検索サイトから来た方は… 無線工学の基礎 トップへ
以下をクリックすると、元のページが行き先に飛び、このウインドウは閉じます
|
■ 無線工学を学ぶ
|
(1) 無線工学の基礎
|
年度別出題一覧
|
H11年 4月期,8月期,12月期
|
H12年 4月期,8月期,12月期
|
H13年 4月期,8月期,12月期
|
H14年 4月期,8月期,12月期
|
H15年 4月期,8月期,12月期
|
H16年 4月期,8月期,12月期
|
H17年 4月期,8月期,12月期
|
H18年 4月期,8月期,12月期
|
H19年 4月期,8月期,12月期
|
H20年 4月期,8月期,12月期
|
H21年 4月期,8月期,12月期
|
H22年 4月期,8月期,12月期
|
H23年 4月期,8月期,12月期
|
H24年 4月期,8月期,12月期
|
H25年 4月期,8月期,12月期
|
H26年 4月期,8月期,12月期
|
H27年 4月期,8月期,12月期
|
H28年 4月期,8月期,12月期
|
H29年 4月期,8月期,12月期
|
H30年 4月期,8月期,12月期
|
R01年 4月期,8月期,12月期
|
R02年 4月期,9月期,12月期
|
R03年 4月期,9月期,12月期
|
R04年 4月期,8月期,12月期
|
分野別出題一覧
|
A 電気物理, B 電気回路
|
C 能動素子, D 電子回路
|
E 送信機, F 受信機
|
G 電源, H アンテナ&給電線
|
I 電波伝搬, J 計測
|
|
■ サイトポリシー
|
■ サイトマップ[1ama]
|
■ リンクと資料
|
|
■ メールは下記まで
|
|
2022年 |
12/31 12月期問題頁掲載 |
09/01 08月期問題頁掲載 |
05/14 04月期問題頁掲載 |
|
無線工学 > 1アマ > H14年04月期 > A-17 |
A-17 |
図に示すように、一次電圧E1が100 [V]、二次電圧E2が115 [V]の単巻変圧器において、二次側の電流I2が3 [A]の場合、変圧器の巻線yz間に流れる電流の大きさの値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、変圧器の巻線のインダクタンスは十分大きく、また、変圧器の効率は90 [%]とする。
|
|
|
|
単巻変圧器の効率の問題です。一次側と二次側で電圧×電流が等しい、というのは最初に習いますが、これはあくまでもトランスでの電力の損失がない、と仮定した場合のことです。実際にはトランスで様々な形でエネルギーロスが発生しますから、そういう場合はどう考えればいいのか、というのがこの問題です。
[1]トランスで電力を伝達する、という意味
我々は、トランスを電圧やインピーダンスを変換する素子、として考えることが多いですが、見方を変えて、エネルギーを伝達する、という働きに着目してみましょう。
|
Fig.HG0101_a トランスの電力伝達と効率
|
例えば、Fig.HG0101_aのように、一次側と二次側の巻き数、電流、電圧をそれぞれn1, n2, I1, I2, V1, V2とします。 一次側に入る電力、二次側から出てくる電力をそれぞれP1, P2とすると、
P1=V1・I1 …(1)
P2=V2・I2 …(2)
となります。効率γの定義より、
γ=出力電力/入力電力
=P2/P1
∴ P2=γP1 …(3)
となります。
|
また、無負荷時のV1, V2と巻き数n1, n2の関係は、
n2・V1=n1・V2
∴ V2=(n2/n1)・V1…(4)
「無負荷時」と断ったのは、負荷をかけると巻き線抵抗で電圧が下がることがあるからです。つまり、効率の低いトランスでは、負荷をかけた時の電圧が巻き線比通りにならないことがあるため、効率を云々するには、(3)式の電力で評価します。
[2]トランスの電力損失 鉄損と銅損
トランスの損失には大きく2種類があります。無線ではあまり聞きませんが、電力の世界では「鉄損」と「銅損」といって、それぞれ別の原因です。
鉄損というのは、一次側で発生した磁力線が鉄芯内に渦電流を作り出し、その渦電流が鉄芯を加熱してしまうために起こる損失です。低周波トランスでは、鉄芯を薄い鋼板を重ねて作ります。高周波トランスではこの損失が特に大きくなるため、フェライトなど細かい粉状の磁性体を固めて作った芯を用います。 一方、銅損というのは、巻き線である導線の抵抗による損失です。高周波の場合、表皮効果もこれに入ると考えられます(知識が定かでありません)。電源トランスの場合、銅線の抵抗は太くすれば下げられますから、なるべく太い線を使えばいいのですが、今度は重量が重くなりますから、トレードオフです。
[3]単巻変圧器の特長
今まで述べてきたことは、トランスの一般論ですが、この問題で取り上げられている単巻変圧器ではちょっとした特徴があります。それは、
・一次と二次の巻線の共通部分(問題図ではy−z間)を分路巻線という
・共通でない部分(問題図ではx−y間)を直列巻線という
・分路巻線では一次側二次側の電流の差(の絶対値)しか流れない
・一次側と二次側を絶縁できない
ということです。特に3つ目の特徴は問題を解くカギになります。分路巻線では電流が少ないので、一次と二次の電圧が近いほど、ここに流れる電流が少なくなります。逆に大きな変圧比が必要な用途では、直列巻線部分が大半を占めますから、単巻で構成するメリットが薄れます。電圧が大きく違うということは、絶縁も重要になりますから、絶縁できない単巻変圧器は不利です。 そのため、このような構成のトランスは、電圧の近い商用電源の国による差を吸収(100 [V]/115 [V]変換など)するトランスとして用いられることが多いです。
それでは、解答に移ります。
まず、解答に至る見通しを立てましょう。求めたいのは一次側と二次側に共通の巻き線部分(分路巻線)に流れる電流です。二次側の電流は与えられていますから、一次側の電流を求めて減算すればよいことが分かります。また、トランスの効率が出ているので、二次側の電力を求めれば一次側の電力も分かり、一次側の電圧が分かっているのですから、電流も求められます。 まず、二次側の電力と(3)式から、一次側の電力を求めると、
P1=P2/γ=E2・I2/γ …(a)
一方、一次側の電圧と電流はそれぞれE1とI1で、
P1=E1・I1 …(b)
ですから、これを(b)式に代入してI1について解くと、
I1=(E2・I2)/(E1γ) …(c)
となります。求めたいのはyz間の電流、すなわちI1とI2の差ですから、(c)式から
|I1−I2|=I2|1−E2/(E1γ)| …(d)
これに、γ=0.9、E1=100 [V]、E2=115 [V]、I2=3 [A]を代入すると、
|I1−I2|=0.8 [A]
となりますから、正解は1と分かります。
|
|
|
|