□ H14年04月期 A-06  Code:[HC0202] : 可変容量ダイオード(バリキャップ)の動作原理。印加電圧と空乏層の厚さの関係
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1404A06 Counter
無線工学 > 1アマ > H14年04月期 > A-06
A-06 次のうち、可変容量ダイオードの動作原理についての記述として、正しいものを下の番号から選べ。
PN接合の境界部(面)にできる空乏層の厚さが、加えられる逆方向電圧によって変化する現象を利用したものである。
PN接合に逆方向の一定電圧以上を加えると、逆方向電流が急激に増大する現象を利用したものである。
ひ化ガリウム(GaAs)などの金属化合物半導体の薄片にオーム接触を設け、これに直流高電圧を加えると、ガン効果により高周波電流が流れる現象を利用したものである。
PN接合に逆方向の直流高電圧を加えると、なだれ現象が発生し、マイクロ波周波数領域で負性抵抗を示す現象を利用したものである。

 可変容量ダイオードは、良くその動作原理が出題されます。無線機の中では、バリコンを用いずに発振周波数を変化させたりするのに良く使われるからでしょう。日本では「バリキャップ」=バリアブルキャパシタと呼ばれることが多いようですが、英語の世界では「バラクタ」=バリアブルリアクタと呼ばれることが多いようです。

[1]逆方向電圧で静電容量を制御する

 PN接合ダイオードでは、逆電圧を掛けると電流は流れません。これは、ホールと電子が各々接合面から離れる方向に寄ってしまい、再結合が起こらないからです。
Fig.HC0202_a 可変容量ダイオードの構造と動作
Fig.HC0202_a
可変容量ダイオードの構造と動作
 では、接合面付近はどんな様子になっているのでしょうか?
 接合面付近はホールも電子(両者をまとめてキャリアと言います)もない、領域ができています。このキャリアのない領域のことを「空乏層」といい、絶縁体と同じ働きをします。つまり、キャリアのある「導体」の領域で空乏層という「誘電体」を挟む構造になっている、いわばコンデンサができているわけです。
 さらに、空乏層の厚みは、掛ける逆電圧に応じて連続的に変化させることができます(Fig.HC0202_a)。
 逆電圧が大きいほど、空乏層の厚みは厚く静電容量は減少し、逆電圧が小さいと空乏層は薄く静電容量は増加します。
 ただ、Fig.HC0202_a右のグラフはわざと曲げて(非直線的に)描いてありますが、一般には掛ける逆電圧と容量の間には、単純な反比例関係は成立しません。

[2]用途は発振周波数の制御・周波数逓倍

 上のことから、このダイオードを逆バイアスがかかる状態で、共振回路のコンデンサとして使うと、この共振回路の共振周波数を、逆バイアス電圧を変化させることにより制御できるようにできます。これを発振回路に使えば、発振周波数が直流電圧でコントロールできることになります。これはまさに、PLL回路(電子回路のところで勉強します)などに使われる、VCO(電圧制御発振器)に他なりません。
 また、同様にLC発振回路のCをこのダイオードに置き換え、逆バイアスを音声信号で制御すれば、直接FM波が得られます。搬送波の発振周波数安定度に問題があるので、そのまま送信機には使えませんが、原理としてはこのダイオードで変調を掛けて使われています。その昔、私がFMワイヤレスマイクを自作した時は、小信号用の接合ダイオードに逆バイアスをかけ、マイクの音声を重畳した回路でした。
 この他、マイクロ波領域では周波数逓倍にも使われるようですが、その動作原理は私ははっきりと説明できません。ですが、この加わる電圧により容量が変化する現象は、マイクロ波領域まで応答性があることと、非線形現象(コンデンサやコイルは両端にかかる電圧で定数が変わらないのが「線形」)であることから、可変容量ダイオードにマイクロ波を加えると波形が歪み、高調波が出るので、逓倍作用があるのだと考えています。この用途に使われる可変容量ダイオードを、特に「バラクタ」(バリアブルリアクタの略)と呼び、大出力を得るための大型のものもあるようです。

それでは、解答に移ります。
 …可変容量ダイオードの動作原理の正しい記述です
 …これは定電圧ダイオードの動作の記述です
 …マイクロ波発振に使う、ガンダイオードの動作の記述です
 …マイクロ波発振に使う、インパットダイオードの動作の記述です
となりますから、正解はと分かります。