□ H12年08月期 A-07  Code:[HC0102] : マイクロ波を直接発振する素子の名称
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12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1208A07 Counter
無線工学 > 1アマ > H12年08月期 > A-07
A-07 次の記述は、マイクロ波を直接発生する発振器の名称について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
反射形クライストロン発振器
水晶発振器
インパットダイオード発振器
ガンダイオード発振器
マグネトロン発振器

 この問題はマイクロ波素子の問題です。正答が選べなくても、マイクロ波で使えることが確実に分かれば、答えは出ます。

[1]マイクロ波帯素子のいろいろ

 マイクロ波を発生・増幅させるデバイスはいろいろありますが、そのうちよく出てくる6つの特徴をまとめてみました。

デバイス 特徴
エサキ(トンネル)
ダイオード
不純物濃度を極めて高くしたPN接合ダイオードで、順バイアスをかけたときに負性抵抗を示す。電圧が上がろうすると、抵抗が増えて電流が減り、電圧が下がろうとすると抵抗が減って電流が増える、という振動がマイクロ波周波数で起こるので、これを発振源として利用する。
ガンダイオード
主に用いられているのがN形GaAsを用いたガンダイオード。負性抵抗を示すガン(Gunn)効果で数 [GHz]のマイクロ波を数100 [mW]のオーダーで発生させることができる。発信周波数は、主にGaAs基板の厚さで決まる。よく見かける例では、野球のスピードガン、速度取締り用レーダー等。
インパット
ダイオード
インパットはIMPATTと書く。ダイオードに高い逆電圧を掛けておき、電子雪崩(アバランシェ)現象を起こしておく。そこにある周波数の高周波を印加した時に、負性抵抗特性が出現することを利用して、発振器を構成する。数100 [mW]〜数 [W]の大電力が得られる。
ガリウム砒素
トランジスタ
シリコンではなく、3-5族の化合物半導体である砒(ひ)化ガリウム(GaAs:通称「ガリ砒素」)を用いたトランジスタ。トランジション周波数が数十[GHz]程度までの高速動作が可能。また、高温に強く低雑音なので、ハイパワーデバイスや高周波増幅段としても利用される。衛星放送受信の高周波段等はほとんどこれ。
クライストロン管
電子管(真空管)の一種。カソードから出た電子が、電界で加速されるが、負電圧のかかった反射電極(リペラー)で跳ね返えされ、後から進んできた電子と相互作用して、電子密度の濃淡ができる(集群作用)。この周波数がマイクロ波領域であるため、発振回路として動作する。応用例はレーダー等。
マグネトロン管
これも真空管の一種。円周上に多数の穴が開いた陽極を、穴に垂直で一様な磁場中に置く。中央の線状の陰極から電子を放射させると、円形の穴が空洞共振器として動作し、マイクロ波が発生する。大電力(〜数 [kW])を得ることができる。身近な応用例は、電子レンジ。

 上記の表の中で、下2つは真空管です。特殊な用途なので出ていませんが、マイクロ波の増幅には「進行波管」という真空管も用いられます。大出力が得られますが、最近ではデバイスの進歩とともに、固体素子化の流れがマイクロ波領域にも及んでいます。
 軍用や航空機用のレーダー等、大出力を高信頼性で得ようという用途には、まだここに挙げたような真空管が用いられているようです(詳しく調べたわけではないので、ウソかも知れません)が、アマチュア用の送受信機ではまずこの手の真空管は使いません。

それでは、解答に移ります。
 …クライストロン管は直接マイクロ波を発振可能で正しい記述です
 …水晶はマイクロ波帯では振動しませんので誤った記述です
 …インパットダイオードは直接マイクロ波を発振可能で正しい記述です
 …ガンダイオードは直接マイクロ波を発振可能で正しい記述です
 …マグネトロン管は直接マイクロ波を発振可能で正しい記述です
となりますから、正解(誤った記述)はと分かります。

 問題文の「マイクロ波を直接発生することができない発振器」という言葉に注意して下さい。水晶でも逓倍段を何段も通したり、周波数混合をすればGHzになりますから、そういうことはここでは考えずに、という意味です。
 水晶では、周波数の上限は、オーバートーンでも300 [MHz]は出ないと思います。水晶の発振は、「(水晶という)物が物理的に振動する」ことで起こるので、マイクロ波のような高い周波数の振動は起こりにくいからです。