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■ 無線工学を学ぶ
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(1) 無線工学の基礎
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2022年 |
12/31 12月期問題頁掲載 |
09/01 08月期問題頁掲載 |
05/14 04月期問題頁掲載 |
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無線工学 > 1アマ > H13年12月期 > A-23 |
A-23 |
次の記述は、主にVHF及びUHF帯の通信において発生するフェージングについて述べたものである。この記述に該当するフェージングの名称を下の番号から選べ。
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「気象状況の影響で、大気の屈折率の高さによる減少割合の変動にともなう、電波の通路の変化により発生するフェージング」
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1 |
偏波性フェージング |
2 |
ダクト形フェージング |
3 |
吸収性フェージング |
4 |
跳躍性フェージング |
5 |
K形フェージング |
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フェージングというと、電離層波を使うHFのイメージがありますが、V,UHFにもフェージングはあります。この問題では、そのフェージングの現象と原因が問われています。
[1]V,UHFのフェージング(干渉性・偏波性・K形)
- 干渉性フェージング
干渉性フェージングは、送信点から受信点に至る伝搬経路が複数あり、その経路の間で、経路長の差が変動する時に起こります。 経路が2本の例(Fig.HI0602_a上)で説明すると、両者の経路差が波長λの整数倍である場合、位相が合いますので、信号は強く受信されますが、λ/2の奇数倍の時は位相が逆になるので、弱く受信されることになります。移動体でどちらかor両方が動きながら通信する場合、あるいは固定局同士でも反射体等が動いている場合、経路長の差は常に変動するので、このフェージングを受けます。
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- 偏波性フェージング
送信側から受信側に至る経路の中で、偏波面を回転させたり円(又は楕円)偏波に変換してしまう働きがあって、その作用効果が変動する場合に生じるフェージングです。電離層にはこの働きがあり、垂直偏波で送信しても、水平偏波で受信が可能です。 例えば、送信側・受信側ともに水平偏波の空中線を使用していて、受信側で楕円偏波の電離層波を受信する場合、その楕円の長軸が時間と共に回転(Fig.HI0602_a中)すると、アンテナに発生する起電力が変動するので、フェージングとなります。
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Fig.HI0602_a フェージング 干渉性・偏波性・K形
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- K形フェージング
電波は、水平より上向きに発射すると、空気の屈折率分布により、地面の方向に曲げられて、見通し距離よりも遠くまで届きます。経路が曲がっていると見積もりにくいので、地球の等価半径係数Kというものを導入して、経路が直線と考えるのに地球の半径が(実際の)K倍だと考えます。 ところが、このK(「標準大気」で4/3)は大気の地上方向の屈折率分布が一定の仮定の下に近似された値ですが、実際には気象条件などでKは変動します。すると、電波の経路の曲がり具合(曲率)が変動する(Fig.0602_b下)ので、受信電界強度が変動して、フェージングとして受信されます。これがK形フェージングです。
[2]V,UHFのフェージング(シンチレーション形・散乱性・ダクト形)
- シンチレーション形フェージング
シンチレーションとは分かりやすく言えば「揺らぎ」のことです。ここでは、V,UHFでの地上(大気中)の電波伝搬を議論しているので、ここでのシンチレーションは、大気の屈折率の揺らぎを指します。物質の屈折率nは誘電率εと透磁率μの積の平方根(要するにn=√(εμ)ということ)ですが、透磁率はほとんど変化せず、誘電率が揺らぎます。 この揺らぎが、波長より小さなオーダーで局所的に起こると、電波は散乱されますが、散乱された電波が複数の経路で受信アンテナに到達すると、干渉を起こします。ここから後は干渉性フェージングと同じ原理で、到達経路が揺らぐことで、フェージングとなって受信されます。ただ、このフェージングの影響は弱く限定的であるとされています。
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Fig.HI0602_b フェージング シンチレーション・散乱・ダクト
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- 散乱形フェージング
シンチレーション形フェージングとどこが違うのか、と言われそうですが…正直この二つは資料があまりなく、以下の記述が正しいかどうかわかりません。 散乱形フェージングは、シンチレーションのような散乱現象で、複数箇所から散乱波が届くとき、それらの経路差によって起こる、干渉性フェージングの一種です。 ですから、単独のシンチレーションからの電波ではなくて、複数の散乱場所からの干渉、というところが異なっています。
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- ダクト形フェージング
V,UHFの伝播に「ラジオダクト」と呼ばれる現象があります(この現象の起こる原因については、ラジオダクトの問題を参照して下さい)。簡単に言えば、大気の屈折率の高さ方向の分布が、通常の状態と逆転した時に起こるものです。自然現象ですから、その逆転の度合いや分布にも揺らぎがあります。 電波は、接地形ダクトの場合は地面と逆転層間を、S形ダクトの場合はダクト内を導波管内の電磁波のように、あるいは光ファイバ内を進む光のように、反射を繰り返しながら進むわけですが、途中で逆転層の屈折率分布が揺らぐと、そこから反射したり漏れ出てくる電波の強度や角度が揺らぐことになります。これが、ダクト形フェージングです。
[3]主に電離層と関連するフェージング
以下は、V,UHFのフェージングとはあまり関係のない、電離層の変動に伴うフェージングです。選択肢として出てくるので、簡単に挙げておきます。
- 跳躍性フェージング
電離層で反射される際、電子密度等の変動によって、反射されたりされなかったり、がフェージングとなるものです。
- 吸収性フェージング
D層やE層を突き抜ける際に受ける減衰量が変動して、受信電界強度が揺らぐものです。
- 選択性フェージング
伝送路途中に周波数選択性を持つ部分があってその特性が変化し、電波の占有周波数帯幅のうち、一部の帯域が選択的に減衰を受けることでフェージングとなるもの。
それでは、解答に移ります。
1…偏波性フェージングは電離層での偏波面回転なので、誤った記述です
2…ダクト形フェージングはダクトの変動なので、誤った記述です
3…吸収性フェージングは電離層の第二種減衰の変動で、誤った記述です
4…跳躍性フェージングは電離層の第一種減衰の変動で、誤った記述です
5…K形フェージングはの成因は問題文の通りで正しい記述です
となりますから、正解は5と分かります。 この問題は2のダクト形フェージングと間違えないようにしなければいけません。カギは、「大気の屈折率の高さによる減少割合の変動」という部分です。ダクトも屈折率の高さ方向の変化ですが、K形フェージングを、より的確に言い表しているのは5の文章です。
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