□ H13年08月期 A-18  Code:[HG0403] : 直列形と並列形の定電圧電源回路の得失比較
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12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1308A18 Counter
無線工学 > 1アマ > H13年08月期 > A-18
A-18 次の記述は、トランジスタを用いた直列形又は並列形の定電圧電源回路の特徴について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
並列形は、過負荷又は出力の短絡に対して、制御用トランジスタの保護回路を必要としない。
直列形は、出力電圧の可変範囲が並列形に比べて狭い。
並列形は、無負荷時及び負荷電流が少ないとき、不要な電流を制御用トランジスタに流すため回路の効率が悪い。
直列形は、出力電圧が制御用トランジスタの耐圧以上でも差し支えない。

 まず、並列形と直列形の定電圧電源回路が、それぞれどのように動作するのか、対比させながら見ておきます。

[1]直列(シリーズ)形定電圧回路の構成と動作

 俗に、シリーズレギュレータと呼ばれる定電圧回路です。この回路の構成は、概略Fig.HG0403_aの左上のような構成になっています。
Fig.HG0403_a 直列形定電圧電源の動作原理
Fig.HG0403_a
直列形定電圧電源の動作原理
 フィードバック回路が出力電圧を常に監視しています。フィードバック回路の中には、基準となる電圧源があって、その基準に対して出力が低いか高いかを、電流制御回路に出力します。電流制御回路では、フィードバック回路から与えられた信号を元に、電流制限を強めたり弱めたりします。電流制御回路が負荷(出力)に直列に入っているので、「直列形」と呼ぶわけです。
 実際の電源装置では、フィードバック回路はトランジスタやオペアンプなどの増幅器と定電圧ダイオードの組合せ、電流制御回路はパワートランジスタが1個又は数個からなっています。
 この回路が負荷の変動(または入力電圧の変動)に応じて、どのように動作するかを追って、理解してみることにします。
  • 出力電圧が上昇しようとした時(Fig.HG0403_a右上)
    入力電圧が上昇した、あるいは、負荷が軽くなった、などの理由で出力電圧が上昇しようとした時は、フィードバック回路が電流制御回路に制限を強めるような信号を出します。
    実際には、トランジスタなどに加えるバイアスを減少させます。すると、電流制御回路での電圧降下が大きくなり、負荷端の電圧上昇が抑えられることになります。
  • 出力電圧が低下しようとした時(Fig.HG0403_a右下)
    上とは逆に、入力電圧が低下したり、負荷が重くなった、などの理由で出力電圧が低下しようとした時には、フィードバック回路が電流制御回路に制限を弱めるような信号を出します。
    実際の装置では、トランジスタのバイアス電流を増加させ、電流制限回路での電圧降下を小さくして、負荷の電圧を一定に保ちます。
 次に、特徴とその理由をまとめておきます。
  • 効率
    並列形よりは高い。負荷電流が少ない時は、電流制御回路に流れる電流も少なく、発熱が少ないため。
  • 短絡保護回路
    必要。負荷が短絡すると、電源側からの電流が無限に流れようとするので、電流制御回路が破損するおそれがあるため。
  • 電圧可変範囲
    並列形よりは広い。負荷に直列に電流制限回路が入る形なので、ここでの電圧降下を直接制御すればよいため。
  • トランジスタの耐圧と出力電圧
    トランジスタの耐圧(VCBO又はVCEO)は出力電圧よりも低くても可。出力が100 [V]でも入力が約120 [V]なら、トランジスタの電圧降下は20 [V]程で済むため。

[2]並列形定電圧回路の構成と動作

 この回路の構成は、概略Fig.HG0403_bの左上のようになっています。この回路も、出力電圧を監視するフィードバック回路と、電流を制御する回路からなっていますが、直列形と異なるのは、電流制御が負荷と並列に入っていることと、抵抗が入力側に入っていることです。
 出力を監視するフィードバック回路と、その中に基準となる電圧源があって、出力電圧が基準に対して低いか高いかで電流制御回路をコントロールします。出力電圧が一定になるように制御するのは直列形と同じですが、制御の仕方が少し違います(後述)。
 実際の電源装置では、フィードバック回路はトランジスタやオペアンプなどの増幅器と定電圧ダイオードの組合せ、電流制御回路はパワートランジスタが1個又は数個からなっています。これも直列形と同じです。
Fig.HG0403_b 並列形定電圧電源の動作原理
Fig.HG0403_b
並列形定電圧電源の動作原理
 では、直列形と同様、この回路が負荷の変動(または入力電圧の変動)に応じて、どのように動作するかを追って、理解してみることにします。
  • 出力電圧が上昇しようとした時(Fig.HG0403_b右上)
    出力電圧が上昇しようとした時は、フィードバック回路が電流制御回路に制限を緩めるような信号を出します。つまり、「電流をもっと流せ」という指示を出します。
    実際には、トランジスタなどに加えるバイアスを増加させます。すると、回路全体の電流が増えるので、入力にある抵抗での電圧降下が大きくなり、負荷端の電圧上昇が抑えられることになります。
  • 出力電圧が低下しようとした時(Fig.HG0403_b右下)
    上とは逆に、出力電圧が低下しようとした時には、フィードバック回路が電流制御回路に制限を強めるような信号を出します。つまり、制御のために「流す電流を減らせ」という指示を出します。
    実際の装置では、トランジスタのバイアス電流を減少させ、回路全体の電流を減らします。すると、入力の抵抗での電圧降下が小さくなり、負荷の電圧が一定に保たれます。
 次に、特徴とその理由をまとめておきます。
  • 効率
    直列形よりは低い。負荷電流が少ない時は、電圧を一定に保つために電流制御回路に多く電流を流さなければならず、発熱が大きいため。
  • 短絡保護回路
    不要。負荷が短絡すると、電源側からの電流は全て負荷に流れ、電流制御回路を通らないため。
  • 電圧可変範囲
    直列形よりは狭い。可変範囲を広くするには、入力の抵抗を小さくして、制御可能な電流の範囲を非常に大きく取る必要があるため。
  • トランジスタの耐圧と出力電圧
    トランジスタの耐圧(VCBO又はVCEO)は出力電圧よりも高くなければならない。出力が100 [V]なら、トランジスタコレクタ−エミッタ間に同じ電圧がかかるため。


それでは、解答に移ります。
 …並列形は一般に保護回路が不要なので正しい記述です
 …直列形は、電圧可変範囲が並列形より広いので、誤った記述です
 …並列形の軽負荷の時は、発熱が大きく効率が悪いので正しい記述です
 …直列形ではトランジスタの耐圧は出力電圧と無関係なので正しい記述です
となりますから、正解(誤った記述)はと分かります。