□ H13年08月期 A-17  Code:[HF0702] : 受信機の性能のうち、感度と選択度の定義とそれらの性能の向上方法
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1308A17 Counter
無線工学 > 1アマ > H13年08月期 > A-17
A-17 次の記述は、受信機の性能について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 感度とは、出力の信号対雑音比(S/N)を一定限度に保つ条件の下で、どれくらい微弱な電波まで受信できるかの能力を表すものであり、一般に、中間周波段のフィルタの帯域を[A]したほうが感度が良くなる場合が多い。
また、同じ受信機でもモード(SSBやCW)によって感度は異なり、CWのほうがSSBよりも感度が[B]。
(2) 選択度とは、受信しようとする電波を、多数の電波のうちからどの程度まで分離して、混信を受けないで受信することができるかの能力を表すものであり、主として同調回路の個数とそのQやフィルタの特性で決まる。フィルタの特性については、6 [dB]通過帯域が同じであれば、60 [dB]通過帯域が[C]ほうが選択度は良くなる。

狭く 良い 狭い
狭く 良い 広い
広く 良い 狭い
広く 悪い 狭い
広く 悪い 広い

 受信機の感度と選択度という基本性能の定義を答える問題です。カタログスペックを読むのにも役立ちますので、理解してしまいましょう。

[1]受信機の感度とは何か

 我々ハムはリグの受信性能について、俗に「耳がいい」とか「耳が悪い」とかいう言い方をします。これは、混信除去機能や混変調等ひずみが少ないこともひっくるめての表現ですが、大体は「感度がいい」という意味に使われます。「感度がいい」というと「弱い電波まで良く拾える(聞こえる)」ということですが、これをいざ、厳密に定義しようとすると難しいものがあります。
 出力が大きければ(弱い信号が大きな音になれば)いいのか、というと、そうでもありません。ノイズも大きくて信号が埋もれてしまうようでは、リグのAF GAINを上げただけと同じです。逆に、ノイズは小さいが、信号も小さくしか聞こえなくては、これまた意味がありません。
Fig.HF0702_a 感度定義のレベルダイヤグラム
Fig.HF0702_a
感度定義のレベルダイヤグラム
 そこで、「感度」の定義はS/Nを基準にすることにしました。つまり、ある一定のS/Nが取れる時の、受信機の入力(すなわち電界強度)で定義すればよいのです。
 例えば、Fig.HF0702_aのような3台の受信機があり、それぞれ異なった入出力特性であるとします。受信機Aはノイズレベルが低く、弱電界でも大きな音声出力が得られるもの。受信機Bは音声出力は大きいが、ノイズレベルも高いもの。受信機Cはノイズレベルは低いが音声出力も小さいもの、という具合です。
 このグラフは両対数グラフですので、ある受信機入力の時のS/Nは、ノイズと信号の差を取ればいいのです。
 つまり、一定のS/Nが得られる電界強度は、という目でグラフを見るには、同じ長さの両矢印が信号とノイズに当てはまる横軸を読めばいいのです。すると、A・B・Cの各受信機の感度はα,β,γと読めます。α<β<γですから、受信機Aが最も低電界で一定レベルのS/Nを達成しているので、3台のうちで最も感度が高い、ということになります。
 今度は、見方を変えて、同じ電界強度κの時に、各受信機のS/Nはどうなるか、ということをこのグラフの上で「測定」して比較してみましょう。この感覚が、我々が受信機の感度を語る時に言っていることに近いでしょう。この比較を行なうには、各受信機で、グラフ中の茶色の破線上で、ノイズレベルから信号レベルまでの長さを測って比較すればよいのです。すると、やはり長さは受信機A>B>Cの順になりますから、同じ電界強度の入力があった時に高いS/Nが得られる順と、感度の高い順は一致することが分かります。
 受信機の感度を上げる方法は、いくつかありますが以下のようなものがメインです。
  • 低ノイズで高利得な高周波増幅段を設ける
    (ここで発生するノイズがほぼ受信機のノイズレベルを決めるから)
  • 通過帯域を狭くする(帯域の狭い通信方式を用いる)
高周波増幅段については常識的に理解できますが、通過帯域を狭くすると、なぜ感度が上がるのか、については以下のように解釈します。
 通過帯域内には、まんべんなくノイズ電力(高周波増幅段の熱雑音)が分布しており、帯域を広くするとその成分も広く集めてしまうことになり、ノイズが大きくなりますが、帯域を狭くすればそこを通過するノイズ電力が減る一方、信号電力は減らない(減らないような帯域フィルタを用いるから)ので、S/Nが向上します。

[2]受信機の選択度とは何か

 次に、受信機の選択度についてです。我々が選択度について話す時には「フィルタの切れがいい」とか、「スカート特性がシャープだ」とかいう言い方をします。選択度、というのは、帯域外の他の電波を受けない程度のことをいうのですが、「フィルタの切れ」とか「スカート特性」というのは何のことでしょうか?
 Fig.HF0702_bに中間周波(IF)フィルタの特性の例を示します。本当は「受信機の選択度」といった場合、同調回路などの周波数選択性のある回路を全て含めた、オーバーオールの特性を言いますが、アマチュアの無線機の場合はIFフィルタの特性でほぼ決まりますので、これを挙げています。
 帯域内のわずかな減衰量の周波数変化Fは「帯域内リプル」といい、あまり大きいと、周波数によって位相がずれますので、PSKなど位相変調系の受信には注意が要ります。帯域内の平均減衰量Aから6 [dB]落ちたところの幅Bを6dB帯域幅といいます。さらに60 [dB]下がったところの帯域幅Dを60dB帯域幅といいます。
Fig.HF0702_b 減衰傾度・シェープファクタ
Fig.HF0702_b
減衰傾度・シェープファクタ
 「減衰傾度」というのは、帯域内から帯域外に遷移する部分の傾きを言います。この傾き(の絶対値)が大きいほど、帯域外の信号がシャープにカットされる、というわけです。
 また、同じような指標として、「シェープファクタ」というものも定義されます。これは6dB帯域幅Bと60dB帯域幅Dの比です。この値が1に近ければ近いほど、スカートの部分が垂直に近い(減衰傾度が大)というわけで「スカート特性がよい」ということになります。
 受信機の選択度を上げる方法は、以下のようなものがメインです。
  • 同調回路のQを大きくする
    Qを大きくすると、共振曲線が急峻になりますから、減衰傾度が大きくなります。

  • 同調回路・フィルタを多段に接続する
    多段接続では、帯域内の信号は低い減衰に留め、帯域外の減衰のみをどんどん増加させることができるためです。
 クリスタルフィルタなどでシェープファクタが1に近い物は、中のQが非常に大きいものを多段接続したりしています。あまり多段に接続すると、減衰が増えるので、効果とのトレードオフになります。

それでは、解答に移ります。
 …IFの帯域は狭くした方がS/N(つまり感度)は上がります
 …帯域が狭いほど感度が上がるのでCWはSSBより感度が良くなります
 …60dB帯域が狭いほどシェープファクタがよく選択度が良いわけです
となりますから、正解はと分かります。