完全半波長ダイポールのG≒1.64、R≒73 [Ω]を代入してみると、√の項はほぼ1になり、Le=λ/πとなることが分かります。
 また、実効面積Ae
 
で表せます。
 ここで気付くのは、実効面積に放射抵抗が関係ないということです。実効長を求めるには放射抵抗が分かっていなければなりませんが、実効面積は放射抵抗に関係ありません。

それでは、解答に移ります。
 この問題のアンテナは半波長ダイポールアンテナですから、L=λ/πです。E=10 [mV/m], L=300/(10.1×π)≒9.45 [m]を(1)式に代入すれば、誘起電圧V=94.5[mV]となります。ところが、ここで4を選んではいけません。何故かというと、この値はアンテナの「起電力」であって、通常、受信機に接続する時は受信機の入力インピーダンスに整合させるため、入力端の電圧は起電力の半分になるからです。従って、94.5 [mV]/2=47.3 [mV]に最も近いが正解と分かります。