□ H13年12月期 B-05  Code:[HI0402] : 等価地球半径の考え方
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1312B05 Counter
無線工学 > 1アマ > H13年12月期 > B-05
B-05 次の記述は、等価地球半径について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。
 大気の屈折率は高さにより変化し、上層に行くほど屈折率が[ア]なる。そのため電波の通路は[イ]に曲げられる。しかし、電波の伝わり方を考えるとき、電波は[ウ]するものとして取り扱った方が便利である。このため、地球の半径を実際より[エ]した仮想の地球を考え、この半径と実際の地球の半径との比を等価地球半径係数といい、通常Kで表し、標準大気の場合、Kは[オ]である。
大きく 小さく 上方 下方 散乱
屈折 4/3 3/4 直進 10 1.05

 常識では、光や電波はまっすぐ飛ぶ、と考えますが、それは一様な媒質の中を伝搬する場合であって、地上の大気のように、高さ方向に屈折率が一様ではない物質の中では光は曲がります。曲がっていては考えにくいので、地球の半径が変化した「ことにして」考えれば、電波の経路が直線だと考えても良い、というのが「等価地球半径」の考え方です。

[1]電波や光は曲がって進む? 屈折率の変化と電磁波の経路

 光と電波は、周波数が違うだけで、同じ電磁波ですので、ここでの説明では学校でやった(かも知れない)光の屈折の実験例で説明します。
Fig.HI0402_a 屈折率の変化と電磁波の伝搬
Fig.HI0402_a
屈折率の変化と電磁波の伝搬
 まず、屈折率がある表面で突然、階段状に変化する場合を考えます。Fig.HI0402_aの左がその図ですが、例えば、水の中を進行してきたレーザー光が、空気中に出るような場合です。水の方が屈折率が高く、空気の方が低い状態です。
 この場合、光は水面に近づく方に曲がります。つまり、屈折率の高い方から低い方に電磁波が進行する場合、進行方向は屈折率の高い方に曲がります。これを、スネルの法則と言って、水の中に箸を入れると、箸が曲がって見える、あの現象の説明です。
 この法則を定量的に表せば、証明は行ないませんが、2つの媒質の屈折率をn1とn2、及び界面の法線と光線の進行方向がなす角をθ1とθ2とすると、
 1sinθ1=n2sinθ2 …(1)
という関係になります。この式から、1>n2ならθ1<θ2であることがわかります。
 では、屈折率が連続的に変化しているような媒質では、経路はどうなるでしょうか? このようなケースは、地球の大気が地表から上空に向かって、屈折率がほぼ直線的に減少している状態(Fig.HI0402_a右)があてはまります。
 考え方としては、大気が、厚みの薄い多数の膜のような層からなっていると考え、それらの屈折率がn1>n2>n3>…>niと、わずかずつ上空方向に向かって減少してゆく状態をイメージすればよいです。つまり徐々に屈折率が減少するi層の多層膜が重なっている、ということです。
 スネルの法則に依れば、光の経路は、層を一つまたぐたびに、わずかにこの図の下方に曲げられます。従って、大気中の光の光跡は直線にはならず、斜めに打ち上げても、地面方向に曲がることになります。さらに、大気の屈折率分布自体が同心円(球?)状なので、事情は複雑ですが、光跡が地面に向かって曲げられることには変わりありません。

[2]電波の経路を直線で表したい

 打ち上げた電波の経路が、地面方向に曲げられることは分かりましたが、実際TVやFMの送信所を建設する場合など、カバーエリア(受信可能な範囲)を設定し、鉄塔の高さやアンテナの垂直面内の指向性・利得を決めたいのに、「電波が曲がって飛ぶ」のでは設計しづらくて仕方ありません。
 例えば、山のない砂漠のような平原に、水平面内が無指向性のアンテナを建てて四方を見回したとしましょう。電波が(光も)真の直線で飛ぶなら、アンテナのある高さから見た水平線までが「見通し距離」で、それより向こう側は直接波は届かないはずです。
 しかし、実際には地図上で描いた「見通し」距離よりも遠くに届きます。これは、Fig.HI0402_bの左のように、電波が実際には地表方向に曲げられて飛ぶためで、いわば、地球の丸みの向こう側に回り込んでいる、というイメージです。
Fig.HI0402_b 幾何学的経路と実際の経路
Fig.HI0402_b
幾何学的経路と実際の経路
 これでは、途中の障害物などが実際に経路にかかるのかどうか分からないので、電波が直線で飛ぶと考える「代わり」に地球の半径が大きくなった、と考えたらどうだろう、という発想の転換をしたのがFig.HI0402_bの右になります。
 実際、このような仮定(電波の経路を直線にするには地球の半径を変えればよい)が成り立つのか、の証明は(私もちゃんと説明できない=分かってない、ので)でできませんが、数式だけを追って行くと、確かにそう考えて差し支えありません。

[3]等価地球半径を計算する

 等価半径を考えるには、先に述べたように、大気も球状に屈折率分布をしているので、その影響を考慮した「修正屈折率」というものを使います。詳細は上級(プロ)の資格の範囲になりますので省きますが、ここから「実際の地球の半径Rの4/3倍が等価地球半径」という結論が出ます。
 つまり、地球の半径が4/3倍になったと考えれば、電波の経路は直線で考えてよい、ということです。

それでは、解答に移ります。
 …大気は上層に行くほど屈折率が2小さくなります
 …上層ほど低い屈折率分布の中では、電波は4下方に曲げられます
 …電波は9直進するものとして扱うと便利です
 …電波が直進すると考えるには、地球が1大きくなった、と考えます
 …その大きくなる倍率がKで、通常の大気ではK=7 4/3です
となります。