□ H12年08月期 A-23  Code:[HI0203] : 短波の電波伝播で、ロングパスが生じる理由とショートパスとのエコーの説明
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1208A23 Counter
無線工学 > 1アマ > H12年08月期 > A-23
A-23 次の記述は、短波帯の電波伝搬について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
 短波帯を用いる遠距離通信では、一般に[A]を通り、図のSのように最も短い伝搬通路を通る電離層波の電界強度が大きくなる。しかし、例えば、Sの伝搬通路が昼間で第一種減衰が大きいとき、Lの伝搬通路は夜間で減衰が少なく、Lの伝搬通路を通る電波の電界強度が大きくなることがある。
 このような逆回りの長い伝搬通路による電波の伝搬を[B]といい、SとLの二つの伝搬通路を通って同時に伝搬すると、受信電波の到達時間差により[C]を生ずることがある。

大円通路 対流圏散乱 フェージング
対流圏 対流圏散乱 エコー
大円通路 ロングパス エコー
対流圏 対流圏散乱 ドプラ効果
大円通路 ロングパス ドプラ効果
問題図 H1208A23a
Fig.H1208A23a

 HFで世界中と交信する時、どちらにビームを向けたらよいか、を考えるのに役立ちます。不思議なことに、距離の長い経路を通ってくる電波の方が強かったり、両方同じようなレベルで聞こえるために、CWなどではエコーがかかって、取りにくいことこの上ないことなどがままあります。

[1]ロングパスとショートパス

 地球上のある点から電波を出して、もう一つの点に到達する経路は、無数にありますが、最短経路は一つだけです。この最短経路をショートパスといい、普通はこれに沿って伝搬するものと考えられるので、日本から北米西海岸向けで交信したい時は、ほぼ北東にビームを向けます。
Fig.HI0203_a 伝播経路の昼夜と第一種減衰
Fig.HI0203_a
伝播経路の昼夜と第一種減衰
 ところが、たまに、北東側からほとんどスカスカの信号しか聞こえないのに、南西からの信号が強かったり、両方から同じような強さで入感する事があります。このように、ショートパスと反対の経路で長い方の伝播経路をロングパスといいます。
 これは、Fig.HI0203_a左のように、ショートパスよりもロングパスの方が伝搬条件が良好なことがあって、距離の近い方が弱く、長い方が強い、という逆転の関係になるためです。
 どういう条件で、このようになるのかは、この後に詳しく見て行きます。

[2]昼と夜とで電離層通過時の減衰が異なる

 では、どのようなケースが「長い距離の方が条件が良い」のでしょうか? これを考えるには、代表的な例として、夜と昼との電離層の条件差があります。
 電離層は昼間は太陽からの電離作用により電子密度が高く、夜間は低いので、Fig.HI0203_a右のように、透過・反射の際の減衰(吸収)率が異なってきます。
 通常、DXに使用するにはD・E層を突き抜けてF層反射を利用する14 [MHz]帯以上の周波数が多いので、これを例に考えてみます。電磁波が電離層を突き抜ける時、その電子密度が高いほど、また、周波数が低いほど大きな減衰を受けます。減衰量は電子密度に比例し、周波数の2乗に反比例します。この突き抜ける時の減衰」を第一種減衰といいます。
 これに対して、反射の際に受ける減衰を、第二種減衰といいます。夜になると遠距離の中波放送(AMラジオ)が聞こえるようになるのは、昼間は存在して中波を減衰させてしまうD層が消滅し、E層の電離層波が使えるためです。この第二種減衰は電子密度が大きいほど、また、周波数がMUFに近づくほど大きくなりますが、電子密度や周波数と減衰量は単純な関数にはなりません。
 話を戻すと、14 [MHz]以上では夜間にE層の第一種減衰が減少し、また、第二種減衰も減少するため、電界強度が強いまま長距離伝搬できるようになります。この効果は、何度もホップ(跳躍)する遠距離ほど、昼間との差が顕著になります。
 このことから、ショートパスの経路がほとんど昼間で、大きな減衰を受けるが、ロングパスの方は夜間で、あまり減衰を受けない場合、ロングパスの方の距離による減衰よりもショートパスの第一種減衰の方が大きくなり、ロングパスの方が電界強度が大きい、という現象が起こるわけです。
 また、両者の強度が同程度の場合、経路差にも依りますが、数 [ms]〜数十 [ms]の時間差で到達するため、エコーとして聞こえ、電信などではキーダウンとスペースが重なって、信号は強いのにほとんど取れないこともあります。

それでは、解答に移ります。
 …短波を使う遠距離通信では主に大円通路を使います
 …ショートパスの反対はロングパスです
 …経路差による時間差が信号として聞こえる現象はエコーです
となりますから、正解はと分かります。